「元」通関士が語る「船上で働く人を支える通関士。外貨船用品積込承認申請とは?」
皆様はテレビ東京系列で放送されている「巨大船に乗せてもらいました」シリーズを観たことがございますでしょうか?
私は「元輸入通関士」であったため、「輸入航路」がテーマであった
「英国→日本25,000km 超巨大コンテナ船に乗せてもらいました」
(シリーズ第3弾 2020年6月放送)
を「特に」興味深く観させていただきました。
イギリスを出港した「コンテナ船」が、ヨーロッパの各港に立ち寄りながら、スエズ運河、シンガポール等を経由し、日本に到着するまでの「52日間」の密着取材を行ったものでしたが、
「船上で働くってロマンがあるなあ」
と思わせてくれるような、とても感動的な内容でした。
当然、ここは「テレビ番組」内容の解説を行う記事ではなく「通関士」の記事となりますので、ここからが本題となります。
このように「数十日または数百日に及ぶ、長い航海」となる貨物船等において、「航海途中に」機械類の故障が発生した場合はどうするのでしょうか?
特に困るのが「交換部品の予備が船舶内にない(=在庫なしとなっている)」場合です。
答えはシンプルなものとなります。
(船舶部品を取り扱う海外の代理店等から)飛行機で送ってきます
つまり、日本での船舶の寄港予定に合わせて、海外から「飛行機で部品を飛ばして来る」ということです。
身近な例を使って、ザックリと言うと
普通電車の停車している駅に「後から急行電車が追いかけてくる」
ようなイメージです。まさに、「十津川警部シリーズ、西村京太郎トラベルミステリー」のようなことが日常で行われていることになります。(例えが「昭和」ですいません)
そして、ここからが「通関士」のお仕事の話です。
この時に使われる税関申告が
「外貨船用品積込承認申請」
と呼ばれるものであり、この申告は、決して「レアケース」ではありません。
特に「航空貨物」を扱っている通関士の方にとっては「日常的に行われる」税関申告です。
私は「船舶用品を取り扱う代理店」のお客様を担当していたことで、数百件に及ぶ「外貨船用品積込承認申請」を行なっていましたが、当時は「航空貨物」を取り扱う通関士でありながら、「日本に到着する貨物船の名前」を自然と覚えてしまうほどでした。
飛行機で貨物を送る場合には「送り状」が発行されます。これを「航空運送状(Air Way Bill)」と呼ぶのですが、送り先(Consignee)欄が「船舶名」となっていることが目印となります。
つまり、
M/V "船舶名"
※M/VはMotor Vessel(ディーゼル船)の略
というような記載がされていることになります。
ここでは、「外貨船用品積込承認申請」の申請方法の詳細を説明するつもりはなく、
通関士は「船舶名が記載された」航空運送状が到着することで、この「部品供給パターン」を予測することになり、
船舶の入港予定
飛行機の到着予定
空港から船舶の停泊港までの陸送予定
という「陸・海・空」路の日程を緻密に計算しながら、航海途中にある船舶への不足部品の供給のお手伝いを行っているということです。
そして、日本の寄港地での停泊期間中に「部品等の供給を終えることができた船舶」たちは、また新たなる「長い航海」へと旅立っていくことになるのです。
「船上で働く人を支える通関士」
いかがだったでしょうか?
通関士に興味を持って、ここに辿り着いた読者様が、「なんか、通関士おもしろそうだな」と思っていただける内容であったのであれば、私も嬉しく思います。
本日も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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