リトル・イタリーの街角で

 昔住んでいた家の近くのレストランが健在で、懐かしくなって入った。

 当時と同じメニューも当時はなかったメニューもあって、味は正直記憶から薄れていたので単純に、ああ美味しいなこんな味だったっけな違うかもなまあいっか、で済んだのは良かったなと思う。これで美味しくなかったら、記憶の中だけに留めておいて入らなければよかったと思ったかもしれないから。
 もちろん当時と変わっていたところもあって、コロナ以降俄然増えた「カバード・パティオ」が出来ていた。
 こちらのレストランは立地にもよるけど屋内の席と屋外の席があって、屋外のことを「パティオ」と呼ぶ。日本では「テラス席」になるのかな? で、カナダの場合パティオは夏の風物詩、お天気のいい日だけのお楽しみ、雨の日や冬場はとてもじゃないけど屋外で飲食なんて正気の沙汰じゃないというのが共通認識だった。
 けど、新型コロナが流行して、飲食店は最初は完全閉鎖、それから規制緩和で第一段階がテイクアウトのみ、そしてパティオ席のみ、と少しずつ営業再開するにつれ、それまでパティオのなかった店もどんどんパティオ席を作り出した。その流れで生まれたのが「カバード・パティオ」。レストラン側も死活問題だし客側も外出したい・外食したい、お気に入りの店には潰れてほしくないという思いもあったりで、屋根とテーブルの辺りまで「カバー」でがっつり囲ってヒーターを完備した、半屋外とでもいうようなパティオができた。元々カナダの建物といったら石造りで保温性が高い、ということは密閉性が高いので通気性はお察し。その点カバード・パティオなら上半分は素通しなのでコロナ菌コロナ菌とんでけー、という理屈らしい。ヒーターもちょっとおしゃれなお店だと街頭風にしたり暖炉風にしたりと工夫を凝らしている。

 卓上に瓶で出ていた調味料がポーションパックになっていたのは時代の流れなのかコロナ禍によるものか。昔は手作りだったデザートが既製品になっていたのはちょっと寂しさもあるけど、逆に言うと当時は食べたければ手作りするしかなかった「エスニック料理」の既製品が手軽に手に入るようになったということでもあり。

 いろいろと、いろんなことを考えた外食だった。

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