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え、こんなに違うの!?プレイヤーだけで!?

アキュフェーズとラステームのバイアンプシステムは音質は最高なのだが、いかんせん、なんでもできるプリメインアンプだったPM7000Nに比べると、機能が少ない。

PM7000Nは単独でWiFIに接続して勝手にAmazon Musicを再生したり、Bluetooth接続したりできたのだが、1980年代のアンプであるアキュフェーズの想定している媒体はCDとカセットテープとFMラジオである。

もちろんCDを聞けばいいのだが、普段仕事をするときに気軽なBGMを流したいとき、CDを毎回入れ替えるのも億劫だ。CDで持ってないやつも聞きたい。

そこでまず、BluetoothのDAC、いわゆるBluetoothレシーバーを探すことにした。
しかしここで悩むのが、どのくらいのクラスのものを買うかということだ。
Bluetoothを搭載したDACは、それこそ下は5000円から、上は百万円オーバーまで、最も値段の幅が広いと言ってもいい。

そしてそんなものでそこまで差が出るとも思えないのが厄介なところだ。
かといって、安物を買ってガッカリ、みたいなのも困る。

色々見回ってみて、Audioengine B1という製品にたどり着いた。価格は3万円弱。オーディオ用としてはそんなに高い方ではないが、これより高いものは10万円オーバーになる。目的はBluetoothを再生することだけなので、とりあえずこのくらいのクラスの製品にすることにした。

これ、素晴らしいのは、ものすごくシンプルなこと。
ボタンはひとつだけ。起動すると自動的にBluetoothペアリング状態になっていてすぐに接続できる。

Audioengine B1の裏面

裏側もシンプルで、電源端子とデジタルオーディオ出力、RCAピンジャックしかない。もうなにをどう転んでも間違えようのない形。

しかもこんなにシンプルなのにどっしりと重くて「ああ、ピュア・オーディオの機材だな」という気がする。

大きさの比較のため樋口真嗣特撮野帳と並べてみる。コンパクトで邪魔にならない。これも大事なポイントだ。

いざ再生してみると抜群にいい。あれ、ひょっとするとPM7000Nよりもプレイヤーとしての性能は高いんじゃないの?とすら思うがPM7000Nはプリアウトがないので比較できないのが残念。

ただ、やはりあのビデオデッキ大のボディに各種デジタル装置とアナログプリアンプとパワーアンプを詰め込むと、どうしても余裕がなくなる。余裕がないぶんというのは、音の貧弱さにつながってしまう。

その点、このAudioengine B1は、Bluetoothで繋ぎ、ただ出力するだけという非常にシンプルな仕組みでありながら、余裕がそこかしこにある。Bluetooth受信ユニットだけ比較したらPM7000Nより明らかに大きいはずだ。

Audioengine B1に変えると、それまであまり気にならなかった、Amazon MusicのUltra HDとそうでもない曲のあまりの落差に愕然とした。

Amazon Music UnlimitedのUltra HDは、ロスレスで3.7Mbpsの超高音質なのに対し、そうでない曲はCD音質並みになってしまう。PM7000Nではその二つの差までは感じられなかったのだが、アンプ環境とスピーカーがアップグレードされたため、この差がハッキリとわかるようになってしまった。

そんなに違うのである。
だがもっと驚いたのは、映画ファンが「これを試せ」と言ってきたブルーレイプレイヤーである。

パナソニックのDP-UB9000は、ブルーレイディスクの「再生専用」プレイヤーだ。いまどき録画機能がないのである。そのくせ値段は20万円近くする。

正直、全く意味がわからない。そもそもUHDブルーレイのプレイヤーなんか履いて捨てるほど持っている。まあ値段は2、3万円の安物だけど。


しかしプレイヤーがよくなったからといって中身が変わるわけでもなし、そんなに高いプレイヤーってなんなんだよ、という気持ちのほうが先にあった。

しばらくの間は、ジョン・ウィリアムスのブルーレイとかを再生して楽しんでいた。

しかし、そもそもジョン・ウィリアムスの曲はクラシックで、まあなんなら4KでもUHDでもないのであまりプレイヤーの恩恵があるように感じられず、それよりはむしろアキュフェーズと705S2のチョンマゲの迫力に圧倒されるだけだった。

