中編台本#003:平凡で退屈な勇者譚

Chapter01

A:着いた~‼

B:ぜえ、ぜえ

A:ここが王都…村と違って人多いねえ~

B:ぜえ、ぜえ、ぜえ

A:えーっと、冒険者協会は…

A:あった‼ほら早く行くよ‼

B:ちょっと…待って…

カラコロカラン

A:クエストボードは、っと…

A:薬草収集、荷物運び、ゴブリン群れの討伐依頼…

A:ねーねー、B、報酬高いゴブリンのやつがいいと思うんだけど…

B:…

B:待てって…言ったよね…?

A:…B?

B:ゴブリン群れの討伐…?

B:ここまで来るのも…俺が全部倒して…

A:それは…

B:囲まれたりしたらどうするのさ!

B:いくら何でも無謀すぎる!

A:で、でも、先立つものは必要じゃん?宿も必要だし…

B:Aが財布落とさなかったら…3日分の宿賃はあったんだけど…?

B:A…

A:ひっ‼

A:やばい、怒りで我を忘れてる…

A:どうしよどうしよ

B:A…

A:ひ~‼

C:君たち

A&B:えっ?

Chapter02

A:でっか…

B:こらA‼

B:うるさくして失礼いたしました、僕はB

B:こっちのアホなのはAです

A:アホってなんだよ‼

C:…

B:あの…

C:…

B:あの‼

C:はっ、すまない

C:私はC、人を探しているのだが…

C:勘違いだったようだ、失礼

B:あ、あの‼

C:何かね?

B:あの…その…

C:?

C:用がないなら行くが?

B:その…僕たちのパーティに入ってもらえませんか⁉

A&C:⁉

A:B⁉何を言って…

B:僕たちも人を探していて…早くその人を見つけなきゃいけないんです…

B:でも…今日村から出てきて…右も左も分からなくて…お金もなくて…

B:だからお願いです‼

C:…その…急ぎの身でな…

B:ほら、Aからも言って‼

B:このままだと僕ら宿なしご飯なしで、死んじゃうかもなんだよ‼

A:お、お願いします…

C:…

C:本当に…すまない…

A:…

A:は~あ、ケチなおっさんだぜ

B&C:⁉

B:A⁉何てこと言って

C:…

B:あああ、ごめんなさい…ほら、Aも謝って‼

C:ははは‼

C:私にそんな言葉をかけたのは2人目だ

C:面白い、入ってやろうじゃないか

B:本当ですか⁉

C:ただし、条件がある

C:基本的に戦うのは君たちだ

B:え?

C:安心しろ、口出しはしてやるし、死にそうになったら助けてもやる

A:それって…いる意味…

B:A‼

B:それでいいので…お願いします…

Chapter03

C:それで早速、ゴブリンを狩りに来たわけだが…

C:なかなかやるじゃないか

B:そ、そうですか…

A:これくらいどうってことないよ‼

C:…

C:ほとんど、というか全部Bが倒していたように見えたが…

C:ふむ、そろそろ帰るとするか、何やら騒がしくなってきているし…

A:あー‼あっちになんか落ちてる!!

B:あ、ちょっと、A!!

B:勝手に動いちゃダメだって‼

タッタッタ…

C:前言撤回…かな…

A:あ、きれいな宝石…!!

A:これ売ったら結構な額なんじゃない?

B:あ、本当だ…綺麗…

C:触るな!!

え?

ブーン…

A&B:ギャー!!!!!!

C:宝石蜂がこんなところにまで…

C:まあ、それはいいとして…

C:おーい、大丈夫か?

A:見てわかるでしょ‼早く助けてよ‼

C:断る

A:なんで⁉

C:言っただろう、基本的に戦うのは君たちだと

B:そうですけど‼

B:こいつら早いし固いしどうしようも…

C:腕はあるが…戦闘経験がない、か…

C:よく見てみろ‼そいつは確かに動きは速いが、規則的な行動しかしない

B:確かに…言われてみれば…

C:それと背中に赤い宝石のようなものがあるはずだ

B:なるほど…‼つまり

ジャキン‼

B:そこが弱点、という訳ですね…

C:ご名答

C:その太刀筋…まさかな

C:なかなか理解が速いじゃないか

B:えへへ

C:それに比べて…

A:のわ~!!!!!!

C:彼は魔術師のようだが…得意魔法は…?

B:あ、Aは…魔術師ではあるんですが…魔法があまり…

C:え?じゃあ、あの杖は…?

A:も~!!!うるさいうるさい!!!

ヴォン!!

バキバキバキ‼

C:な…

B:主に物理攻撃の手段になってるんです…

A:倒せたよ~!!

C:…

C:あはははは‼

C:本当に面白いコンビだな君たちは‼

A:そうなの?

B:主にAが、だよ…

Chapter04

B:これが報酬…

A:やったー!!

