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「非常にはっきりとわからない」展

「現実と虚構」「日常と非日常」というように「こちら側からあちら側」へ行く時に「ここから先はあちら側です」というわかりやすい仕掛けがあると、私たちはその世界にすんなりと没入することができる。

ディズニーランドでは舞浜駅で電車を降りて間もなく、歩いている道のりで楽しげな音楽が流れ、チケットを買ってゲートくぐるより前に、夢の国に来たことを実感させてくれる。

チームラボの展示に行った時にはまず裸足にさせられ、水の中を歩かされたことで「これは見る展示ではなく体験する展示なんだ」と言葉ではなく体ですぐに理解することができた。

以前に行ったミッフィーちゃんの55周年を記念した「55ミッフィー展」では入口のゲートをくぐる時にオリジナルのミッフィーちゃんの歌が流れていたことで、私はそこが都内のデパートであるという現実世界から一気にミッフィーちゃんの世界に没入して子供の頃のような気持ちに切り替えることができた。

千葉市美術館で開催されている「非常にはっきりとわからない」展はどうだろうか。解釈は人それぞれだけれど、私はこの展示は「こちら側とあちら側」の線引きがテーマだと感じた。

「非常にはっきりとわからない」という名の通り、何を意味しているのかわからない展示が延々と続く。わからないからひとつ残らずじっくり見るし、どこかにヒントがあるのではないかと多くの人が同じ場所を何度も往復していた。

「非常にはっきりとわかる」を目的にこの展示を見てしまうとネタあかしされた後も、それがネタあかしだったかどうかすらわからない状態で美術館を後にすることになると思う。

これは「こちら側とあちら側の境界線」の展示なのだ。ただし、ディズニーランドやもしくは神社の鳥居のようにわかりやすい境界線があるわけではない。初めはそれが境界線であることに気が付かない。「もしかして」とうっすら気づいてからもう一度体験するとそれが境界線であるというヒントをいくつか提示してくれていたことに気づく。その方法が本当に秀逸なので私はとてもゾクゾクしてしまった。

そして、最初にもらった「AUDIENCE」と書かれた黄色いシールの意味に気づいてニヤリとしてから会場を後にした。

先ほど行ってきたばかりなので、ひとまず直後の感想まで。わかりやすい境界線と曖昧な境界線についての考察はまた改めてしたいと思う。(書くかはわからない)

この展示は12月28日までなので、行ける人にはぜひ行って体験してみて欲しい。

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