「いったい、なぜこのプレイヤーがいいって言うんだ」

そんな疑問がつきまとう。
一つ目の異変は、朝、TENETの4KUHDを再生しているときだった。

僕は早起きして映画をみることが多いので、だいたい見てる時間は朝日が入ってきて画面がよく見えなくなる。まあどんなにいい画面があろうが台無しなのだが、そう言う問題ではなかった。

なんと、DP-UB9000は、「明るい部屋用」という設定が三種類もあり、内部で自動的にトーンマップをリマップしてくれて、「より見やすい」画像に変えてくれるのである。

中身が変わらなくてもプレイヤーが変わると、出てくる信号が変わるのだ。
すると、これまで見たこともなかったくらい、ハッキリとした映像に変化したのである。

「おお、これはすごい」

と思ったものの、平日の朝から長編映画を見ると言うおよそまともな人間の参考になるとは思えないフィーチャーだったのでこの時はあんまり、これを記事にしようという気持ちにはならなかった。

ただ、すごいなあ、くらいである。
ちなみに、このプレイヤーはDolby Vision対応のプレイヤーで、テレビが4KHDRで、再生するディスクがDolby Vision対応だと自動的にテレビと通信して全てのプレイヤーによる制御を切ってテレビがDolby Visionに切り替わる。

これはこれで、映像の迫力があるのだが、むしろ僕はトーンマップを理マップする機能のほうに関心してしまったわけだ。

しかし、技研バーでの営業を終え、さて晩酌しながらYouTubeでも見るかと思った僕の目に飛び込んできたのは、不自然なまでに違和感のある、DP-UB9000の「Netflix」ボタンだった。

「待て待て。Blueray再生専用じゃないんかい」

あまりにもピュアオーディオの世界に慣れてしまった吾輩は、「専用」と聞くとそれ以外のことは一切できないのかと勘違いしてしまった。

ところが、DP-UB9000はNetflixに繋がるらしい。ということは、他のサービスにも繋がるんだろう。

果たして、すこし派手目なメニュー画面が出てきて、YouTubeを選択。
まあYouTubeを再生したってなにで再生しても一緒だろコレとあまり期待もせずに再生ボタンを押してハイボールを口にした。

瞬間、出てきた音にソファから転げ落ちる。

「え、今の何?」

そして画面を見ると、映画みたいなアリアナ・グランデが写っていた。

「嘘だろ」

思わずしょにーのリモコンを探し、テレビ内蔵のプレイヤーに切り替え、同じ動画を再生してみる。

明らかに映像は色褪せているし、輪郭も汚い。それよりなにより、音が痩せている。

トーンマッピングの妙技か、それともDP-UB9000に搭載されたテクニクスのDNAか、とにかくYouTubeですら、全く、別物のコンテンツになるのである。

これは驚くなと言う方が無理だ。
最高の映画体験は、映画館にいけば体験できると思っていた。
IMAXレーザーGTで、ドルビーアトモスで見ればそれでいいんだと思っていた。

もちろんそれは最高の体験の一つであることは間違いない。
しかし、残念ながら、映画館の音響設備はあくまでも大人数を相手にしたもので、どこの席でも均等に聞こえるように意図的に配置されたものでしかない。

一人の人間が独占できる設備としては、ホームシアターくらいのサイズで作り込まれたら、十把一絡じっぱひとからげの映画館の設備は目に見えて霞む。そりゃそうだ。

DP-UB9000のレビューは何本か読んだが、こんなことは誰も教えてくれなかった。もしかして、大画面マニアの間では常識なのか?西川善司さんとはいつもこんな環境でYouTubeを見てるのか?だとしたら、ドリキンすらも他の人とまったく別種のものに見えてこないか。

とにかく次元の違うプレイヤーというものが存在することにひどく驚いた。
もうちょっと真面目にこのプレイヤーと向き合うことにしよう。