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ダーリンハニー

ダーリンハニーの長嶋さんもツッコミが上手いと思います。少しベタ付いたような耳に残るんだけどよく通る声質で小刻み良いテンポと節回しでコメントを挟んでいきます。その加減が絶妙で受け身じゃないツッコミとしてはかなり腕があると思います。


いわゆるツッコミ芸人の今の主流は共演者や視聴者に形式的にいじられる中で凡庸性のある返しやリアクションをしていくタイプと、大喜利性の高いワードを対象に対する例えツッコミや状況を俯瞰で見る視点の切り取りをテクニカルに行うタイプとに分かれると思います。前者がハリセンボンの春菜さんやハライチの澤部さん。後者が南海キャンディーズの山里さんやニューヨークの屋敷さんです。長嶋さんのツッコミはそのどちらのタイプとも言えない半々くらいのバランスで形成されていると感じます。いじらせるような仕向け方もしていますがそれが受け手の懐に入るというより自己フィールドに誘い込むニュアンスです。

オリエンタルラジオの中田さんやキャプテン渡辺さんのようなコメントの連打によってグルーヴを生むボケ方をする人がツッコミの役割をやっているという具合ではないでしょうか。


またその相方である吉川さんのボケ方喋り方も確固たる自己進行ペースがあるような気質です。緩やかながら確実にしっかりと拍を打つリズムは裾野が開かれていて誰でも入っていけるゆとりが感じられます。吉川さんのやっている鉄道番組の如何なるものも邪魔をしない聴き心地の良さはいつまでもずっと観てしまえるような時間の流れに対する大らかな構えがそこにはあります。

吉川さんはその地盤の上で声色を変えたり早めたりする事でキャラに入りコントの中で分かりやすくボケていきます。

端的に言えばダーリンハニーはおぎやはぎと逆のフォーメーションをしています。長嶋さんを矢作さん、吉川さんを小木さんに置き換えてボケツッコミで観ると捉えやすくなるのかもしれません。おぎやはぎは小木さんのペースに矢作さんが半歩合わせる事であの独特な空気を充満させますが、ダーリンハニーは長嶋さんのグルーヴに吉川さんが全体を誘導させるようにして空気を形成していると感じます。ツッコミの方に主導権がある所が相違点です。これによりダーリンハニーはアンニュイさよりも締まりのあるスタイリッシュさの方が雰囲気としては醸し出されていると思います。

またその各々の気質が、タレントとしての主要パーツである趣味という点にも表れていると感じます。長嶋さんの音楽というピンポイントでの支持層がそのコミニティで強固になるジャンルと、吉川さんの鉄道というパブリックな対象物にマニアックな視点を持ち込むジャンルを、お互い両極端のまま人工的に結びつけていく様にどこか都会的で品のあるイノセントを汲み取れ爽やかな気持ちにさせてくれる。それがダーリンハニーの魅力ではないでしょうか。


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