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「これ、2クール目来るか?」2021年8月30日の日記

・今日は月曜だけれど会社は休みを取っていた。月曜の休みが一番嬉しいね。


・なぜなら今日の午前中は東京都美術館のアート・コミュニケータの講座があったから。
・都美館では、定期的に小学校の見学を受け入れていて、近々そのイベントが開催されるので、その事前勉強会のようなものを行った。
・こうした活動は、都美館を含む上野公園周辺の9つの文化施設(東京都美術館、国立西洋美術館、東京文化会館、国際子ども図書館、東京藝術大学、上野動物園、上野の森美術館、東京国立博物館、国立科学博物館)が連携したプロジェクト「あいうえの」の一部だ。

・わたしたち、東京都美術館のアート・コミュニケータたちは、都美館の中に閉じた活動だけでなく、「あいうえの」のプロジェクトに参画して、他の文化施設と協業して活動に取り組むこともある。これも都美館のアート・コミュニケータの大きな魅力のひとつだ。


・普段、こうした講座はオンラインなのだけど、今回は実際の見学会の準備ということで、都美館にリアルに集合した。もちろん感染症対策を普段オンラインでしか顔を知らない他のアート・コミュニケータのメンバーたちに初めて、あるいは久しぶりに会うことができたので、とても嬉しかった。


・前半は作品の鑑賞について、講師の先生のもと、みんなでワークをしながら学んだ。わたしの感想は、鑑賞とは「主観」の「客観」を行き来することなんだな、ということ。


・作品を観て、「絵に描かれてるこの男の人、なんだか悲しそうだよ」という「主観」が出てくる。なぜそう見えるのだろう?とその要因を絵の中に求めると、「涙が描かれているから」とか、「口をへの字に曲げてうつむき加減で、背景はなんだか黒々しいから」とか、実際絵の中に描かれている「客観」が出てくる。


・「主観」は、鑑賞者のこれまでの経験に基づいて生まれることが多い。だから人によって違いが出てくる。「口をへの字に曲げてうつむき加減」である男性の絵を観て、「悲しそう」という意見もあれば「怒っている」という意見も出てくるだろう。
・一方、「客観」は、絵の中に描かれている事実であるので、人によって客観ほど差は生じない。


・自分の「主観」はどこの「客観」がそう思わせたのか。あの人はなぜ、あんな「主観」をこの絵の中の「客観」から想起したのだろう。


・主観と客観を揺れ動く中で、作品の鑑賞が、そして自分自身や他人についての理解が深まっていく。


・後半は、当日の見学コースを実際に先輩のアート・コミュニケータがファシリテートしてくれて、部分的に体験した。体験の中での気づきを本番で活かすのだ。
・作品を観やすい立ち位置はどこかな。部屋から部屋への移動中はどんな話をして場をつなごうかな。
・子どもたちから出た意見をどう受け止めたら良いだろうか。
・トイレの場所は?非常口は?などなど。


・わたしにとっては行き慣れた美術館だけれど、子どもたちにとっては人生初めての美術館体験という子も少なくないだろう。
・わたしたちは子どもたちに、「行って楽しかったね」という、1クールで終わりの美術館体験をさせるだけでは不十分だ。
・「今度はおうちの人を誘ってまた行こう」、「あの作品の作者の、他の美術館で展示されてる別の作品も観てみたいな」、「あとでネットで調べてみよう」というような、次回を期待させる、いわば、「2クール目の存在を想起させるような1クール目第9話」の美術館体験に導かなければならない。

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