The Art of Noiseレビュー

The Art of Noise

80年代中期、フェアライトCMIを駆使したサンプリング・ミュージックで一世を風靡したエンジニア集団。 サンプリングという概念を一般的に広め、 電子音楽だけでなく様々なジャンルに多大な影響を与えた。 その作品はCMやTVなんかで耳にする機会が意外と多い。

(Who's Afraid of?) the Art of Noise!
 B+

[総評]
1984年。前年に発売したEP「Into Battle With the Art of Noise」から 「Beat Box」「Close (to the Edit)」「Moments in Love」の3曲を再収録し、 新たに構成したもの。 全編を通してフェアライトCMIによるサンプリングサウンドが支配している。 多くの電子音楽ミュージシャンに衝撃を与え、 例えば坂本龍一「未来派野郎」あたりのアルバムなんかは、 このアルバムからの多大な影響を感じさせる。
上記の「Beat Box」「Close (to the Edit)」「Moments In Love」の3曲が高品質。 荒いサンプリングサウンドが一周回ってカッコいい、 といった感じであろう。

In Visible Silence
 B

[総評]
1986年。 この作品以降、 前作までプロデューサーを務めたトレヴァー・ホーンがメンバーから外れており、 その影響か、コンセプチュアルな作風から徐々にサウンドトラック的な作風へと変化していく。 今作は前作同様、荒く特徴的なサンプリングで構成したサウンドが中心で、 前作からの正統進化系といえるアルバム。
Mr.マリックのテーマとして知られ、日本ではArt of Noiseの作品の中で最も有名と思われる「Legs」、有名TVドラマシリーズの主題歌「Peter Gunn」「Paranoimia」など、 シングルカットされた佳曲多し。

In No Sense? Nonsense!
 C-

[総評]
1987年。この頃になると、エンジニア作業であったり、 音楽制作であったり(メンバーはサウンドプロデューサーとしても活動していた)、 それぞれの分野での活動が活発になりつつあった。 今作は実験的な作風の曲が多く、 モチーフの使い回し、サンプリング・ループの多様が特徴的。 曲間に短い小品を挿入し、曲ごとを繋ぐという構成が見られる。
「Dragnet」は前作の流れを汲むドラマ主題歌のリメイク。 次作からアンビエント風の作品が増えるが、 「Ode To Don Jose」「Crusoe」はその傾向を伺わせるサウンド。

Below the Waste
 C+

[総評]
1989年。 前作でわずかに伺えた「アンビエント」「民族音楽」の要素を取り入れたアルバム。 特に民族音楽の要素がかなり強く、 アフリカンリズムの追求、アフリカ系言語でのボーカルといった曲が随所に見られる。 その一方で、それまでのアルバムでは殆ど見られなかった、 ギターサウンドが所々に挿入されているのも特徴の一つ。
今作の特徴として挙げた上記の要素が入っている曲は全体的に今ひとつで、 「Catwalk」「Dilemma」「James Bond Theme」といった、 前作までの要素が多分に含まれている曲に佳作多し。 イージーリスニングの名曲、「Robinson Crusoe」を始め、 「Island」「Finale」といったアンビエント調の作品も良い。

The Seduction of Claude Debussy
 B+

[総評]
1999年。 前作を最後にグループは解散していたが再結成、 10年のブランクを開け発表されたアルバム。 題名の通りドビュッシーをフィーチャーした作品で、 「ドビュッシーの生涯をテーマにした映画のサウンドトラック」というコンセプトがある。 曲の至る所にドビュッシーの作品 (「サラバンド」「巷に雨の降る如く」「音と香りは夕暮れの待機に漂う」など)をサンプリングしており、 それらをドラムンベース、ヒップホップといったサウンドでまとめ上げている。
しばしば「アート・オブ・ノイズとしてこのアルバムを出す意味があるのか?」 といった評価がされるものの、 その辺を抜きにしてみると非常に洗練されまとまったお洒落なサウンドのアルバム、と評価できる。

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