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古代オリエント美術の世界

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なぜ古代文明なのか?それは古代について知ることは、現在の私たちについて知ることだからです。人間の基本的な部分は古代から変わっていません。そして何より、人間の歴史とは「戦史」でした…
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#古銭

古代エジプト美術館を探検する:後編

今回は、タイトルの通り前回の記事の続きとなる。後編では、古代エジプト美術館の第三展示室(暗闇の間)を中心に紹介していく。 第三次展示室に入る手前に小さな廊下が存在する。この廊下も照明が敢えて付けられていないため、懐中電灯での探索が必要となる。照明がないため、勝手ながら暗闇の廊下と便宜上、命名した。ちなみに探索に必要な懐中電灯は、入場時の案内であらかじめ手渡されるので、持参する必要はない。 足下を見ると可愛らしい猫が何やらボードを持って佇んでいる。そこには、フランスの考古学

古代エジプト美術館を探検する:前編

今回は、東京・渋谷にある古代エジプト美術館について紹介していく。菊川匡 博士によって創設された日本で唯一の古代エジプトの専門美術館である。当館は博士自らの手で収集されたコレクションが展示されている。博士の審美眼によって集められた選りすぐりのコレクションが堪能できる。 膨大な量のコレクションが展示・収蔵されているため、前編と後編の2回に分けて紹介していく。前編ではエントランスと第一展示室及び第二展示室を紹介し、後編では第三展示室の暗闇の間を紹介する。暗闇の間とは何なのか?と疑

古代ローマの疫病 | 大帝国を襲った死の旋律:後編

前回に引き続き、今回も古代ローマで流行した疫病についてを取り上げる。前編では古代ローマで起こった天然痘について紹介したが、後編ではマラリアについて言及していく。マラリアも天然痘と同様に古代ローマの人々を苦悩させた病のひとつであり、多くの人間がその命を落とした。もともと沼地が多いローマは、マラリアを媒介する蚊の巣窟だった。加えて、軍の移動や商人らによる交易品の流入が頻繁だったため、感染症のリスクを大きく背負っていた。 マラリア マラリアは、マラリア原虫によって引き起こされる熱

古代ローマの疫病 | 大帝国を襲った死の旋律:前編

前回に引き続き、今回も古代で起こった疫病の流行をテーマとして扱う。前回は古代エジプトを襲った結核を中心とする疫病についてを紹介した。今回は、タイトルの通り古代ローマで起こった疫病を主題とする。古代ローマでは様々な病が人々を苦しめていたが、中でも特に猛威を奮い、帝国を衰退にまで追いやった「天然痘」と「マラリア」を中心とした疫病の恐怖に迫っていく。本記事は前編と後編の二回に分け、前編は天然痘、後編はマラリアを扱う。 古代ローマ人は、細菌やウイルスなどの目に見えないものから被る病

オリエント美術の世界 〜ローマ帝国と鉱物〜

現代の私たちの生活の中で欠かすことのできない鉱物。普段は気づかないところで、鉱物は意外にも大活躍している。そして、それはローマ帝国の時代からすでに同様だった。ローマ帝国では多種多様な鉱物が採掘され、利用されてきた。今回は資料として記録が残されている鉱物の一部を紹介していく。 ブルガリアのマダンで産出した方鉛鉱。鉛が採れる鉱石で、少量だが銀も混じっている。ローマ帝国ではこの鉱石から鉛を採り、水道管の材料として用いた。だが、鉛は中毒性があり、精神異常をもたらすケースもある。一説