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河口洋一郎の肉筆絵画は何が凄いのか

河口洋一郎という、メディアアーティストの先駆者がいる。

世界で初めてメディアアーティストとして評価された日本人であり、今では当たり前となったプロジェクションマッピングやコンピュータグラフィックスとアルゴリズムを用いたアート表現を80年代に切り開いていた傑物だ。

90年代まで、河口洋一郎の作品とは、主に実際に動作するロボットやコンピュータグラフィックスなど、機械を直接的に用いた表現物を主としていた。

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当時、誰も見見たことのないイメージの数々に人々は舌を巻き、「アート&サイエンス」すなわち、芸術表現に対して科学的知識を応用するという手法が前衛的と高い評価を受けた。

その結果、河口洋一郎は芸術分野で先駆者となり、同時に科学者として、学際的な立場に立つことになった。東京大学情報学環はまさしく彼のような芸術と計算機科学といった学際的な領域を扱うために設立され、民主国家からの予算をもらって作品制作をするという、史上極めてまれな科学芸術家としてキャリアの頂点を極めた。

アカデミズムだけでなく、ハリウッドのSFX技師や世界中のゲーム業界人からも注目を集めるコンピュータグラフィックスのトップカンファレンスSIGGRAPHでも異色の存在感を放ち、特にリモート開催となった今年は、SIGGRAPHの一週間の日程のなかで最も多くの参加者を集めたのが河口の主催する「SAKE Party」だったことがむしろ「学会としていかがなものか」と問題となったほどだと聞く。

河口の作品は常に計算に裏打ちされている。そのため、立体造形も数多く手掛けているが、極めて複雑な造形であるにも関わらず、一切の破綻がない。

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特に、バルーンを使った全長8メートルにも達する巨大な作品は、むしろこれほど複雑な造形をバルーンで作ることができるのかと見る者を驚愕させる。

これらを実現しているのは、アルゴリズムだ。

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