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安部晋三首相の辞任記者会見(8月28日)



[冒頭発言]
安倍晋三首相は、8月28日、首相官邸で記者会見し、自身の体調悪化を理由に辞任を表明した。記者会見の全文は以下の通り。
1. -(1)
猛暑が続く中、国民の皆さまにはコロナウイルス対策、そして熱中症対策、ダブルの対策に万全を期していただいておりますこと、国や地方自治体からさまざまな行政に対して、自治体のさまざまな要請に対して、ご協力をいただいておりますことに心から感謝申し上げます。

●国民、地方自治体のコロナ対策について謝意を表明する。この時点では、安部晋三首相が辞任の意向を有していることが窺われない。辞意表明会見は、冒頭で辞意を表明していない。

1.-(2)
コロナウイルス対策につきましては、今年の1月から正体不明の敵と悪戦苦闘する中、少しでも感染を抑え、極力重症化を防ぎ、そして、国民の命を守るため、その時々の知見の中で最善の努力を重ねてきたつもりであります。それでも残念ながら多くの方々が、新型コロナウイルスにより命を落とされました。お亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。今、この瞬間も患者の治療に全力を尽くしてくださっている医療従事者の皆さまにも、重ねて御礼申し上げます。

●コロナウイルス対策に関しては所与の条件下、最大の努力を行ったとの認識を示す。

1.-(3)
本日、夏から秋、そして冬の到来を見据えた今後のコロナ対策を決定いたしました。この半年で多くのことがわかってきました。3密を徹底的に回避するといった予防策により、社会経済活動との両立は十分に可能であります。レムデシビルなど症状に応じた治療法も進歩し、今、40代以下の若い世代の致死率は0.1%を下回ります。他方、お亡くなりになった方の半分以上は80代以上の世代です。
重症化リスクが高いのは高齢者や、基礎疾患のある方々であり、1人でも多くの命を守るためには、こうした皆さんへの対策が、最大のカギとなります。冬に向けてはコロナに加え、インフルエンザなどの流行で発熱患者の増加が予想されます。医療の負担軽減のため、重症化リスクの高い方々に重点を置いた対策へ、今から転換する必要があります。

●重症化リスクの高い人々に重点を置くという選択基準を明確にする。

1.-(4)
まずは、検査能力を抜本的に拡充することです。冬までにインフルエンザとの同時検査が可能となるよう、1日20万件の検査態勢を目指します。特に重症化リスクの高い方がおられる高齢者施設や病院では、地域の感染状況などを考慮し、職員の皆さんに対して定期的に一斉検査を行うようにし、高齢者や基礎疾患のある方々への集団感染を防止します。
医療支援も高齢者の方々など、重症化リスクの高い皆さんに重点化する方針です。新型コロナウイルス感染症については、感染症法上、結核やSARSやMARSといった2類感染症以上の扱いをしてまいりました。これまでの知見を踏まえ、今後は政令改正を含め、運用を見直します。

●1日20万件の検査態勢を目指す。

1.-(5)
軽症者や無症状者は宿泊施設や自宅での療養を徹底し、保健所や医療機関の負担軽減を図ってまいります。コロナ患者を受け入れている医療機関、大学病院などでは大幅な減収となっており、国民のために日夜ご尽力をいただいているにもかかわらず、大変な経営上のご苦労をおかけしております。
経営上の懸念を払拭する万全の支援を行います。インフルエンザ流行期にも十分な医療提供体制を必ず確保いたします。以上の対策について順次、予備費によって措置を行い、直ちに実行に移してまいります。

●軽症者、無症状者の治療は宿泊施設や自宅での療養を徹底する。

2. -(1)
コロナ対策と並んで一時の空白も許されないのが、わが国を取り巻く厳しい安全保障環境への対応であります。北朝鮮は弾道ミサイル能力を大きく向上させていますので、これに対し、迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことができるのか、一昨日の国家安全保障会議では現下の厳しい安全保障環境を踏まえ、ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針を協議いたしました。

●ミサイル阻止に関する安全保障政策の方針を新たに協議する。いわゆる「敵基地攻撃能力」に踏み込むとのこと。

2. -(2)
これに対し、迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことができるのか、一昨日の国家安全保障会議では現下の厳しい安全保障環境を踏まえ、ミサイル措置に関する安全保障政策の新たな方針を協議いたしました。今後、速やかに与党協議に与党調整に入り、その具体化を進めます。

