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記憶冷凍 ②

 デスクトップを見ればその人の部屋もクロゼットの中も冷蔵庫の中だってわかってしまうらしい。私のは何もない。初期設定のスクリーンのまんまだ。部屋も押し入れもガラガラ。冷蔵庫も空っぽ。そして頭の中にはシワ一つないツルツルの脳。だって買ったばかりなんだもん。生まれたばかりなんだもん。いいえ、ドラマでよくある記憶喪失かしら。私って誰だっけ? PCのデータはすべて消去されている。手がかりになりそうな持ち物も全部処分されている。昨日のことさえ思い出せない。

 ピンポーン。

「お届け物です。記憶天然凍結社です。引き続き冷凍にする場合は貸し冷凍庫のご利用契約が必要です」
 次から次へと運び込まれる段ボール箱、わき出てくるアイコン、蘇りそうな嫌な思い出。早く「何もない生活」に戻らないと。助けてパパママ。思い出した。二人とももういない。相続したお金も尽きた。クレジットも上限を越えた。そして何よりすごく寒い。

途切れた記憶は半年後の私へ。

410文字


たらはかに様のお題に参加しています。

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