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BAMBOO INCUBATOR「バリュエーションキャップを深掘りする会」

起業家の皆さん、次の疑問に即答できますか? 「バリュエーションキャップってなに?」 「バリュエーションキャップはいつ誰がどうやって決める?」 「バリュエーションキャップにおける「バリュエーション」はいつの時点のバリュエーション?」 「この手の話は誰に相談したらよい?」

BAMBOO INCUBATORは、スタートアップ起業家の情報格差解消を目指し、起業家、エンジェル投資家、弁護士、弁理士、会計士、税理士、司法書士及び社労士のチームで運営されています。 今回は、J-KISSなどの資金調達方法において特に議論となりやすい「バリュエーションキャップ」について深掘りをします。マニアックな内容ですが、起業家の方に貴重な提供を情報できるものと自負しております。 この40分が終わったころには、バリュエーションキャップについて具体的に理解ができるようになっているはずです。

完全無料ランチウェビナーです。ランチ片手に世界中どこからでもお気軽にご参加ください! 登壇者紹介(50音順) 千葉直愛(弁護士):BAMBOO INCUBATOR代表。シード、アーリー段階の起業家・スタートアップ支援を得意とする。
五十嵐将志(弁護士):弁護士法人アインザッツ代表。ファンド・スタートアップ法務を専門とする弁護士。過去に独立系ベンチャーキャピタルの設立に携わった実績がある。 丸山洋一郎(司法書士):スタートアップの商業登記手続き(VCからの資本を調達する際の種類株式、ストックオプション、組織再編)を専門分野とする。
中辻 仁(公認会計士):2006年にEYに参画し、会計監査、財務デューデリジェンスなどのM&A業務に従事。その後、大阪ガス株式会社では、ガス・油田のM&Aや在外子会社の管理を担当。2016年より同社子会社のJacobi Carbons(イギリス)に出向し、決算、ファイナンス、M&A推進、事業管理などの業務に従事。帰国後は、スタートアップ2社(Baseconnect株式会社、株式会社レスタス)にジョインし、IPO業務、VCや銀行調達の業務、事業開発に従事。64億円の資金調達を達成(1社目:10億円、2社目:54億円)。
石本憲史(司法書士):「法律と資本政策で経営をデザインする」をモットーにスタートアップを支援。スタートアップ支援に特化した司法書士。
ホームページ https://bambooincubator.jp/

Capはどう決めればいいのか?

J-kissの発行要項例
1 発行価額 1個○○円
2 次回資金調達 総額〇〇円以上の株式による資金調達
3 ディスカウント 0.8
4 ポストキャップ ○○円

ディスカウントとは
新株予約権1個と引き換えにもらえる株数を定める基礎となる値
「次回資金調達」時の株価から割引して株式を買えるイメージ
例では0.8(2割引き)

ポストキャップとは
「ディスカウント」と同じく、新株予約権1個と引き換えにもらえる株数を定める基礎となる値
投資家に保証するミニマムの株数が定まる
「ディスカウント」を基礎に定めた株数と、「ポストキャップ」を基礎に定めた株数を比較し、投資家に有利(低額)な方が採用される。

次回株式資金調達時における株価が、大きく上がっても、ポストキャップより高くならないように上限を設ける。

J-kiss SAFEユーザーガイド 
スタンダードはCaoのみ。
CapとDiscountは別バージョンとして記載。→削除。
CapとDiscountを使っているものが増えている。96%、2023年。アメリカ。

二重の絞りで検討する試み
1段目:現在おおよそのVal交渉ベースで不合理な範囲を排除
バリュエーションの交渉ベース
バリュエーションの種類
今回のラウンドで投資家が妥当だと考える額、起業家が妥当だと考える額、合意した額の3つ。
次回のラウンドで投資家が妥当だと考える額、起業家が妥当だと考える額、合意した額の3つ。
合計で6つの種類。
ポストキャップを決める場合、今回のラウンドで投資家が考えるバリュエーションの額と、次回のラウンドで起業家が考えるバリュエーションの額の間に定まると想定。
今回のラウンドで投資家が考えるバリュエーションの額と同じなら、株式発行で資金調達すれば良いので、一円でも高くしないと意味がない。
次回のラウンドでスタートアップが妥当だと考える額より高く設定する場合、投資家が損する可能性が高いので、1円でも安くしないと。
ディスカウントを無視して考えてみた場合。
(1)まずは論理的に不合理な範囲のCapを設定しないようにする。
例:株式でのValとJ-kiss/CEでのCapが同額などありえない。
(2)Capは発動することが前提
 ・投資家は早期に出資したリスクをCapで回収する。J-kissはそういう使い方を想定した仕組みになっていると思われる。
 ・スタートアップとしては、Capを発動できるような現実的な額を提案する方が良い、という指摘。
(3)J-kissならCapは比較的高めベースで考えてOKでは?
 ・Cap&Discountで最恵国待遇もついているのでかなり投資家寄り。
 ・最恵国条項の削除を考える可能性。

2段目:同分野の相場や次回Val達成見込みなどからFIX
アメリカでは、政府がデータを取って、事業分野ごとにある程度相場が形成されている。
日本では、J-kiss/CEの統計があるわけではないので、同分野他事例との比較はしづらい。
今後の課題として、データを取り始めるべきではないか。→誰が。