●安全保障政策の変更が近日中に行われる。

2. -(3)
以上、2つのことを国民の皆さまにご報告させていただいた上で、私自身の健康上の問題についてお話をさせていただきたいと思います。

●コロナ対策と安全保障政策の変更が、安倍首相の重要関心事項であることを示している。

3. -(1)
13年前、私の持病である潰瘍性大腸炎が悪化をし、わずか1年で突然、首相の職を辞することになり、国民の皆さまには大変なご迷惑をおかけ致しました。その後、幸い新しい薬が効いて体調は万全となり、そして国民の皆さまからご支持をいただき再び首相の重責を担うこととなりました。
この8年近くの間、しっかりと持病をコントロールしながら、何ら支障なく首相の仕事に毎日、日々、全力投球することができました。

●潰瘍性大腸炎に関する過去の経緯について。

3. -(2)
しかし本年、6月の定期健診で再発の兆候が見られると指摘を受けました。その後も薬を使いながら、全力で職務に当たって参りましたが、先月中頃から、体調に異変が生じ、体力をかなり消耗する状況となりました。そして、8月上旬には潰瘍性大腸炎の再発が確認されました。

●8月上旬に潰瘍性大腸炎が再発した。

3. -(3)
今後の治療として、現在の薬に加えまして、さらに新しい薬の投与を行うことといたしました。今週初めの再検診においては、投薬の効果があるということが確認されたものの、この投薬、ある程度継続的な処方が必要であり、予断は許しません。

●新薬は効果があるが点滴による継続的な処方が必要。

3. -(4)
政治においては、最も重要なことは、結果を出すことである、私は政権発足以来そう申し上げ、この7年8カ月、結果を出すために全身全霊を傾けてまいりました。病気と治療を抱え、体力が万全でないという苦痛の中から、大切な政治判断を誤ること、結果を出さないことがあってはなりません。国民の皆さまの負託に自信を持って答えられる状態でなくなる以上、なくなった以上、首相の地位にあり続けるべきではないと判断いたしました。首相の職を辞することといたします。

●健康上の理由で、首相の職を辞することを決意した。

3. -(5)
現下の最大の課題であるコロナ対応に障害が生じるようなことはできる限り避けなければならない。この1カ月程度その一心でありました。悩みに悩みましたがこの足元において、7月以降の感染拡大が減少傾向へと転じたこと。そして冬を見据えて、実施すべき対応策をとりまとめることができたことから、新体制に移行するのであれば、このタイミングしかないと、判断いたしました。

●辞意表明は、新型コロナウイルスの感染拡大が減少傾向に転じた今しかないと考えた。

4. -(1)
この7年8カ月さまざまな課題にチャレンジしてまいりました。残された課題も残念ながら多々ありますが、同時にさまざまな課題に挑戦する中で達成できたこと、実現できたこともあります。全ては国政選挙のたびに力強い信任を与えてくださった、背中を押していただいた国民の皆さまのおかげであります。本当にありがとうございました。

●残された課題が多々ある。

4. -(2)
そうしたご支援をいただいたにもかかわらず、任期をあと1年、まだ1年を残し、他のさまざまな政策が実現途上にある中、コロナ禍の中、職を辞することとなったことについて、国民の皆さまに心より、心よりおわびを申し上げます。拉致問題をこの手で解決できなかったことは痛恨の極みであります。ロシアとの平和条約、また憲法改正、志半ばで職を去ることは断腸の思いであります。

●拉致問題の解決、ロシアとの平和条約、憲法改正が解決されずに首相職を去るのが残念だ。

4. -(3)
まあしかし、いずれも自民党として国民の皆さまにお約束をした政策であり、新たな強力な体制の下、さらなる政策、推進力を得て実現に向けて進んでいくものと確信しております。もとより、次の総理が任命されるまでの間、最後までしっかりとその責任を果たしてまいります。そして、治療によって何とか体調を万全とし、新体制を1議員として、支えて参りたいと考えております。国民の皆さま、8年近くにわたりまして本当にありがとうございました。

●国会議員としての政治活動は続ける。

5.
[質疑応答]

−−治療を続けながら首相の執務を続けるという選択肢はなかったか。それだ
け健康状態が厳しいということか。辞任を決意されたのは具体的にいつ頃だったのか。コロナ禍での「政権投げ出し」との批判もあると思うが、こうした批判にどのように説明するのか。後継者の決め方だが、自民党総裁選は党員投票も行う正式な形で行われるべきか、両院議員総会とすべきか。意中の後継者は?