B:これで…宿に泊まれる…

C:よかったな

C:じゃあ、俺はこれで

B:あ、行っちゃった…

B:それじゃ、僕たちも宿に行こうか

ーーーーー

C:こんなに早く会うとはな…

B:そうですね…まさか同じ宿なんて…

A:Cさん、Cさん‼

A:折角だし一緒に晩御飯食べようよ

C:え、あ、ああ…

A:やりい‼取ってるくね‼

B:A‼またあいつは…

C:いいさ、それより今日のダンジョンのことだが…

B:その…すいません…

B:勝手に行動してしまって…

C:あ、いや、そのことじゃないさ

C:いや、そのことなんだか…

B:?

C:宝石蜂があんなところにいたのが気になってな

B:確かに、あいつらの生息域はもっと北の方…でしたっけ?

C:よく勉強しているじゃないか

C:(やはり、北の洞窟が何か…だがあそこは何度調査しても…)

B:Cさん?

C:いや、何でもない

A:Cさん、B‼

A:色々取ってきたよ~

B:それじゃ…

A&B&C:カンパーイ‼

ゴクゴク

バタン‼

B:Cさん⁉

B:A‼飲み物何取ってきたの⁉

A:ただのビールだけど…?

B:あ…そう…?

ガバッ

C:Cさん、大丈夫ですか…?

C:A、B

B:は、はい

A:はい?

C:お前ら…本当に可愛いなあ

A&B:え?

C:本当にあいつにそっくり…

バタン

A:あ、また倒れた

B:まさかCさんがこんなに下戸だったなんて…

C:うーん…

C:D…お前は一体どこに…


A&B:⁉

Chapter05

B:Cさんの…昨日のあれ…

A:うん、絶対にDって言ってたよね

B:もしかして…関係者…?

A:もう直接聞いてみるしかないでしょ

B:え、でも…

A:村出る時も言ったでしょ‼時間ないかもって‼

B:…

カランコロン

C:いてて…まさか酒だったとは…

B:あ、Cさ、

A:Dとはどういう関係なんですか?

C:な…

B:ちょっとA‼いくら何でも急すぎる…

A:Bは黙ってて

A:実は僕たち、Dと同じ村の出身なんです…

A:Cさんが探しているのも、Dなんですよね?

A:Cさん、もし何か知っていることがあったら教えてください

C:…

C:あの太刀筋…なるほど、そういうことだったのか…

C:確かに、私はDの関係者だ、というより一緒にパーティを組んでいた

B:え⁉それなら何か…

C:だが君たちに伝えられることはない

B:なんでですか⁉

C:君たちには実力がないからだ

B:…

C:確かに、君たちの戦闘センスは他者とは比べ物にならないほど高い

C:ただそれはセンスの話…実際の戦闘には知識や経験も必要だ

C:それは昨日の戦闘でも分かっただろう?

B:…

C:あのDが行方不明になったんだ、君たちにどうにかできるとは思えない

A:…

A:もういいよ‼Cさんのバカ‼

バタン

B:A‼

C:…

C:B、Aを連れて、村に帰りなさい

C:君たちには…君たちの未来があるじゃないか

B:…

B:Cさん…

B:僕たち、村の大人にも同じこと言われて…それでもここに来たんです…

B:だから…Cさんには…

B:そんなこと…言ってほしくなかったです…

C:…

B:明日早くに王都を出ようと思います

B:ありがとうございました

バタン

Chapter06

翌朝

C:…

C:こんなに寝覚めが悪いのも久しぶりだな…

C:ん?机の上に書置き…?

C:…⁉

C:くそっ、あいつら…

ダッ

ーーーーーーーーーー

A:ここが北の洞窟…

B:A…Cさんには村に帰るって言ったのに…

A:あんな奴のこと、ほっとけよ

A:書置きはしておいたし

A:それに、怪しいって言ってたんだろ?

B:確かにそうだけど…

A:ちょっと見てみるだけだし、ヘーキヘーキ

A:あ、宝箱発見‼

B:だから人の話を…

C:A‼B‼

A&B:Cさん⁉

C:2人とも無事でよかった…

C:村に帰るんじゃなかったのか⁉というより、なんでこんなところに…

B:それは…あなたが昨日こぼしていたからですよ…

C:聞かれていたか…

C:とにかく、今すぐ出よう、このダンジョンは危険なんだ

B:なんでですか?ここは比較的簡単なダンジョン、と聞いていますが

C:それは…

B:もしかして…

B:ここで、Dはいなくなったんですか?

C:⁉

C:なぜそれを

B:引っ掛かりましたね

C:くっ

B:そうやって…

B:そうやって、何も話さないで説得できるなんて思わないでください

B:あなたたち大人が‼何もしてくれないから‼僕たちは今ここにいるんです‼

C:それは…

B:村の大人も…Dはいつか帰ってくる…そう言うばかりで…

B:なんの調査もしていない

C:確かに君らから見たら何もしていないように見えるかも知れない

C:確かに村の英雄を心配する気持ちは分かる

B:僕たちにとっては…それだけじゃ…

C:B…?

