Detroit Techno Compilation集 レビュー

デトロイト・テクノ

1980年代末から1990年代にかけて、デトロイトで誕生・発展したテクノミュージックの一種。 クラフトワークを起源に持ち、エレクトロ・ファンク、シカゴ・ハウスと辿って生まれた、 「テクノ」本流のジャンル。 ストリングス系・パッド系のシンセサウンドを使うところに特徴がある。

A Hi-tech Jazz Compilation / Galaxy 2 Galaxy
 A+

[総評]
ジェフ・ミルズ、マッド・マイク、ロバート・フッドによるユニット 「アンダーグラウンド・レジスタンス」の楽曲を収録したアルバム。 90年代前半の作品を主に収録しており、 以下に述べる他のデトロイト・テクノアーティストに比べると、 時代がやや少し下がっている。 「Jazz」をタイトルに冠している通り、 随所にブラスサウンドを取り入れているのが特徴。
デトロイト・テクノの一つの完成形というべき、傑作アルバム。 全編を通してクオリティが非常に高く、 デトロイト・テクノを聴く上で避けては通れない1枚。 表題曲「Hi-Tech Jazz」が特に素晴らしいが、他も素晴らしい作品揃い。

Elements 1989-1990 / Psyche/BFC
 B

[総評]
カール・クレイグの変名「Psyche」「BFC」名義での楽曲を収録したコンピレーションアルバム。 タイトル通り1990年頃に制作された作品を収録しており、 デトロイト・テクノの発展期 (ホアン・アトキンス、デリック・メイらと比較し、第二世代とも呼ばれる) の時代の作品といえる。 このアルバムに収録された作品は、 ここで挙げている他のデトロイト・テクノアーティストと比べると、 アンビエントハウス寄りのサウンドが多く、それがひとつの特徴となっている。
身も蓋もなく言えば、アンビエント期のAphex Twinっぽい「Elements」、 静かなコズミック感「Andromeda」、「Galaxy」 謎のネーミング「Chicken Noodle Soup」などが良い。 アッパーなテクノサウンドだった『A Hi-tech Jazz Compilation』に対し、 ダウナーなテクノサウンド。

20 Years Metroplex / Juan Atkins
 B+

[総評]
デトロイト・テクノの産みの親の一人、 ホアン・アトキンスの作品を収録したコンピレーションアルバム。 タイトルに「20Years」と銘打っている通り、 80年代から00年代までの作品をまとめたものだが、 80年代を中心にした作品が主に収録されており、 デトロイト・テクノのコンピレーションというよりは、デトロイト・テクノの黎明期、 エレクトロ・ファンクのサウンドに近いコンピレーションとなっている。 エレクトロ・ファンクの音楽的起源がクラフトワークのアルバムとされる(主に「Computer World」)ため、 クラフトワークを彷彿とさせるサウンドが多いのもこのアルバムの特徴といえる。
デトロイト・テクノの元祖というべき「No UFO's」を始めとして、 かなり『Computer World』風味な「Technicolor」等の80年代の作品、 完全にデトロイト・テクノサウンドとなった 「Starlight」「Game One」「I Wanna Be Free」といった90年代作品、 エレクトロニカ的雰囲気の漂う2000年代の作品「Something About The Music」と、 非常にバラエティに富んでいる。

Innovator / Derrick May
 B-

[総評]
ホアン・アトキンスと並ぶデトロイト・テクノの生みの親の一人、 デリック・メイの作品を収録したコンピレーションアルバム。 80年代後半から90年代初頭までの作品を収録している。 上記の、ホアン・アトキンスのアルバムが、 デトロイト・テクノのまさに初期段階といえる、 エレクトロ・ファンク寄りのサウンドだったのに対し、 こちらのアルバムは、 デトロイト・テクノのサウンドがほぼ完成しつつある時期のサウンドとなっている。 「Strings of Life」という代表曲を持ち、 「Innovator」の名の通り、テクノシーンに絶大な影響を及ぼした。
やはり「Strings of Life」に尽きる。 この1曲で、デトロイト・テクノの方向性を決定付けたとされる名曲。 ここで挙げた他のアーティストに比べ、突き抜けた特徴はないが、 そのまとまりの良さから『A Hi-tech Jazz Compilation』と並び、 デトロイト・テクノの入門盤としてオススメの1枚。


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