「まず治療との関係でございますが、先般、今まで使ってる薬に合わせまして、点滴での処方となるわけでありますが、その新しいお薬を使いまして、2回、今まで使ってるんですが、2回目のときにですね、検査も行ったんですが、効果が出ているということでございました。
そこで、もちろんこのままですね、そうした治療を続けながらということももちろん考えるわけでありますが、そういうこともずっと考えながら今までやってきたところで、この6月以降ですね、あの、ただしかし、これから9月に人事がありですね、そして、国会を開会していくという中においてですね、これが継続的にずっと間違いなく良くなっていくという保証はないという中においてですね、この、ある程度、このタイミングで辞任するしかないという判断をいたしました。
そして、それは、先週と今週、検査を受けまして、今週の診察を受けた際に判断をしたところであります。月曜日にですね。また、ご批判はですね、これは、まさに任期途中でございますから、甘んじて受けなければならないと、こう思っておりますが、冒頭申し上げましたように秋から冬にかけて、またインフルエンザの流行に備えてですね、対策を取りまとめることができますように、直ちに、本日取りまとめることができたっていうことと、直ちに実行に移していくめどが立った、そしてまた、拡大傾向からですね、減少傾向に転じたということもあり、このタイミングで、判断をさせていただきました。
総裁選、次の総裁を決まるまでの任期等々考えるとですね、影響を与えないのはこのタイミングしかないと、そう判断をしたところでございます。もちろんこの任期にある限りですね、コロナ対策、責任をもって全力を挙げていきたいと、幸い今、新しい薬が効いておりますので、しっかりと務めていきたいと、こう思っております。
そして、次の自民党総裁をどのように選出をしていくかということは、これは執行部等にお任せをしておりますので、私が申し上げることではないと思いますし、誰かということも私が申し上げることではないだろうと、こう思っております」

●治療を継続しつつ首相職を行うことは非現実的だった。後継者の具体名は挙げない。

6.
−−首相は結果を出すことに全身全霊を挙げてきたと言ったが、歴代最長となった在任に成し遂げたことの中で政権のレガシー(遺産)だと思われるものは。やり残したこととして、憲法改正、北方領土問題、拉致問題を挙げられたが、後継の首相に託したいことは?
「あの、まずレガシーというお尋ねでございますが、まさにこれは国民の皆さまが、ご判断をいただくのかなと、また、歴史が判断していくのかなと、こう思いますが、7年8カ月前、政権が発足した際には、あの時はまず東北の復興なくして日本の再生なし、東北の復興全力挙げるということを申し上げて、取り組んでまいりました。また、経済においては、働きたい人が働くことができる、働く場をつくる、それを大きな政策課題として掲げですね、20年続いたデフレに「3本の矢」で挑み400万人を超えるですね、雇用を作り出すことができました。成長の果実を生かしまして、保育の拡充、また、幼児教育・保育の無償化と行いました。高等教育の無償化も含めてですね、そして、働き方改革や1億総活躍社会に向けて大きく一歩を踏み出すことができたと思ってます。
また、外交安全保障におきましては集団的自衛権に係る平和安全法制を制定いたしました。助け合うことができる同盟は強固なものとなったと思います。米国の大統領の広島訪問がその中で実現できたのでございますが、こうした日米同盟を基軸として、地球儀を俯瞰する外交を展開する中において、例えばTPP、あるいは日EUのEPA、日米の貿易交渉もそうですが、日本が中心となって自由で公正な経済圏を作り出すことができたと思っております。これも全て、国政選挙のたびに、力強い信任を与えていただいた国民の皆さまのおかげでございまして、心から感謝申し上げたいと思います。
同時に今、あの、ご質問いただいた拉致問題、あるいは日露平和条約の問題、そして憲法改正、どれも大変大きな課題であります。歴代の政権が挑んできた課題であります。残念ながら、それぞれ、この課題が残った。痛恨の極みでありますが、どれも自由民主党として全力で取り組んでいくということを約束している課題、政権としてだけではなくて、党としてもお約束をしている課題でございますから、次の新たな強力な体制でしっかりと取り組んでいただくことを期待しています」

