大森靖子「ノスタルジックJ-pop」/スウィート90'sメモリー

そういえばちゃんと言ってなかったけど、大森靖子がアルバム『洗脳』でやっていたことって、実はすごく時代的な必然がちゃんとあると思うのだ。

というのは、90年代J-popリバイバル、ということ。海外でポスト・パンクとかニューウェーブとかの80'sの再解釈がブームになったのはちょうど今から10年前の2004年くらいで、そこから考えると、時期的にも納得がいく。

大森靖子はすごく批評的なミュージシャンなので、アルバム『洗脳』のタイトル候補にもなっていたという「ノスタルジックJ-pop」という言葉で、90年代、渋谷系が終わったあとの「あの時代」がすでにグッド・オールド・デイズになっていることをちゃんと指し示しているのだと思う。CDが一番売れていた「J-pop黄金期」。

そういうオーダーにちゃんと答えたのがアレンジを担当した奥野真哉で、たぶん参照軸はYEN TOWN BAND「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」やMY LITTLE LOVER「Hello,again ~昔からある場所~」あたり。さらにサビ前の「ガガッ! ガガッ!」っていうギター。これ明らかにレディオヘッド「クリープ」への批評的な言及だよね。

「Sound Designer」誌のインタビューによると「「ノスタルジックJ-pop」だったら「90年代で」という5文字だけのメールを奥野(真哉)さんに送ったり」とのこと。

同誌には奥野真哉のインタビューも掲載されていて、彼はこんな風に語っている。

「どうせやるんだったら、靖子ちゃんの歌と対決しようと思って。僕の好きな音楽とか、培ってきた技術とかを靖子ちゃんの歌とメロディにすべてぶつけてみようと考えました。
 今回のアレンジでは、個人的にはJ-POP批判みたいな部分も出したかったんですよ。だから、ヒット曲のパロディっぽい大袈裟なアレンジになってます。無意味に大ぶりのギターが入っていたりとかね(笑)」

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