EAT ME 【第3話】

京子 犯人は……の前に。まずは、謎解きから。
葉 ためなくていいでしょう?
京子 これがお決まりじゃなぁい?それに、謎解きされながら、気づかれるかどうかドキドキするところを見るのも、謎解きのひとつでしょん?
葉 ……いい性格してますよ、本当に。
京子 さぁて、と。じゃあ、まずは……

京子、坂木を指さす。

坂木 え!?私はやってな……
京子 は、除外。
坂木 え。
葉 紛らわしいことしない。
京子 へい。それで、坂木さんの除外の理由なんだけど、タバコの匂いがうっすらする。
全員 え。
恵 それが、なんで除外理由なんですか?
葉 私達混血にとってタバコの匂いは五感が鈍らせる。特に視力の良くない混血は鼻を頼りにしてるところがあるから、混血民は法律的に吸っちゃいけないのよ。
横島 でも、坂木さんは純血民……
京子 そそ、別に坂木さんが吸ってても問題は無い。なんならロケバスが置いてある駐車場で吸ってる人もいるだろうし。だけどあえて、離れた場所に行っていた。それは、望さんに害を与えない為、ですよね?
坂木 ええ、もちろん!
京子 それ以外にも、恋人関係とか、まあそういうのは置いておいて……
全員 え!?
葉 置くべきじゃない、絶対置くべきじゃない!
坂木 なんで、知って……
京子 携帯かな?あぁ、私用携帯の方ね?履歴にはのぞみんのすんごい量の着信履歴あったし、待ち受けも……
坂木 そ、それ以上は言わないで!
京子 のぞみんとのツーショットチュー写真。
葉 今どきいるんだ、そんな人。
坂木 お願いだから、SNSとか拡散しないで……
京子 しないから大丈夫!いま、頑張り時だもんね。
坂木 ありがとう……!
葉 うわぁ、嘘くさ。
京子 なんてぇ?
葉 ほら、さっさと謎解きしてください。
京子 よーちゃんたら、せっかち。
葉 早く、しろ。
京子 はい。……それで残るは、2人なんだけど……
横島 え、その子は?
京子 まぁ、気になることはたくさんあるけど、関係ないもん、今はねぇ。

京子、匂いを嗅ぐ。

京子 匂う、匂うねぇ。血の匂いが。
葉 もはや、犬では?
京子 あっ……わかった。あなたでしょ?横島さん?鏡の破片盗んだの。
横島 何言ってるんですか?何故私が盗むんですか?
京子 だってぇ、その指。絆創膏貼ってあるじゃん?
横島 これは、作業してた時に……というかそれを言うなら監督だって、指から血が……
監督 血。
京子 そう、その血の匂い、嗅いだことあるんだよねん。あんた、混血だろ?
横島 え……。
京子 確か、これは……白鳥家(しらとりけ)の匂い!
坂木 白鳥家って、あのコスメブランドの!?
京子 世界でも有名な一族だよねん。白鳥(はくちょう)の力なのか、皆さま美人だし、噛み付き衝動はでにくいし、純血に混じっていても気づかない。血が出ない限りは。
横島 だから、なんだって言うんですか?関係ないでしょ!
京子 その鏡さ、自分で使おうとしたんじゃない?
恵 え?
京子 自分の血を抜くために。この場所を撮影に選んだのだってその鏡を見るため。でも、見るのをやめた。何故なら、醜いと言われた自分の顔を見るのが辛かったから。
横島 は……?
葉 25年前、白鳥家がボランティアの一環として養子を取られたとか。
坂木 そしたら、さっきの血の匂いっていうのは?
京子 溢れた子供ってことでしょうね。そうでしょう?
横島 ……ふふ。いいわよね、あなた達は恵まれていて。私は、みんなに醜いって嫌われた。母とは強制的に離れ離れ。白鳥家に入ってもお前は外に出るなって言われた。私の存在が世間に公表されたらと、世間体のために引き取って……結局、あの家が大事なのは表だけ。
京子 世間体か……。
横島 この体のせいで、混血にされたせいで、私には自由がない!だから、私はあの家から出られるように白鳥家を脅してやった。あたしが不倫をした時に出来た子供だってね!
葉 あれは、不倫報道のカモフラージュ!
横島 流石の白鳥家もこの事実だけは、公表したくないって許してくれた。でも行動は見張られ続けている。だから、私は姿を変えたの。
京子 通りで、血を嗅ぐまで匂いがしないわけだ。
葉 さすがは、美人になれる能力。
横島 私は少しか入ってないから美人にはなれないけど、誰にも私だということを知られない。……ただ、私も望さんを見てそのままでいいんだと思った。あんなに真っ直ぐに生きてる人、他にいないもの。だから、自分の身体と決別しようって。だけど、鏡を落とした時に望さんが……
坂木 見てしまったのね……
横島 望さんには、本当に申し訳ないことを……
坂木 ……。
京子 本当に、最初っからそう言えばいいんだよぉ。嘘をつくのは良くない。もっと、自分に正直でいようぜ。

ロケバスのドアが開く
大口歯洲家の長老とSPが来る。

長老 ……
坂木 だ、誰?
葉 長老、お待ちしておりました。こちらに。
長老 ……望の容態は?
葉 電話した時よりは、少し落ち着いてはいます。ですが、自分の体内で完全に生成するのは難しいかと……
長老 そうか……
横島 私が、私が悪いんです!私の不注意で……

銃声音
横島の首に何かが撃ち込まれる。

葉 え……
京子 よーちゃん、下がって!