●東北の復興、雇用創設などが成果との認識。

7.
−−次期政権に望むこと具体的に。後継候補といわれている方々、例えば岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官らの評価は?
「辞めていく私はあまり注文するべきではないと思いますが、あの、次の方もですね、まず何と言っても今の現状の、このコロナ対策に全力を尽くされることと思います。ウィズコロナ、そしてポストコロナの時代に向けてですね。われわれも今、ビジョンを示しているわけでございますが、そうしたものを共有していただきながら成果を出していただきたいと。新しい日常を作り出す中においてですね、その中でそれぞれの方々が、未来を見据えて進んでいくことができる日本社会を作っていっていただきたいと思っています。
そして、それぞれ個別的な、個別具体的な名前はあえて挙げませんが、名前の出ておられる方々ですね、それぞれ有望な方々でありますし、私も一緒に内閣において、あるいは党において一緒に働いたことのある方ばかりでございますので、それぞれこの政策を、この、競い合う中においてですね。おそらく素晴らしい方が決まっていくんだろうと期待しています」

●後継者と目されている政治家の評価は避ける。

8.
−−外交問題について。北朝鮮による拉致問題、日露平和条約交渉、結果を出せなかったことは痛恨の極みだと言ったが、第1次内閣と合わせて8年8カ月の間に解決できなかったことについて反省すべき点はなかったか。次の政権に向けて、期待することは。今日の会見では、プロンプターを使用していないが、どういう気持ちで会見に臨んだのか?
「いや、いいです、いいです。あのプロンプターはですね、これは世界でいろんな指導者が使っているものでありまして、私も使って参りましたが、今日は、このギリギリまでですね、これ、原稿が決まってなかったということもあり、私も推敲しておりましたのでこうした形になりました。そして拉致問題について、別のやり方があったのではないかというご質問ですね。この問題は私、ずっと取り組んできました。そう簡単な問題ではもちろんない
から、今でも残っているわけであります。ありとあらゆる可能性、さまざまなアプローチ、私も全力を尽くしてきたつもりであります。その中で例えば、かつては日本しかこれは主張していませんでした。でも国際的にこれは認識されるようになりました。私も努力をしてきた。
アメリカの大統領が北朝鮮の首脳と金正恩(キム・ジョンウン=朝鮮労働党)委員長とですね、一対一の場面でもこの問題について言及し、また習近平(中国国家)主席も言及し、そして文在寅(韓国)大統領も言及する。これは今までになかったことであります。
ただもちろん、それによって結果は出ていない。でも私は最善の努力をしてきた。ただ、ただですね、申し上げましても、ご家族の皆さまにとっては結果は出ていない中において、お一人お一人とお亡くなりになっていく。私にとっても本当に痛恨の極みであります。常に私は何かほかに方法があるのではないかと思いながら、あらゆる、これは何をやっているかは残念ながら、特にこういう外交においてはそうなんですが、ご説明できませんが、いわば考え得るあらゆる手段をとってきているということは申し上げたいと思います」

●外交について、結果は出なかったが、最善の努力をした。

9.
−−通算でも連続でも歴代最長政権となったが、この間、官僚の忖度や公文書の廃棄・改竄など負の側面も問われた。国民に疑問を待たれたさまざまな問題に対し、歴史が判断する材料としての公文書管理、十分な説明責任を果たせたと考えるか?
「公文書管理については安倍政権においてさらなるルールにおいて徹底していくことにしています。また国会においては相当、長時間にわたって今、挙げられた問題について私も答弁させていただいているところでございます。十分かどうかについては国民の皆さまがご判断されるんだろうなと思っております」

●公文書管理のルールは徹底していく。

10.
−−首相は自民党総裁と同時に党内最大派閥の清和政策研究会(細田派)の実
質的リーダーだ。今後の党総裁選では首相の影響力が少なからず働くと思うが、後任の総裁選びはどういった姿勢で臨むか。誰かを支援して一票を投じるか。退陣する首相として静観する考えか。取り組んできた憲法改正は支援の条件となるか?


