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読書日記📚

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記事一覧

シバ先生 taught me 司馬遷|「悟浄出立」万城目学(読書日記)

中国の歴史や古典が好きだ。魂がふるえるくらい好きだ。 万城目学が描いた「悟浄出立」は、中国古典に登場する主役級の周囲にいる誰かの目線で語られる物語。 5つの短編が収録されている。 「悟浄出立」…西遊記より、沙悟浄 「趙雲西航」…三国志より、趙雲 「虞姫寂静」…史記・項羽本紀(四面楚歌)より、虞美人 「法家孤噴」…史記・刺客列伝より、荊軻と偶然同じ名前を持つ京科という男 「父司馬遷」…史記を編纂した司馬遷の娘、榮 この主人公たちを記憶の中にお持ちの方には、ぜひ読んでほしい。

ふざけ人の流儀があるんじゃ|「論理と感性は相反しない」山崎ナオコーラ(読書日記)

小説の世界、自由になろうとすればこんなに自由になれるのかと衝撃を受けた。 初めて読んだのが大学生の頃だから5年くらい前。 そこから何度か引っ越しをしたけれど、手元から離れることはなかったしこれからも手離さない。 一風変わった短編集なのだけど、私はこの本が好きだ。 どう変わっているのかというと、例えばこの本に収録されているのはこんな話。 ・人が1人も出てこない話 ・バンドの年表だけの話 ・どこかで聞いた古典をオマージュした話 ・恋人同士のある日 ・友達同士のある日 ・常に地

流せぬ苦悩があるものか|「月ぬ走いや、馬ぬ走い」豊永浩平(読書日記)

今年の群像新人文学賞の受賞作。 この賞をもらってデビューはかっこいいよなあと思って購入したのだけど、読んでそのパワーに脱帽。拍手。リスペクト。 沖縄に生きる(生きた)14名の語りが連鎖しながら、戦中から戦後そして現在までの因縁が描かれている。立場も見ている世界も違う1人1人が、どんな思想でどんな環境を生きたのか。 語りが合わさって1つの世界となる。 読み終えた後に見える沖縄カルチャーは、それまで抱いていたものよりも力強くて揺るぎないものになった。 解きほぐせないほど絡んだ

こう見えたって働いてるのさ!|「フレデリック」レオ=レオニ(読書日記)

部屋に、1番好きな絵本を飾っている。 レオ=レオニ(谷川俊太郎訳)のフレデリックだ。 フレデリックを読んでくれるのは、決まって父だった。 他の本をリクエストしても、父はフレデリックばかり読み聞かせた。 絵本の中のメッセージを伝えたかったのか、父の1番好きな絵本だったのか。 私が部屋に飾っているフレデリックは、もともと父が誰かに買ってもらったものらしく、裏表紙にはでかでかと父の名前が書かれている。 読み聞かせてくれた時期もこの絵本は父のものだったのだけど、私が自分で文字が読め

日常の断片を皿に見る|「皿の中にイタリア」内田洋子(読書日記)

2024年私はこの本に出会い、素敵トルネードで吹っ飛んだ。 イタリア在住30年以上の筆者・内田さんが、その地で出会った人々と食べ物のことを書いたエッセイ集。 「イタリアを舞台にした人々の交流と食のエッセイ」これだけでこの本が読みたくなる人〜〜?はーい!🖐️ 見たら分かる、美味いやつやぁ↑ん(青空レストランの宮川大輔さん)ばりに、読む前から素晴らしいことは分かっているぞ…。なんて思いながら書店で購入。 その書店は大学時代同じサークルだった友達が働いているのだけど、レジを通し

人の日記を買って読む|「みんなもっと日記を書いて売ったらいいのに、と聞いたので書いたうつつとうつつ日記」守田樹(読書日記)

先日妹と一緒に行ったブックマルシェにて、生まれて初めて「人の日記」を買った。しかも、書いた本人から直接。(照) 著者の守田樹(もりた)さんのことは1ヶ月くらい前から知っていた。 noteに登録する前「noteってどんな感じで使われるんだろ」とアクセスしてみた時に、もりたさんが書いた「24歳のエチュード」を拝読したのだ。 感動の余韻のまま、私もnoteに登録した。 そのもりたさんが偶然にも私の住んでいる名古屋で日記を売るなんて、驚き桃の木山椒の木。 しかもそのブックマルシェ

異国にないものねだり|「あかねさす柘榴の都」福浪優子(読書日記)

衣替えをした。ついに夏が終わってしまったな、と思う。 今年の夏、私は「スペインかぶれ」になってました。肌をプールでこんがり焼いて陽気な音楽で踊り、オリーブオイルたっぷりの食生活をする。「Salud‼︎」と乾杯。 なんでそんなことになっていたのかというと、このマンガを読んだからです。 両親を亡くした少年・夏樹がスペイン人の叔母・アルバに引きとられ、スペインのグラナダで暮らす日常のお話。 グラナダはアンダルシア地方の土地。白い壁の石造建築の壁はカラフルなお皿や赤い花で飾られ、