横島の身体が半分白鳥、半分人間のおぞましい姿になる。

横島 ミニクイ、ミニクイ……ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙
坂木 ひぃっ!
京子 長老、のぞみんをお願いします!
長老 うむ。
京子 よーちゃん!
葉 はい!
京子 「いただきます」

葉、鉄パイプへと変化する。

京子 やっぱり鉄パイプか。
葉 あなたの力技があればなんとかなるでしょ!
京子 まぁ、ね!

横島、望を狙う。後ろを気にしながら鉄パイプを当てに行く京子。

京子 ここじゃ、狭すぎる!
葉 ……窓、壊せますか!?それで誘導しましょう!
京子 でも、こいつのぞみん狙いだよ!
葉 大丈夫、何とかなります!
京子 何とかって何さ!
葉 何とかは何とかです!ほらつべこべいわずに!
京子 わかったよ!

京子、鉄パイプでヒビを入れたあと、窓から飛び出る。
鉄パイプが伸び、横島を先端部分で引っ掛けるが完全に掛からない。

京子 このままじゃのぞみんが……
葉 くっそぉ!!

すると、鉄パイプが光り出す。

京子 これは……!
葉 はぁぁぁぁ!

鉄パイプが鞭へと変化。横島に巻き付く。

京子 やるじゃん。一気に引っ張るよ!
葉 お願いします!

横島がロケバスの外へ出される。そして、横島、鞭を噛む

葉 痛った!
京子 さぁて、外に出せたはいいものの、どうするかなっ!

横島、変わらず望へと矛先が向く。
すると、ロケバスのガラスに反射された自分の姿を見て、自分の醜さに驚きと恐怖。

横島 あ、ア、ア、ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!
京子 待て!

鞭で捕まえようとした瞬間、元に戻ってしまう葉。それを抱き抱える京子。
そして、横島は飛び降りてしまう。

京子 ……くっそ。

1時間後

駐車場のベンチ

望 ここは……
長老 起きたか。
望 長老!この度は、ご迷惑を……
長老 望。
望 はい。
長老 たまには、顔を見せに来い。皆、応援しているからな。それと……
坂木 私ですか?
長老 望をよろしく頼む。

長老、SPを従え去っていく。

2人 ……はいっ!

駐車場、ロケバス付近にて。
捜査員がたくさんいる。

京子 は?横島の死体が見つからない?
小鹿 はい。落ちたと見られる場所を探したのですが、見当たらなく……
京子 そんな、そこから落ちていったのに!
葉 京子。
京子 よーちゃん……
葉 申し訳ありません。私の力量不足で取り損ねました。
小鹿 いえ、我々も調査を続けますんで。

小鹿、行ってしまう。

京子 よーちゃん……
葉 すみません。私の能力がないばっかりに……
京子 ……進化は出来たじゃん。それだけでも認めなさいな。
葉 次は、絶対、捕まえます……
京子 おうよ。

監督が近づいてくる。

京子 うおっ!出た!
監督 混ざってる。
京子 は?
監督 ……
葉 私?
監督 君、色んな色が混ざってる。
京子 いや、まぁ、混血だしね?
監督 君は、無色透明。
京子 はい?

監督、行ってしまう。

京子 今の何?怖いんだけど?スピリチュアル?
葉 ……そうですね、きっと。そういえば、今日ずっと匂い嗅いでましたよね?本当は犬の家系能力なんじゃないですか?
京子 えぇ、やだぁ。ちゃんと蛇の能力だよん?
葉 ……
京子 その目やめて。自分で自分を疑っちゃう。

松村刑事が出てくる。

松村 おい、ちょっと待て!
京子 うわっ、居眠り刑事。
松村 なんでお前が、その事を……ってそんなことはいいんだよ。今回は、お前達の手柄だったけどな、結果的に混血民が犯罪者だったことに変わりないからな!
京子 マジでムカつく!
葉 そういえば、安藤刑事はどちらに?
松村 ……は?
葉 だいぶ前にあなたに呼び出されてたって……
松村 なんだ、それ……
京子 居眠りのし過ぎかぁ?
松村 だって、あいつは1週間前に殉職したはず。
2人 え?
葉 それじゃあ、あれは……
京子 何かが起きてんねぇ。

山奥の村

恵が子供達を眺めている。
木の影から1人の男が話しかける。

男 上手くいったな。
恵 ええ、子供達が喧嘩してくれて良かったわ。おかげで鏡は無くなったし。
男 わざと喧嘩をふっかけるようなことして、鏡を割らせて……可愛い顔して性格悪いな。
恵 綺麗は汚いって言うじゃない。
男 自分で言うか?
恵 何よ。
男 別に。
恵 とにかくあの鏡が無くなって生成したわ。
男 お前は、ベニクラゲの家系能力、確か不老だったか。
恵 ずーっと子供達の成長を見ていたいもの。それに、あなた達の実験にも加担してあげたでしょ?これでおあいこね。安藤さんだっけ?
男 今はな。いい死体があって良かったよ。
恵 さすが、カメレオンの家系能力。それで、いつ動き出すの?
男 もうじきだ。

男、去っていく。

恵 さぁて、次の村長を育てなきゃね……。

恵の目が光る。恵が座る木の下にはたくさんの白骨死体。

3話~完~

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