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Awesome City Club「4月のマーチ」/2010年代の「シティポップ」の正体

4月8日に1stアルバム『Awesome City Tracks』をリリースした男女混成の5人組、Awesome City Club。そのリードトラックがこの曲。何度も聴いてるんだけど、ほんと春っぽくて、気持ちよくて、いい曲だと思う。

以下の座談会でも彼らについて語りました。

2015年春のメジャーデビューアーティスト特集 音楽ライター宇野維正×柴那典×森朋之 座談会 (1/3) - 音楽ナタリー Power Push
http://natalie.mu/music/pp/majordebut_2015

そこでも一緒になった宇野維正さんのインタビューが以下。

Awesome City Clubが明かす、バンドの成り立ちと活動ビジョン「ドカンと売れたら一番おもしろい」 - Real Sound|リアルサウンドhttp://realsound.jp/2015/04/post-2940.html

そこで宇野さんが言ってる通り、彼らの音楽を聴いて僕が想起したのも、フェニックスとかパッション・ピットのようなエレクトロ・ポップ。


でもって、そこに通じあってるものって、単なる音楽性だけじゃなく過去のいろんなポップ・ミュージックを参照しながら「洗練」とか「オシャレ」とか、そういうものを良しとするセンスと感覚だと思うんですよ。彼ら自身もそういうことを言ってる。

単純にリスナーとして、シティ感のあるもの、都会的なものが好きなんですよね。パッションでバーンと伝えるものよりも、洗練されているグッドミュージックと言われるようなものをすごく求めていて。

ざっくり言えば「オシャレなことをやりたい」って思うんですよね。周りのバンドマンを見ててもそうで、そうなるのは歳のせいなのか、今の時代感なのかはわかんないんですけど。(マツザカ)

http://www.cinra.net/interview/201504-awesomecityclub?page=2

彼ら自身はWashed Outやチルウェイヴ以降の流れに、そういうものを見出していたりする。


で、それは、アイドル界隈でもバンド界隈でも、ここ数年続いてきた「全力」を良しとする風潮へのカウンターとして機能しているんだと思う。わかりやすく言うと、MCの時に声を張り上げるかどうか。アイドルグループだったら自己紹介の最初に「ハイ!」って言うかどうか。バンドだったら四つ打ちの速いビートに乗せてギタリストやベーシストが足を高く蹴り上げるかどうか。

バンドを組むときに合言葉のように言っていたのは、とにかく暑苦しいのは嫌だねってこと。刹那的なものに対して、「カロリー重いよ」という思いは全員共通でありました。(atagi)

http://www.cinra.net/interview/201504-awesomecityclub?page=2
この指摘は彼らの音楽を言い表す上でとても重要。

で、実のところ、ここ数年、東京のいろんなインディー・バンドの音楽をざっくりと言い表す言葉として用いられてきた「シティポップ」という言葉って、僕は詰まるところサウンドとか曲調うんぬんより「”全力”で”エモく”て”暑苦しい”のって、なんか嫌だよね」っていう感覚を言い表すジャンル用語だったと思うのです。

つまり2010年代の「シティポップ」は気分を言い表す用語でしかない。

だから当然、Awesome City Clubも「シティポップ」の枠組みに括られるようになる。

僕らが音源を発表するようになってから、いろんなところで「シティポップ」って言われるようになって。その括りにあまりしっくりきてなかったというのがあって。だったらもう、Awesome Cityという自分たちの街を作って、そこで鳴ってる音楽っていうことにすればいいんじゃないかなって思って。(マツザカ)

http://realsound.jp/2015/04/post-2940_4.html

でも、上記の宇野さんのインタビューでも言ってるけど、Awesome City Clubのよさって、それが単なるスノビズムに終わってないところだと思うんです。ちゃんと広い場所に打って出て、そこでお金を稼ごうとしてる。「暑苦しいのってダサいよね」って小さな場所で言いあってるインディーバンドなんか、他にも沢山いて。でも、アンチテーゼだけじゃ外側には届かない。でも、Awesome City Clubは、ファッションとの親和性とか、PORINちゃんが可愛いこととか、いろんな武器を持ってる。

彼らが掲げる架空の街「Awesome City」のイメージとして声を揃えるのは、ドバイとか東京が持つ「キラキラ」で、そういう、貧乏臭くないところがいいなって思う。

親父が仕事でドバイに住んでて、そこに遊びに行ったことがあって。ドバイってなんにもなかった砂漠に高層ビルがメチャクチャ建ってるじゃないですか。世界一高いビルとか、すごい変なかたちのホテルとか。でもその一画に、古いのか新しいのかわからない煉瓦のビルとかキラキラしたビルとかが密集して建ってる場所があるんですよ。それを見て、「あぁ、この感じいいな」って。このバンドを組んでから見た風景なんですけど、それ以来、なんとなく頭のイメージにあるのはその風景で。(マツザカ)
地方にいる時にイメージしていた東京の街はキラキラしていて。あの想像上のキラキラした感じっていうのが、自分の中のAwesome Cityのイメージで。だから、貧乏臭いと思われたくないです(笑)。(atagi)


「note」でもお隣さんですね。

https://note.mu/awesomecityclub

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