B:やっとの思いで出会ったあなたも…結局村の大人と同じ…何もしてくれない…

B:そしたら…

B:誰がDを助けるっていうんですか!!!

カチャ

A&B&C:え?

ヒュン

【トラップ起動、テレポートto魔王城】

Chapter07

A&B:いてて…

C:A‼B!!無事か⁉

B:は、はい…

A:なんとか…

C:B、さっきの魔法は…お前に反応したようだが…?

B:そ、そうなんですが…僕も何がなんだか…

D:あれはただの転移トラップだよ

D:まあ、勇者の力にだけ反応するようになっているけどね

C:お前は…

D:そして、この2人は…

D:勇者の力を引き継ぐ、俺の甥だよ

C:D‼って甥⁉

A&B:おじさん!

D:久しぶりじゃないか、C

D:それと…A、B

C:勇者の力…こいつらから感じていた既視感の正体はそれか…

C:なるほど、道理で俺一人で潜っても何も起きない訳だ

D:そういうこと

C:A‼B‼なぜ話してくれなかった‼

B:そ、それは…

A:Cさんだって僕らに話してないこと、いっぱいあるでしょ

C:な…

D:ははは、相変わらず子供に弱いなあ

C:うるせえ、別に弱くはねえ

C:あと、その声でしゃべるな

C:その体はお前の者じゃないだろう、魔王さんよ

D:ふう、全く…感動の再開だというのに…趣がない奴じゃ…

C:誰かにとりつかなきゃ生きられない、幽霊風情に言われたくないね

D:こいつ…よかろう、わしの全力を持って沈めてやる

D:安心しろ、この身体も後でそちらに送ってやるからの

C:ほざけ‼

カキン!!

D:しかし、まさかお前がBたちと一緒にいることは、想定外じゃったのう…

D:なんじゃ?勇者を失い、あいつらに影を追ったのか?

C:はっ、ほざけ‼

C:確かに、こいつらはお前と似てる、会った時からそう感じてはいたさ

C:だが…こいつらと一緒にいたのは、そんな利己的な理由じゃない‼

C:こいつらを…こいつらの未来を見たくなった、それだけだ‼

ガキン、ガキン

Chapter08

B:A…

A:B…

B:僕たち…自分のことしか見えてなかったね

A:うん…

B:A…あいつ…いける…?

コクン

B:よし、あいつを倒そう、僕たちの力で

B:Cさん‼一分だけ時間をください‼

C:お前たちに何が…

B:いいから‼

C:…

C:分かった

B:行くよA‼

A:おう‼

B:スペル【マジックシェアリング】

D:あれは…‼まずい…‼

C:おっと、何を焦っているかは知らねえが…

C:行かせねえぜ…

B:魔力共有完了

A:詠唱開始

A:精霊よ、契約により我に従え

A:爛々と照らす太陽のように

A:全てを浄化し魔を滅する槍となれ

A:スペル【ホーリーレイ】

ザシュ‼

D:ぐ

D:ぐうああああああ!!!

C:B、あれは…?

B:あれは…Aの家に伝わる、神聖系の最上位魔法です…

B:習得が難しくて…肉体がある普通のモンスターには効かない、って欠点はあるんですけど…

C:そんなものが…

C:というより、あいつは魔法が苦手なんじゃ…?

B:Aは…苦手というか…あれしか使えなくて…

C:な…

C:そ、それに、そんな高位な魔法、いくら2人分の魔力でも足りるわけが…

B:それは…あの魔法…なぜか僕の魔力と相性がいいっぽくて…

C:なるほど…勇者の力の影響か…

D:おのれ…おのれ…

B:まだ、消滅してない⁉

D:次の…依り代を

B:しまった‼これじゃAが…

ポンポン

C:安心しろ、Dの身体から離れてくれたなら…

スー…

カチャン

C:斬魔の型 朧

ジャキンジャキン!

D:くそ、くそ、くそおおおおおお!!!

D:この私が、この私があ!!!

C:塵になって消えな

Ch7

B:ということがあったんじゃよ

E:えー‼嘘だあ‼そんな物語みたいな‼

E:魔物がいたなんて聞いたことないよ

B:ふふふ、そうだな

F:あーあ、またじいちゃんの、昔の話?

F:いい話だとおもうけどさ、ほどほどにね?

E:あ、兄ちゃん!

E:じいじ!俺兄ちゃんと外で遊んでくる!

B:ああ、行ってらっしゃい

A:B、またあの話し?

B:ああ

A:今の子は信じられないだろうねえ

B:いいんだよ、それだけ今が平和だってことさ

A:まあ、そうだけど

B:それと…

グイッ

B:俺たちしか知らない、ってものいいもんだろ?

A:ふふ、あははは

A:それもそうだな

ーーーーー

むかしむかし、あるところに、勇者の甥がいました

その2人は勇者の仲間と会い、勇者を助け出しました

そしてその4人は幸せに暮らしましたとさ

めでたしめでたし

ーーーーー


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?