●憲法改正は自民党の公約として次期政権に継承されていく。

11.
−−先ほど、今後は一議員として政治に関わると言っていたが例えば元首相としてできること。ロシア外交や対中外交というものに取り組む意欲はあるか。次の衆議院選挙への対応は?
「今後についてでございますが、なんとかですね、体調を回復する中において、一議員として活動を続けていきたい。その中でさまざまな政策課題の実現に微力を尽くしていきたいと思いますし、次なる政権にですね、対しても影響力を、当然のことなんですが、一議員として協力していきたい、支えていきたいと思います。どのようなことをやるのかについてはですね、これはいわば、これからまだ先のことでありますが、今までの経験も生かしながらですね、議員としてできることがあれば、取り組んでいきたいと思います。
次の衆院選についてはですね、これはまさに有権者の皆さまの判断することでもございますが、私としては、基本的には一議員として仕事をしていきたいと思っております」

●今後も国会議員として、さまざまな政治活動に取り組んでいく。

12.
−−首相が考える総理・総裁に必要な資質は?
「これは今までもよく申し上げてきたことでございますが、いわば、しっかりとしたビジョンを持ってですね、責任感と情熱を持った方だろうと思いますが、今まで名前が出ている方はそれぞれそうした資質を持っておられるんだろうなと。私が持っているかどうかというのはこれまた別の問題でありますが、それとやはり、首相というのは一人でできる仕事ではなくて、私がここまで来られたのもですね、至らない私を支えていただいた多くのスタッフの皆さんや、多くの議員の皆さんや、そういう方々がいて、なんとかここまで来ることができました。ですから、そういう、やはりチーム力ということも大変重要ではないかと思います」

●次期首相にもチームワークが重要。

13.
−−新型コロナの政府対応で成果を挙げたと思われる点、反省点は?
「正に今回のコロナウイルス感染症との闘いは、まずは武漢で発生し、武漢の邦人の救出オペレーションからスタートしました。その後は、ダイヤモンド・プリンセス号の問題もあった。それぞれ初めての経験でありました。ですから、正に今までの知見がない中において、その時々の知見をいかしながら、我々としては最善を尽くしてきたつもりでございます。
マスクについても、様々な御批判も頂きましたが、このマスクの配布を始めることによって、需要と供給の関係から、相当供給も出てきたということもあります。いろいろなネット等での価格も大きく変わってきたということもあったと思います。ただ、国民の皆様から厳しい御批判もありました。そうしたものは、私も受け止めなければならないと、こう思っております。
各国との比較の中においてですね。何とか、亡くなられた方々がおられますが、死者の数あるいは重症者の数等々においても、諸外国と比べて何とか、低く抑えることもできたと考えております。また、経済への影響、これは大きな影響がございますが、種々の経済対策によって、他の先進国等々と比べれば何とか抑えることができていると思いますが、まだまだそれは不十分な点もありますし、反省するべき点は、これはもちろん多々あるということは申し上げなければいけないと思います」

●布マスク配布に関する批判は 受け止めなくてはならない。各国と比較して
死者を少なく抑えることができた。

14.
−−辞任という決断に至るまでにしっかり休んでおけばよかったとか、もうちょっとメリハリをつけておけばよかったとかいう後悔はあるか?
「自分自身の健康管理、これは、総理大臣としての責任だろうと思います。それが自分自身、十分にできなかったという反省はある。同時に見えない敵と、多くの悪戦苦闘する中において、全力も尽くさないといけない気持ちの中で仕事をしてきたつもりだ。ただやはり、一国のリーダーとしてはしっかりとそうした健康管理はしなければならないなということは痛感しているところだ」「自分自身の健康管理もこれは総理大臣としての責任だろうと思います。それが私自身、十分にできなかったという反省はあります。同時に、正に見えない敵と悪戦苦闘する中において、全力も尽くさなければいけないという気持ちの中で仕事をしてきたつもりでございます。ただ、やはり一国のリーダーとしては、しっかりとそうした健康管理はしなければならないなということは痛感をしているところであります」

●健康管理について反省。

15.
−−憲法改正の機運が高まらなかった理由、機が熟さなかった理由は。今後、実現は可能だと思うか?
「憲法改正については、まずは党において4項目に絞り込んだ、何とか改正案のイメージをしっかりと党で決定することができたと、こう思っております。ただ、残念ながらまだ国民的な世論が十分に盛り上がらなかったのは事実であり、それなしには進めることができないのだろうということを改めて痛感をしているところでございます。しかし、それぞれの国会議員の皆さんも国会でお互いに案をぶつけ合って、議論をしなければどうしても国民的な議論は広がらないわけでありまして、国会議員としてその責を果たすように、私も一議員としてこれから頑張っていきたいと思います」

