微々たる乙女の話

さやぴがZOCを脱退した。兎凪さやか、うなぎさやか。ミスiDの時の名前はさやか。白色担当。アイドルのさやぴが好きだった。アイドルじゃないさやぴも好きだった。キラキラのふわふわの薄くてかっこいい女の子だった。ミスiDの時からアイドルみたいで可愛くて、だからZOCのメンバー発表の日は騒いだなあ。アイドルみたいな女の子がアイドルになったんだから、夢みたいだなんて思った。これで会いに行ける、生歌が聞ける、踊ってる姿が見られる、チェキが撮れる、なんて。
何も叶わなかった。
脱退理由は未成年飲酒喫煙、アイドルが、未成年飲酒喫煙。ついでに言うと見つかった現場は合コンだとか。馬鹿みたいだ、なんで見つかっちゃったの、なんでもっとこっそりしなかったの、なんて思ってしまう。人気も出てきて名前も売れて、看護の学校にだって通っててこれからだったはずなのになんで。せめて隠し通して欲しかった。ずっときらきらのさやぴでいてほしかった。いや、ずっと前から吸って飲んでたとしたら、最初からわたしが魅せられていたきらきらのさやぴなんかいなかったわけだけど。好きだったちょっとハスキーな声は、酒焼けか煙草のせいなのかな。元々かもしれないけど、やっぱりそうかもなんて思えて悲しくなったりする。脱退の原因になったことの影響を好きだったなんて、最悪だ。

さやぴの好きなところ100個言えるよ。ここで言ったら止まらないけど、うさぎみたいな口と、綺麗な二重幅と、ふわふわの髪と、なにより絶対にさやぴにしか似合わないような下瞼のオーバーラインが好きだったよ。オーバーラインの話、ツイートしていいねをもらって騒いだなあ。化粧を真似して、さやぴになりたくてなりたくて仕方なくて自撮りだって研究した。そこそこの事務所からの勧誘と、変な男の人からのたくさんの怖いDMが来るくらいには自撮り界隈で多少伸びた。でもやっぱりさやぴにはなれなくて悔しくて何回もTwitterのアカウントを変えて、それでも憧れて真似して目指してきたのに、なのにこんな形でさやぴがさやぴじゃなくなってしまうとか。有名になった時彼氏がいてもいいからこのままぶちかましていってほしかった。こんな期待と偏見を押しつけられた結果がこれなのかもしれないけど、まだ歌が安定していなくても自撮りと実物が違ってもシャウトを散々否定されてもアイドルとして生きようとするさやぴが好きだったから、あのままきらきらであろうとしていてほしかった。

だから飲み込めなくてつらくて泣いた。家族でも友人でも親戚でも知り合いでもない、本名も知らない女の子のためにこれでもかってくらい泣いた。友達に泣きついた。ら、面倒臭いって怒りながら慰めてくれた。もし友達がさやぴならたくさん撫でてうんうんって話聞いてくれるのかななんて思った。目が腫れすぎてうまくいかないアイプチにイライラして、それでもどうにか化粧して外に出たけど、バイト先で騒ぎ立てて、駅でめそめそ泣いて帰り道ではまた号泣した。外で泣くのは化粧が落ちるから嫌いだったのに、止まらなくってたくさん泣いた。クッソ生きてやる、なんて思えなかった。察してとはこれまでにないくらい思えたけどさ。

それでも、こんなに泣いてもさやぴのことが好きだから。未成年飲酒喫煙くらいでさやぴはさやぴじゃなくなっちゃったりしないって信じてるから。3日かけてこんな日記を書くくらいには好きだから。きらきらしてたさやぴを、兎凪さやかを好きな自分を忘れないためにこうやって文章を作るくらいには大好きだよ。DMのハートとかツイートのいいねもらった時のスクショも、たくさんの自撮りも、全部大切に持っておく。きっと繊細だからたくさん考えてたくさん泣いてるかもしれないから、もう20歳だけどお酒じゃなくて暖かいココアとか飲んで、綺麗な映画とか見て、ふかふかのベッドで沢山寝て、落ち着いたらまた笑顔を見せてほしいなとか。おつかれさまでした、
さやちゃんだいすきだよ。

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