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梅の花 #シロクマ文芸部 異説更級日記

梅の花咲いたら戻る約束よ? 

無邪気とも無遠慮ともとれる文が添えられた梅の枝が届いた。
あの子だ。
都育ちで宮中の暮らしに慣れ親しんだ私が朴念仁でうだつの上がらない中年男に伴われて僻地に赴き数年に亘って血の繋がらない子らの面倒をみた。

破局の原因なんて本人にしかわからないはずなのに万人が深くうなづいているのはなぜだろうか。本の虫というより源氏オタクよねクスクスといいたげなあの子を見る周囲の視線。構うことないのよ、何を隠そう源氏の作者は私の叔父の妻の母なのだから、本が欲しけりゃ手に入らないこともないのだし。

でも私は気がついてしまったのだ。あの子は私を慕っていたわけじゃなくて物語を欲しがっていただけ。そして私もあの人たちの背後の物語にだけ惹かれていたのだろうか。

ただこれだけは言える。あの辺鄙な土地での日々に幸せを感じていたのだ私は。魔法は解けなかったはずだ都にさえ戻らなければ。

さて後の世で何と呼ばれるの孝標の女の継母と?

410文字


あの子ときたらすっかり光る君になりきって父の後妻に恋をしている気なのだろう、目を覚まさせてあげてね梅の花。


小牧幸助様のお題に参加しています。

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