●憲法改正については、国民的世論が盛り上がらなかった。

16.
−−首相は地方創生、東京一極集中を打破するという部分を強調し、地方の立場はかなりの期待を持って見ていた。中央省庁移転では京都に文化庁が移転がされるが、大きなパラダイムシフトには至っていない。地方創生に関しての総理自身の評価、採点は?
「確かにですね、このパラダイムシフトが起こるというところまでは来ていないわけであります。景気回復にはどうしても東京に人工が集中するという傾向にあったわけでございますが、今回、安倍政権の期間における景気回復期においてもですね、もちろん増えてはいる、もちろん東京への集中は歯止めがかかってはいないんですが、そのスピードはですね、相当鈍らせることはできたのかなとは思ってはいます。それと東京から地方に移住したいという方の相談を受けることにおいてはですね、前まではですね、60代以上の方が中心だったんですね。一線を退いてから年金生活に入るときに元のふるさとに戻ってみようという方が多かったのですが、いまは現役世代、50代以下の方が相当多くなってきました。
つまり、地方にチャンスがあるというふうに思う方が出てきたのかなと思います。そして、パラダイムシフトが起こるとすれば今まさに、この3つの密を避けるという中においてですね、テレワークが、この進むということと同時に地方の魅力が今、見直されているんだろうと思いますし、また、足元で20代の若者の地方への転職希望がですね、大幅に増加をしているという調査もあります。
今後、日本列島の姿、国土のあり方をですね。今回の感染症が根本的に変えていく可能性もあるんだろうと、こう思います。で、それはまさにポストコロナのあり方、社会像を見据えられて、既に未来投資会議で議論をスタートしていますが、こうした大きな変化を生かしていきたいと、こう思っています」

●東京への人口流入の速度を鈍化させることはできた。

17.
−−多くの被爆者と会い、戦争で家族を亡くされた方々の声に耳を傾けられてきたが、どのように首相の胸に響いたか。任期中には安全保障関連法など世論を二分するところもあったが、どのように平和と平和問題と向き合ってきたか。次の政権に、平和、反戦、核兵器廃絶を託す考えは?
「まず、核兵器の廃絶、これは私の信念であり、日本の揺るぎない方針でもあります。当然これは、この方針は、次の政権でも引き継がれていくものだろうとこう思います。平和問題であります。残念ながら世界でまださまざまな地域で戦闘が起こり、戦闘に巻き込まれる方、子供たちもいます。それをいかになくしていくかという問題でありますが、まさに世界が協力をしながら、平和を作り出していくという努力をしなければいけませんし、平和を維持していくという努力もしなければいけません。と同時に、残念ながらわが国のまさに近くにですね、核開発を進め、日本を射程に収めるミサイルの開発を進めている、北朝鮮もそうです。そうした国からしっかりと日本を守り抜いていかなければなりません。
そのためにこそ、まさに日米同盟はあるわけでありまして、同盟の絆を強くすることによってですね、日本を攻撃しようという気持ちに相手をさせない、そういうことにつながっていく、つまり、抑止力になっていくわけでありまして、いわば抑止力というのは、これは戦争するためのものではなくて、戦争を防ぐためのでもあります。
そうした努力もしながらまた、核の廃絶についてもですね、核兵器国と非核兵器国の橋渡し役を日本が行いながら、唯一の戦争被爆国としてですね、核の廃絶に向けた努力を重ねていかなければならないと、こう思っています」

●核廃絶を推進する。

18.
−−辞任を最終的に具体的に判断したのはいつか。判断に当たって誰かに相談したか
「あの、月曜日にそういう判断をしました。その中で、この秋から冬に向けてもですね、コロナ対策を取りまとめをしなければならない。この取りまとめをしっかりとする。そしてその実行のめどを立てる、それが今日の日となったということであります。この間、相談したのか、ということでありますが、これは私自身、自分1人で判断をしたということであります」

