黒柴的パンセ #49

黒柴が経験した中小ソフトハウスでの出来事 #34

ここでは、中小ソフトハウスで勤務していく中で、起こったこと、その時何を考え、また今は何を考えているかを述べていく。

「発言しなければどうなるかなって、思った」
これは、エンドユーザとの打ち合わせに参画した自社の役員が、打ち合わせ後に黒柴の上長に向かって話した言葉である。

パンセ#48では、そのポジションにいるものが、どのように振る舞うべきなのか?という話をしたつもりである。
#48の例では、打ち合わせに参加している最上位のエンジニアである黒柴が発言の口火を切ることで、自社のエンジニアたちの積極的な発言を引き出すことができ、それはメーカーから見た自社の評価にもつながった。

では、発言をするべき立場の人が話しを切り出さなかった場合は、どのようになるのだろう?
実はこのような場合にも(直接的にではないが)遭遇したことがあるので、そのときの状況を残していきたい。

その打ち合わせは、パンセで何度か取り上げているトラブルプロジェクトに関するものだった。
自社がエンドユーザから直接請け負ったエンドユーザ企業の基幹システムの更新を行うプロジェクトで、自社には荷が重い「要件定義」を含むシス手う開発であった。
基本的に要件定義が完了し、基本設計などもあらかた決まった詳細設計以降の開発のみに従事してきた自社は、「要件定義」をコントロールする術を持たなかったので、「要件定義」工程は只々遅延していった。

リリースの延期を繰り返し、かといって「要件定義」が固まらないまま設計・製造に着手して、段階的にリリースした機能はまともに動くことは無く、とうとうエンドユーザ側の堪忍袋の緒が切れた。
自社のプロジェクトマネージャは、現状把握ということですら役に立っていなかったので、自社の社長を含む役員とエンドユーザ側のエグゼクティブ層との打ち合わせとなった。

お互いエグゼクティブ層同士の打ち合わせだったため、黒柴は出席していないが、黒柴の上長であるグループのマネージャが出席していたため、会議の状況を後日確認した。
グループのマネージャ曰く、「社長が一切発言をしないものだから、自社からは何も建設的な提案はなく、相手からは言われたい放題言われて、無条件降伏みたいなものだった」とのことだった。
あまりに社長が発言しないので、グループのマネージャは打ち合わせ後に社長に対して「なぜ、何も言わないのですか?」と質問したところ、回答が冒頭の「発言しなければどうなるかなって、思った」である。

結果的には何も起きなかった。
社長自身が発言をしないことで、同席していた自社のエグゼクティブ層、マネージャたちも一切発言をすることは無く、エンドユーザ側からの質疑に対して回答することに終始した。
最終的には、上記したように「無条件降伏」のような形になり、この打ち合わせの後は、エンドユーザ側のプロジェクトマネージャにすべて仕切られて、自社の社員たちは結構厳しい作業に従事せざるを得ない状況になった。
また、エンドユーザ側の会議出席者と後日話しをしたが、この打ち合わせの後エンドユーザ側では、「社長自身がだんまりを決め込むなんて、なんて不誠実な会社だろう」と一気に自社の評価が下落したということも聞いた。

これは、「発言するべき立場の人が何も話さない」結果、より状況が悪化したという例である。
やはり役職や、立場において、上位に立つものはその責務を果たすべきだと黒柴は思う。
諸兄らの会社の役職者は、きちんとその責務を果たせているだろうか?

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