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虻を詠む(自作の短歌)

 今、住んでいるアパートのベランダで虻の死骸を発見することが割とあります。

住んでいるアパート二階ベランダはときどき虻の死に場所になる                               

なみの亜子選,『塔』2023年9月号,p.140

 
 昨年の秋に、ベランダで死にかけている虻を発見しました。ちょこちょこと時間をおきながら観察しているうちに短歌ができ、『塔』に投稿しました。掲載されたものをここに引用します。

ふるえつつ進もうとする虻の足右がわすべて上がってしまう
そこからは十センチほど進みしか立ち姿にて動かなくなる
生きていたときのままなる姿にて置いてゆかれし身を眺めいて
しばらくをおいてふたたび目をやればたおれていたりのこされし身は
風ふけばたおされるほど知らぬまにのこされし身の軽くなりしを
ひらがなの「る」の字に似てる亡骸を見つめるわれもまるまっていた
三枚のティッシュをかさねふんわりと亡骸つつむ日の入りのとき                     

永田淳選,『塔』2024年1月号,p.130

 
 塔短歌会に入って初めて掲載された短歌の中からこちらの歌を。

おだやかに横向きに寝ているような蜂の死骸のたたまれた足

山下洋選,『塔』2022年8月,p.184

 今思うと、あの死骸は蜂ではなく虻だったのかもしれません。

 虻の歌をこんなにつくるとは思っていませんでしたが、目の前に現れてくれたものを大切にしたいなと思います。
 
 ベランダは家の一部でありながら、外に出ることのできる不思議な場所だなと思います。最近もベランダに虻の死骸があり、これまでに詠んだ虻の歌を紹介したくなりました。お読みくださり、ありがとうございました。
 それにしても、なぜこんなにいくつもの虻の亡骸がベランダにのこされてゆくのでしょう…。
 


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