金魚鉢 ①
金魚鉢がずらりと並んでいる。大きさや色合いデザインもさまざまだ。しかもすべての鉢に水がはられ金魚が気持ち良さげに泳いでいる。小石水草水中オーナメントも揃っている。ここはある観光地のペットショップ。こんなことは金魚鉢コーディネーターの仕業だろう。相当なプロの仕事に違いない。住み主鰭形と鉢の描く曲線が寸分の狂いもなく一致している。水底の嫁入り道具を模した小さなドレッサーやクロゼット。金魚を駄目にするクッションや昭和っぽいテレビもある。これらは金魚本人の好みを徹底的にリサーチして選んだものだそうだ。
フラワーアレンジメントじゃあるまいし、自分が掬った金魚をバケツに放してすぐに忘れて野良猫にやられるなんてのは論外としても部屋くらいちゃんと整えてあげればいいのに。それが飼い主の責任ってもんじゃない。最近の人は楽することばかり考えて。反対側の棚のコーディネート済みの売れ残った人魚鉢のなかからぶつぶつとボヤキが聞こえた。
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小牧幸助様のお題に参加しています。
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