●8月26日に辞任を決断した。

19.
――コロナ対応では、日本がいかにIT後進国であるかということが露呈した。ITで日本は世界の後塵を拝しているが、原因はどこにあるか。後任期待するところは。どのように申し送りするのか?
「今、ご指摘になったようにですね、この日本の、この今の状況、IT分野におけるですね、状況、問題点、課題というのは明らかになったわけであります。反省点でございます。さまざまな課題があるんですが、まず、官の側に立てばですね、役所ごとにですね、システムが違うという問題もございますし、自治体ごとに違っているという、そういう課題もあります。今回はそういう課題が明らかになってまいりましたのでですね、高市(早苗)総務相を中心に一気に進めていくということにしているところでございます。もう一つは個人情報に対する保護、この対応がですね、自治体ごとに違ったり
とかするという、自治体ごとにですね、違うという課題もあります。しかし今回、そういう課題をですね、乗り越えていく必要性というのは相当こ
れ、共有できたのではないかと思いますので、ここで私は辞めていくということになるわけでございますが、残りの期間、また次の、そして、リーダーとまた、当然、取り組んでいかれると思いますが、私も残余の期間ですね、しっかりと頑張っていきたいと思っております」

●IT化を進めるためには、省庁間の縦割りの壁、個人情報保護法による制約を
克服する必要がある。

20.
−−後任の自民党総裁が決まるまでの残余の時間はどれぐらいと考えているか、あるいは希望しているか?
「次の総裁が決まるまでどれぐらいかかるかということなんですが、執行部の方でですね、案を今、具体的に考えておられるというふうに先ほど情報として入ったんですが、あの、これは私の体調の方はですね、基本的にはその間は絶対大丈夫だと、こう思っております。それほど長期ではないけれども、しっかりと、この、選んでいただける、あの、政策論争ができる時間は取られるんだろうと今、私が具体的なことは申し上げることは控えた方がよいと思っています」

●後任総裁の決定時期は自民党執行部に一任する。

21.
−−安倍政権は非常に徹底したメディア対策というものがなされた政権だと思う。それは首相の指示によるものだったのか、知らずにやっていたものか。質疑の場面なのに、なぜか質問と答えが目の前のメモに書いてあるという状況を見て違和感を覚えなかったか。メディアと政治、民主主義において、こうした関係をどのように考えているか?
「あの、まず安倍政権が、例えば幹事社から質問を受けるというのが安倍政権の特徴ではなくて、ずっと前の政権もおそらく同じだったと思います。それは幹事社からの質問については最初に受けるということは、これは今まで
の各政権がみんなそうだったんだろうと。正確性を、総理の発言ですから、これは正確な答弁をしなければなりませんから、どういう質問があるかは想定で答弁をつくってあるということであって、今日だって私はこうしてお答えしてますが、それぞれ前もっていただいた質問ではないということでありますし、メディアにそれぞれどう出演するかというのはそれぞれの政権が判断するのだろうと思います。いいかどうかもその政権の判断だと思います」

●安倍政権の会見は、幹事者の質問を受けるという歴代政権の習慣を踏襲した。

22.
−−多くの成果を残した一方、森友学園問題や加計学園問題、桜を見る会の問題など国民から厳しい批判にさらされたこともあったと思います。こうしたことに共通するのは政権の私物化という批判ではないかと思うが、どう考えるか?
「政権の私物化はですね、あってはならない。ことでありますし、私は政権を私物化した、というつもりは全くありませんし、私物化もしておりません。まさに、国家国民のために全力を尽くしてきたつもりであります。その中でさまざまなご批判もいただきました。また、ご説明もさせていただきました。その説明ぶり等についてはですね、反省すべき点もあるかもしれないし、そういう誤解を受けたのであればそうなることについても反省しなければいけないと思いますが、私物化させたことはないということは申し上げたいと思います」

●政権を私物化したことはない。

23.
−−辞任による東京五輪パラリンピックの開催判断への影響や、来夏に予定通り大会が開催された場合、首相として五輪を迎えることができないことへの率直な思いは?
「世界のですね、アスリートが万全のコンディションでですね、プレーを行い、そして、観客の皆さんにも、安全で安心な大会をやっていきたいというふうに思います。IOC(国際オリンピック委員会)や大会組織委員会、また東京都もですね、緊密に連携をしながら、先般策定をされましたロードマップもですね、沿ってですね、しっかりと準備を進め、開催国としての責任を果たしていかなければならないと、こう思っておりますし、当然私の次のリーダーもですね、当然その考え方のもとに目指していくんだろうと思います。もちろんそのためにですね、さまざまに、さまざまにやらなければいけないことがあるんだろうと思います」

●来年のオリンピック実現に向け準備する。