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ガラスの手 ④別れさせ屋編

「…ガラスの手、よ」
明け方のほんのりと白み始めたカーテンの向こうで烏の鳴き声がする。
「えっ、今なんて言った?」
散乱する昨夜のガラス瓶や倒れたコップ。頭痛とめまいをこらえる。傍に横たわった女がもぞりと寝返りを打って繰り返す。
「だからー、アケガラスの作戦なのよ。ああやってカァカァと騒いであたしたちの邪魔をするんだわ」脚を絡めてくる。
アケガラスか。妻の名は偶然にもアケミだ。彼女がそれを知っているはずはないが。とにかくコイツとは行きずりの関係であの烏の声だってセットしたアラームだ。そろそろ起きて出掛けないと。
「ふふ、ねえキスしてよ」
しょうがないなあ、
ええっ? カシャリ、とシャッター音が響く。開いたカーテンのすぐ向こうのガラスに手をついてこちらを覗き込むアケミが見えた。

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遅刻してしまいました。今後ラストの投稿は家康より先にしとかねば。

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