アベンジャーズによる短編集だよね?|「チーズと塩と豆と」角田光代・井上荒野・森絵都・江國香織(読書日記)

いつ買ったのか思い出せないほど長らく積んでいたこの本を読んだら、とても素晴らしく余韻に浸っている。 角田光代さん・井上荒野さん・森絵都さん・江國香織さん、それぞれがヨーロッパの国々を訪れて書いた短編小説のアンソロジーなのだけど、待って豪華すぎ。こんなのさ、作家界のアベンジャーズじゃん。素敵が桁チ(桁違い)じゃん。 角田光代さんは、「スペインのバスク」にて。 故郷を離れて旅する料理人となった女性のライフワークと家族のお話。 トップバッターの作品なのだけど、私はこの時点で胸がい

自分の時間、信じられるかい?|「スター」朝井リョウ(読書日記)

またしても、朝井先生にボコボコにされました。抉られつつも読む手は止まらない。 「スター」は新人登竜門と言われる映画祭で賞を受賞した2人の大学生、尚真と絋が「巨匠の弟子」と「YouTuber」っていう両端の進路に進んで、挫折・困難・努力・葛藤てんこ盛りの日々を生き抜いていく成長の話。 言ってることが手厳しくて、でもその通りで。 私も映像業界に勤めていて辞めた経験があるから、他人事と思えなくて2人の状況への純粋な共感で泣いた。 私は大学時代、映像専攻で作品を作っていた。映画、

唐代SFってなんなのじゃ|「長安ラッパー李白」大恵和実編(読書日記)

唐代を舞台にしたSF短編小説のアンソロジー。漢詩って上等なラップだなあと常々思っていたので、本屋さんでタイトル買い。漢詩、最近興味を持っているトピックス。 素直な感想、私には難解すぎた!こんなに読むのに時間がかかった本は久しぶり。4日くらいでなんとか読み終えたけど、一晩寝たらどんな話だったのか分からなくなってしもうた。😭 この本自体は、熱と愛の詰まった大作だと思う。それは伝わりました。私が未熟であった。 ところどころ面白かったポイントはあったので、断片的で恐縮ながら書きます

妄想世界の歩き方|「悶絶スパイラル」三浦しをん(読書日記)

2012年の三浦しをんさんの日常を綴ったエッセイ。私が最後に読んだのが2014年(高2)だったので、10年ぶりの再読。『悶絶スパイラル』 このエッセイにはしをんさんがハマったマンガの話がいーっぱい出てくるんだけど、名作マンガはずっと色褪せないね。10年以上も前のエッセイでもリアルタイムで話しているかのように「うんうんうんまじそれな!!!」相槌を打ちまくり。 この頃しをんさんは「ジョジョの奇妙な冒険」に出会っていて、ジョジョ愛(特に露伴先生への愛)を爆発させてる。私にとったら

はじめてミステリ|「わたしたちの帽子」高楼方子・出久根育(読書日記)

忘れられないタイトルの児童書がある。でも、話の結末がどうだったか思い出せない。ところどころなら覚えているのだけど。「怖いけど綺麗で、どきどきした」っていう小学生の時のまま止まった感想を更新すべく、その本を読んでみることにした。タイトルは、『わたしたちの帽子』高楼方子(作)・出久根育(絵) 遠い思い出の本だけど、Amazonで頼めば次の日には私の手の中。Amazon無しの生活は考えられないです。ありがとう。 はー、こんな話だったのか。面白かった! 1ヶ月間だけ住むことになっ

気持ちの箱と鍵|「デッドエンドの思い出」よしもとばなな(読書日記)

この本が存在しているのは、奇跡だと思う。 ばななさんの描く話はどれも信じられないくらいにいいけど、デッドエンドの思い出は特に特別だ。 無数の要素が絶頂期に入った一瞬のその瞬間を箸で摘んだがごとく、とにかく奇跡だって言わせてほしい。 「デットエンドの思い出」は、五編の短編小説だ。日常に起こりうる範囲の辛いことや悲しいことが起こる。 別れが決まっている人と恋が始まってしまうとか、子供の頃に友達と別れたこととか、身体に悪いものを摂取してしまって体調が悪いとか、婚約破棄とか。 ほん

小学生が週間連載を買うの無理ゲー|「MAJOR」満田拓也(読書日記)

あなた世代の王道スポーツマンガといえばなんですか?私は断然「MAJOR」です! 天性のセンスを持つ主人公、茂野吾郎(しげのごろう)の野球人生が描かれた作品で「幼稚園時代」「三船リトル(小学生)時代」「三船東中時代」「海堂学園高校時代」「聖秀学園高校時代」「メンフィスバッツ(マイナーリーグ)時代」「W杯日本代表時代」「インディアナホーネッツ(メジャーリーグ)時代」「日本プロ野球時代」って部が分けられていることからも分かるように、吾郎はずーっと野球に魂燃やして生きている。 彼の