次回バリュエーション(株価)の達成可能性
・投資家が取るリスクに相応しいCap。

Capの重要性の程度について
・Capの細かい数字をギリギリ詰めるのはあまり有益ではない。
・まずは複数パターンのシミュレーションをしてみること。5ぐらい。

シミュレーション例
1、創業者が100%持っている状態からスタート
2、第1回J-kiss発行
 1,000万円の調達
 次回資金調達は1億円以上の株式による資金調達
 以下Capを1億円、2億円、4億円、6億円として試算
3,2の直後に資金調達
 バリュエーション 5億5,000万円
 1株5万円×2,000株で1億円を調達

4億円(Cao発動)、6億円(Cap不発動)


最恵国条項について
 日本固有の問題として、いちいち登記が必要
 最恵国条項もデフォルトで入っている
 そのため通常J-kissは1度に1種類しか発行されない
 投資家間の競争原理が働きづらい
 削除して複数パターンのCEの同時発行も一考の余地あり。
 Capを高くしてくれる投資家に多めに発行して、必要資金を調達する。

統計データによる相場観の醸成
 やはり統計が欲しい
 J-kissのデータを持っているWebサービス、スマートラウンドなどが出始めている。

CAPは「次回の資金調達時の」バリュエーション、「現在の」バリュエーション、どっちが正しい?
バリュエーションとcapは別物。
交渉の範囲の幅を決める参考値として、どっちも正しい。
そもそもバリュエーションは計れない。先送りが出来るから株式ではなく新株予約権で発行している。事業計画で決めるとしたら、次回の資金調達時。

会社法上はどうなっているのか?
会社法236条。違法、合法の話ではない。
(新株予約権の内容)
第二百三十六条 株式会社が新株予約権を発行するときは、次に掲げる事項を当該新株予約権の内容としなければならない。
 当該新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法
 当該新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法
 金銭以外の財産を当該新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
 当該新株予約権を行使することができる期間
 当該新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本金及び資本準備金に関する事項
 譲渡による当該新株予約権の取得について当該株式会社の承認を要することとするときは、その旨
 当該新株予約権について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、次に掲げる事項
 一定の事由が生じた日に当該株式会社がその新株予約権を取得する旨及びその事由
 当該株式会社が別に定める日が到来することをもってイの事由とするときは、その旨
 イの事由が生じた日にイの新株予約権の一部を取得することとするときは、その旨及び取得する新株予約権の一部の決定の方法

 イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の株式を交付するときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその算定方法
 イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
 イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の他の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)を交付するときは、当該他の新株予約権の内容及び数又はその算定方法
 イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の新株予約権付社債を交付するときは、当該新株予約権付社債についてのホに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのヘに規定する事項
 イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の株式等以外の財産を交付するときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
 当該株式会社が次のイからホまでに掲げる行為をする場合において、当該新株予約権の新株予約権者に当該イからホまでに定める株式会社の新株予約権を交付することとするときは、その旨及びその条件
 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。) 合併後存続する株式会社又は合併により設立する株式会社
 吸収分割 吸収分割をする株式会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を承継する株式会社
 新設分割 新設分割により設立する株式会社
 株式交換 株式交換をする株式会社の発行済株式の全部を取得する株式会社
 株式移転 株式移転により設立する株式会社
 新株予約権を行使した新株予約権者に交付する株式の数に一株に満たない端数がある場合において、これを切り捨てるものとするときは、その旨
 当該新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)に係る新株予約権証券を発行することとするときは、その旨
十一 前号に規定する場合において、新株予約権者が第二百九十条の規定による請求の全部又は一部をすることができないこととするときは、その旨
 新株予約権付社債に付された新株予約権の数は、当該新株予約権付社債についての社債の金額ごとに、均等に定めなければならない。
 金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社は、定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第四号又は第五号ロに掲げる事項についての定めに従い新株予約権を発行するときは、第一項第二号に掲げる事項を当該新株予約権の内容とすることを要しない。この場合において、当該株式会社は、次に掲げる事項を当該新株予約権の内容としなければならない。
 取締役の報酬等として又は取締役の報酬等をもってする払込みと引換えに当該新株予約権を発行するものであり、当該新株予約権の行使に際してする金銭の払込み又は第一項第三号の財産の給付を要しない旨
 定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第四号又は第五号ロに掲げる事項についての定めに係る取締役(取締役であった者を含む。)以外の者は、当該新株予約権を行使することができない旨
 指名委員会等設置会社における前項の規定の適用については、同項中「定款又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第四号又は第五号ロに掲げる事項についての定め」とあるのは「報酬委員会による第四百九条第三項第四号又は第五号ロに定める事項についての決定」と、同項第一号中「取締役」とあるのは「執行役若しくは取締役」と、同項第二号中「取締役」とあるのは「執行役又は取締役」とする。

バリュエーションのデータをとる必要性
・スタートアップに、開示するメリットはあるのか分かりませんでした?
・Capは登記から拾えるが、算定方法が分からない。バリュエーションは登記されない。
・現状、同事業分野の登記情報を取得して、参考として算定する方法もあり、との指摘。

(Cap付きの)CEを使うべきではないケース
・バリュエーションが割ときっちり決められる場合は、
・J-kissで調達すると、発行体がディスカウントして売却するので、損になる可能性がある。
・18か月以内に次回資金調達という期間制限と株式転換。売り急ぎの可能性リスク。→機能していない。止めるか、伸ばす可能性もあるのでは、と指摘。資金が動かないなら、登記もされない。
2回目のJ-kiss発行時に、1回目のJ-kissの期間を、2回目のJ-kissとそろえる契約をすることも。
・計算とかあまり好きじゃない人。