黒柴的パンセ #36

黒柴が経験した中小ソフトハウスでの出来事 #21

ここでは、中小ソフトハウスで勤務していく中で、起こったこと、その時何を考え、また今は何を考えているかを述べていく。

「なんて自分は馬鹿なんだろうと、悲しくなる」
これは、すでに退職してしまった若手社員と会話した中で、出てきた言葉である。

この若手社員Y(女性)は、自社に新卒として入社してきた。
当時は、現在行っているアウトソーシングによる新入社員研修ではなく、社内で中堅社員による社内研修を行っていた。
後述するが、このとき研修を行っていた中堅社員も問題を抱えていたのだが、Yの社内研修もボロボロだった。
特に皆が気にしていたのが、研修(主にプログラミング)を行っている際に躓くと、涙が止まらくなってしまい、しばしトイレに閉じこもってしまうのだ。
この「泣く」⇒「トイレ」は頻繁に発生し、社内でも話題になることが多かった。

なんとか新入社員研修も終わり、現場に配属されOJTも始まったのだが、そこでも同じように「泣く」を繰り返し、配属先でもやや持て余し気味だった。
1年くらいたった後、最初の配属先では使えない(その現場では客先常駐がメインだったので、さすがに常駐先には連れていけない)と判断された。
当時、社内で請負開発を行っていた黒柴のプロジェクトで使ってみてくれないか?ということで、黒柴のグループに所属となった。

上記のことがあったのと、黒柴の社内開発はYを含め含めて4名ほどの小規模プロジェクトだったので、黒柴はプロジェクト管理をやりつつ、Yとマンツーマンで話しをすることにした。
当時のYは、自らの現状を理解しているのか、最初は暗い表情で、仕事に対しても積極的に取り組んでいるとは感じられない状況だった。
仕方ないので、そのプロジェクトの話しをするというよりも、新人社員研修を再度行うような感じで、毎日2~3時間くらいいろいろと会話した。

そのうち、少し前向きになったのか、やや表情が明るくなった時に、「理解できるとさほど難しいことでもないし、もう悲しくないだろう?」と問いかけると、以下のような話をし出した。

AということからEという結果を導き出すときに、AはBになる、BはCになる、CはDになる、DはEになると段階を踏んで考え、最終的にAはEになる導き出すとします。
でも、DからEになるということが理解できないときに、ひょっとしたらDからEを導き出すという過程が間違っている、すなわちDという状況を導き出したCからDという段階が間違っているのかと考えてしまう。
実は、途中の過程も確実に理解できてはいないので、BからCを導き出すという過程も間違っている、もしかしたら最初のAからBという部分も間違っているのかもしれないと思ったら、『なんて自分は馬鹿なんだろう』と悲しくなって涙が止まらなくなる。

Yの話し

この話を聞いてから、例えばBからCになるというときに、B´(ダッシュ)からもCになるよね、XからもCになるよね、という感じで、Yの理解ができるように説明した。
これは結構手間がかかったけど、理解が進むにつれてYの表情が明るくなり、多少なりとも作業に前向きに取り組めるようになった。
結果的に、このプロジェクトは地方に出張に行って、現地でインストール作業を行うことになっていたのだが、その出張作業にも携わって、多少危ないところはあったが、作業をやり遂げることができた。

Yの話しは、黒柴の中でいろいろと考えさせらることも多かった。
実はYの新人社員研修を担当した中堅社員は、Yを担当する前にメンタル障害で1年くらい休暇を取っており、その休暇明けだった。
実際のプロジェクトに配属させる前に、リハビリ的に新人社員研修を担当した方がいいだろうという役員の判断で、Yの研修を担当していた。
上記のようにYは手間がかかる新入社員だったが、リハビリ中の中堅社員には、その手間をかけるだけの余裕もなかった。
結果的にYは自分自身の不甲斐なさに病んでしまい、また中堅社員もこの後メンタル障害気味になり、また休みがちになってしまった。

最終的に、Yも中堅社員も退職してしまい、現在は両名とも在籍していない。
だが、Yのことを思い出すたびに、もう少しなんとかできなかったのかなぁと思う。
このことがあってから、黒柴は若手に対していろいろな話をするようにしていたが、あまり実を結んでいるように感じられない。
人を育てるというのは、難しいものだな・・・

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