私が校閲ガールになりかけた話。
ずっと答えがでていなかったことがあって。
結婚してすぐの頃、当時勤めていた会社を退職したので、のんびり主婦業をしつつも、新しく職を探すこともしていた。
文章を書いたり、書籍に関する仕事にも興味があったので、校正・校閲を手がける会社に履歴書を出したことがある。30歳無職主婦は、無事書類選考を通過し、面接に出向いた。
場所は神楽坂。駅からすぐの会社。通された応接室で、出された飲み物はすぐ隣のマクドナルドのジュースだった。斬新。
少し変わった髪型の男性が社長だった。小さい会社で、勤務している人がすくないこともあるのか、社長が直接面接にあらわれた。一通りこれまでの職歴の話をしたあと、彼は私に将来的に何をしたいか訪ねた。
私は一瞬考え込んでしまった。なぜなら子供がほしかったから。
妊娠して子供を産みたいです。そういっていいものか。
働く気がないと思われるのでは。
短い時間でいろんな考えがあたまをめぐった。
精一杯考えて、何も言えなくて、口にした言葉は「今はわからないです」だったか。はっきりと覚えていないけれど、具体的なビジョンを答えられなかったことは確かだ。
社長は、少し不思議そうな顔で私を見た。
短期、長期的にやりたいことはないか。
そういったことを数回聞かれて、どの質問にも私が答えられず面接が終わった。もやもやと若干の緊張を残したまま、私は神楽坂の何も見ずすぐ近くの駅から自宅に戻った。
数日後メールが来て、結果は不採用だった。
残念な気持ちはあった。文章を書く技術とか、ノウハウが多少なりともわかったり、正しい日本語を見につけたかったから。
それから5年ほどたった今、私は出産もして、子育てをしながら、文章を書く仕事をしている。
今考えても、その面接でなんと答えていいかわからないけど、何がきっかけで望む仕事をできるかは、わからないものである。
逆に言えば、本当にやりたいことを避けて通ることはできないのだと思う。
だから今したいことができなくても、思ったとおりに動けていなくても、いつかはなにかのきっかけで、必要なことやものは手に入るのだと私は信じている。それでも手に入らないものは、必要ないことだと思うのだけど、この話はまた今度。全てのママにエールを送りたい、豊洲の主婦より。
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