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Sugar's Campaign「ホリデイ」/アーカイブから生まれるポップソング

Sugar’s Campaignのファーストアルバム『FRIENDS』からの一曲。今回のタイミングで僕はNEXUSのインタビューを担当していて、それがホントに楽しい取材だった。ここまで古今東西のアーティストや音楽の話が出てくるインタビュー、なかなかないと思う。「ポップさ」っていうのは決して知識量があれば作れるようなものじゃないけれど、彼らの場合は、そのアーカイブの豊かさが確実に活きている。

僕の中で、一番記名性があるのはアーカイブの選び方だと思うんですね。音色は真似できるけれど、アーカイブは自分の中にしかないものだから。(AVEC AVEC)

NEXUS | <インタヴュー> Sugar’s Campaign「全てにおいて、いいものは“憧れる瞬間”に生まれるんです」 ――最新型のハイブリッド・ポップ・デュオ、いよいよメジャー進出

http://www.nexus-web.net/article/sgrc/

realsoundのインタビューも面白かった。

トラップとかサウス・ヒップ・ホップも、曲調が一緒で、やってることも単純と思ってたんですけど、LOW END THEORYが来て、DADDY KEVが「アメリ」を掛けてるときに「あー、そういうことか!」って気付いたんですよね。ダサくても世の中に存在するものには、良さが絶対あってしまう(笑) (Seiho)

フュージョンとかAORも同じ感覚で、ダサいが50%、カッコいいが50%みたいに思えるんです。だから、Sugar's Campaignもダサさとカッコよさが半々なのを分かった上で主観を捨てたくて、主観の象徴である固定のボーカリストを置かず、メインの俳優を入れ替える劇団スタイルを取っています。それには、パーソナルな部分を捨てて、一つの物語をカッコ良くしていきたいという意味を込めているんです。 (AVEC AVEC)

Sugar's Campaignが語る、新世代のポップミュージック論「ポップを突き詰めると気持ち悪くなっていく」 - Real Sound|リアルサウンド

http://realsound.jp/2015/01/post-2265.html

ナタリーのやつも。

過去の音楽をやるだけなら、極端な話、CD-Rがあればいいわけで。むしろ古い音楽はなるべく聴きたくないし、自分たちが存在する理由っていうのは自分たちにしか作れない新しいものを2015年のこのタイミングでドロップしていくだけっていう考え方がすごい強い(Seiho)

僕が曲作るときは“自分が今一番聴きたい曲”を意識してるんで。でもそれが世の中に存在しないから、「このジャンルのこの部分と、このジャンルのこの部分を合わせたら絶対聴きたいのができるやろ」と思って作ると、結果的に新しいかなと。基盤にある文脈は過去のものから取ってるんですけど、その集合体は今までなかった、みたいな感覚ですね。(AVEC AVEC)

Sugar's Campaign「FRIENDS」インタビュー (1/4) - 音楽ナタリー Power Push

http://natalie.mu/music/pp/sugarscampaign

ナタリーのインタビューで言ってたけれど、たしかに「ホリデイ」には80年代のディスコっぽい感じがある。挙げられてるのはこの曲ですね。

だから、山下達郎とか聴いてるような40代〜50代に届けたいっていう彼らの意図も、すごくよくわかる。その上で、単なるリバイバルではなく新しいものを作りたい、というのも。

そういう意味で言えば、彼らは(たんなるテイストやポップ感というだけではなく本質的な意味合いにおいて)渋谷系というあり方の後継者であるとも言える。

渋谷系という言葉を語るときに、「渋谷を中心とした外資系CDショップの上陸を背景に、アーカイヴ化の進んだあらゆる年代の“名盤”に慣れ親しんだリスナー体質の音楽マニアが表現者として一気に表舞台に現れだした、90年代を象徴するムーヴメント」――と語られることが多い。

僕がSugar's Campaignに感じてるのも、同じこと。でも、彼らの世代の場合は、外資系CDショップのかわりに、YouTubeやSoundcloudなどインターネットのアーキテクチャが、その背景に相当する。アーカイブの豊富さ、アクセスの簡単さは90年代の比じゃない。だから状況は似ていても全く違う。

渋谷系の時代は「知っている」ということが差異化のキーだった。元ネタがわかるということ自体が、特権階級的な楽しみだったわけだ。

でもネット以降の時代になって、世の中に流れる情報の量と粒度が全く変わった。手元にはいつもスマホがあるし、そこには検索窓がついている。知らなかったらググればいい。だから「何を知っているか」ではなく「どう知っているか」が重要になっていった。

たぶん、Sugar's Campaignの二人やtofubeatsや、maltine recordsのtomad氏や、いま20代半ばのネットシーン出自のクリエイターはそういうことをちゃんとわかってる人たちなんだと思う。無意識に、本能的にではなく、ちゃんと意識してそれを言語化している。

世の中の流れや波がどう動いているかを見えているから、こうしてフックアップされて広まっていくんだろうな、ということも思う。(11/100)





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