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2020年のオーパーツ/HANA with 銀音堂「Melody-Go-Round」

この曲のことずっと書こうと思ってた。HANA with 銀音堂「Melody-Go-Round」。

2020年に発表された曲なのに、まるでオーパーツみたいな響きがある一曲。まったくもって無名なユニットなのに、やたら豪華な音が鳴っている。たぶん音楽を作る側の人なら気付くと思う。打ち込みでプロダクションを作るのが当たり前になっている今の世の中に、スタジオで時間をかけて、超一流のミュージシャンたちが演奏して、丁寧に練り上げた音像が鳴っている。そしてに歌っている声は、あどけない少女のような声。

これ、何かというと、映画『音響ハウス Melody-Go-Round』の主題歌として書き下ろされた一曲。作曲は佐橋佳幸。作詞は大貫妙子。ユニット「銀音堂」のメンバーと、レコーディング参加ミュージシャンは以下。

Drums:高橋幸宏
Guitar:佐橋佳幸
Vocal:HANA
Keyboard:井上 鑑
Other Instruments:飯尾芳史

(レコーディング参加メンバー)
Violin:葉加瀬太郎
Trombone:村田陽一
Trumpet :西村浩二
Alto Sax:本田雅人
Tenor Sax:山本拓夫
Chorus:大貫妙子
Producers:飯尾芳史・佐橋佳幸

日本のポップスを支えてきた、かつ現在も現役で最高峰の、めちゃめちゃ豪華な面々が集まってるわけです。正直この人たちを普通に集めようと思ったらいくら予算かかるんだこれ?っていうくらいのメンバー。そして歌っているのは13歳(レコーディング当時)の少女、HANA。

映画『音響ハウス Melody-Go-Round』については、相原裕美監督と以前にお仕事をご一緒した縁もあって、試写で拝見させてもらった。本当なら宣伝にちゃんと協力すべく11月の公開前に書きたかったんだけど忙しくて今になっちゃった。

『音響ハウス Melody-Go-Round』は、1974年に東京・銀座に設立されたレコーディングスタジオ「音響ハウス【ONKIO HAUS】」にスポットをあてたドキュメンタリー。レコーディングスタジオのドキュメンタリー映画って、海外ではいくつか作品があって、たとえばフー・ファイターズのデイヴ・グロールが監督をつとめた『サウンド・シティ - リアル・トゥ・リール』もそう。

たとえば『約束の地、メンフィス テイク・ミー・トゥー・ザ・リバー』も、メンフィスの「ロイヤル・スタジオ」を舞台にしたドキュメンタリー。

こういうドキュメンタリーが成立するのは、ポップミュージックがちゃんと土地に根付いているから。スタジオという場所がもたらしたミュージシャンたちのコミュニティが文化を作って、それが消費されて終わるのではなくちゃんとが歴史の縦の軸になっているからで。日本で、東京でそれをやるなら「音響ハウス」ということなのだと思う。

で、その映画の中で作られていくのがHANA with 銀音堂「Melody-Go-Round」。これだけの面々が集まって曲を作ろうということになって、じゃあ誰が歌うかという難題にするりと答えを与えてしまったのが、HANA。ROTH BART BARONの「けもののなまえ」でも歌っている。

無垢な声の向こう側で歴史と未来がちゃんと手をつないでる感じがあって、そこもいいです。

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