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「aftersun /アフターサン」エンディングで、えっ、と声が出た。

少しまえに観た「aftersun /アフターサン」(2022米)のことを何も書けずにいた。
https://happinet-phantom.com/aftersun/

事前に読んだイントロダクションにはこう書かれていた。
「.....20年後、カラムと同じ年齢になったソフィは、懐かしい映像のなかに大好きだった父との記憶を手繰り寄せ、当時は知らなかった彼の一面を見出してゆく」

だからエンディングが近づいたころ、パパは何を考えてたんだろ、どんな気持ちでいたんだろ、みたいなシーンがあるのかなぁと想像していていたが。
いよいよ明日は帰るという前夜、カルムはひとり咽び泣き。翌日離婚した妻の元に帰っていくソフィーと別れ、ドアの外に消えていった。

そしてその映像を20年後に見ている大人のソフィーが現れる。だがソフィーは何も語ることなく、この親子がその後どうなったのかというテロップもなく、エンディング。
えっ、と思わず声が出た。
想像していたようなオチも説明もなくふいをつかれた私は、109シネマをでて、どういうことなのかと考えながらウチまで歩き。そのあとも数日この作品のことを考え続けた。

そしてある朝、noteに「Pick&Rollさん」という方のレビューを見つけた。( https://note.com/pickandroll0504/n/n00f1e12e6ef5 )

「......この映画から読み取れるのはカルムはその後、自殺したであろうということ。それは劇中で何度も暗示されている。.... 彼はおそらくうつ病を患っている。」

カルムに深い悲しみや後悔があったことはわかっていたが、それによって精神を病んだかもしれない、或いは自殺した。そこまでは想像しなかった。

それから私の脳裏に、遠い日の幼かった娘、先月亡くなったハート、数年前に永眠した母の映像が代わる代わる浮かび上がり、胸が張り裂けそうになった。私は泣いた。あのとき娘はなにを思ってたんだろう。ハートはなんでにあんなことをしたんだろう。いったい母に私は何をしてあげたのか。

映画館でカルムやソフィーに感情移入して泣くことはなかったが、この作品を観た私は何日も人生のさまざまな場面を思いおこし、悔やんだり、いやいけない前を向かなくっちゃと思い直したり、した。
これはそんな映画だった。