小沢健二レビュー

小沢健二

小山田圭吾と共にFlipper's Guitarとして活躍、解散後にソロ活動を開始。明快なポップソングを発表し、「渋谷系の王子様」と称された。3rdアルバム以降は内省的な作風へと変化。現在は音楽シーンと距離を置いた独自の活動を展開している。

犬は吠えるがキャラバンは進む(Dogs)
 B

[総評]
1993年。Flipper's Guter解散後初のアルバム。 コーネリアスのソロデビューアルバムの半年ほど前に発表されたが、コーネリアスのファーストともFlipper's Guitarでのサウンドとも異なる。元相方のコーネリアスがこのアルバムを「なんか尾崎豊みたい」と評した(らしい)が、ポップかつストレートな(ハードではない)ロックサウンドが特徴のアルバム。
「LIFE」のような派手さはなく、 内省的な雰囲気はあるものの、かと言って「球体の奏でる音楽」以降ほどでもない、 非常に微妙なバランスを持つ独特のアルバム。

LIFE
 B+

[総評]
1994年。小沢健二ポップスの金字塔。 渋谷系の王子様と呼ばれた頃の小沢健二を象徴するアルバムで、 明快なサウンドと、恋愛をテーマにした平易ながら特徴的な歌詞が印象的。 アルバムのほぼ全曲がシングルになっており、ある種のベスト盤的なアルバムとも言える。
小沢健二の代表作というだけでなく、 90年代におけるJ-POPを語る上で外すことのできないアルバム。 「愛し愛されて生きるのさ」、「ラブリー」、 「ドアをノックするのは誰だ?」、「今夜はブギーバック」など、 小沢健二の代表曲多数。

球体の奏でる音楽
 A

[総評]
1996年。ジャズ的要素を取り入れているのがこのアルバムの最大の特徴。 このアルバムを境に、前作までのポップ路線から、内省的な路線へと展開していく。 全体を通しても30分弱と、非常にコンパクトな構成。 前作のように、派手で大規模なバックは影を潜め、 小ぢんまりとした室内楽のようなサウンドが印象的。
ジャズ喫茶での上質なライブを聴いているかのようなアルバム。 アルバムの短さやシックな音楽性なども影響して、 前作「LIFE」の影に隠れてしまっている感のあるアルバムであるが、 かなりの秀作。

Eclectic
 B

[総評]
2002年。 ニューヨークでレコーディング活動を行ったということも関連した、 都会的な、コンテンポラリーR&B的なサウンドが特徴。 また、今までのアルバムは生楽器を主体としてサウンドが構成されていたが、 今作は打ち込みでのサウンドが展開され、 そこにピアノ(エレクトリック含む)が絡んでいる。 ボーカルも、前作までのあどけない雰囲気を保ったような物とは大きく異なっており、囁くようなボーカルが特徴。
全体的にダークな雰囲気が漂う。 収録曲の幾つかはボーカルを抜いたインストゥルメンタルバージョンであることからも (例えば、「風と光があなたを包むように」は「1つの魔法」のインストゥルメンタル)、 歌詞よりもサウンドへの意識が強いアルバム。

毎日の環境学: Ecology Of Everyday Life
 B-

[総評]
2006年。活動のベースを音楽から社会活動へとシフトした時期のアルバム。 全編インストゥルメンタル、社会的で示唆的なアルバム名と曲タイトル、民族音楽やエレクトロニカを取り入れたサウンドと、それまでのアルバムとは全く異なる路線のアルバム。 それまでの小沢健二アルバムがかなりポップス寄りであった事もあり、かなり実験的なアルバムという語られ方をされるアルバムであるが、サウンド自体はそれほど複雑で難解というものでもない。
前作「Eclectic」に収録された曲のメロディーが流用されていたりするため、 サウンドのベースとしては「Eclectic」に近い。 R&B、フュージョン、エレクトロニカ、民族音楽、アンビエント、ミニマル・・・と、 多数の顔を持つ、非常に形容しがたいアルバム。

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