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くるりの「益荒男さん」と「大阪万博」のヤバさについて

曲が配信されたのは先月だからタイミング的には遅いけどそういうのは気にしない。『MUSICA』にも書いたけどこっちにも書いておこう。くるりの「益荒男さん」と「大阪万博」がマジですごいよねという話。

コミカルじゃなくてインタレスティングという意味での“笑い”を風刺と共にポップソングに込めるのは知性と教養と勇気が必要なことで、そういう意味で“益荒男さん”は本当にすごい。他の誰にも真似できない。川上音二郎が明治時代にやってたことを2020年にアップデートしてるとも言えるけど、節回しにも曲展開にも民俗と多文化を織りなす仕掛けが詰め込まれている。

「米價騰貴の今日に細民困窮省らす」
「慈悲なき慾心」
「おめかけぜうさんごんさゐに」
「権利幸福きらいな人に(自由湯をば飲ませたい)」
「外部の飾はよいけれど政治の思想が欠乏」
「心に自由の種を蒔け」

歌詞には、川上音二郎が「オッペケペー節」で歌ったこのあたりのフレーズが引用されている。これを踏まえてこの曲を聴くと、かなり鋭い社会時評が込められているのがわかる。

そのうえで、MVのユーモラスなタッチも含めて曲としての佇まいのトリートがとても上手い。「Liberty & Gravity」を思い出す人も多いと思うけれど、これも「自由」についての歌なのだよなあ。

そして、その直後に配信された「大阪万博」は、明らかに「TOKYO OP」(=東京オリンピック)と対をなすプログレ曲。

「TOKYO OP」はドリーム・シアターあたりの系譜を彷彿とさせる変拍子ハード・プログレなんだけど、「大阪万博」のほうはジョン・マクラフリンのマハヴィシュヌ・オーケストラとか、そのジョン・マクラフリンとがっつり組んでいた頃のエレクトリック・マイルスあたりにも通じるジャズ・ロック感もある。

そういえば、Dos Monosの荘子itがマーズ・ヴォルタとジョン・フルシアンテをきっかけにキング・クリムゾンからマグマとかこのへんのジャズ・ロックも聴き漁ってたプログレ高校生だったという話をしてたんだけど、くるりの面々とすごく話合いそうな気がするんだよなあ。リミックスとかしないかなー!(期待)


12月25日には『コトコトことでん / 赤い電車 (ver. 追憶の赤い電車)』もリリース。そっちもいい曲なんだけど、なんか「益荒男さん」と「大阪万博」のヤバさのほうがビンビンときたことを書いておかなきゃと思って書きました。

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