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2019.12.14 赤松隆一郎ソロLIVE「実験」@スタジオOWL

【ネタバレ注意】記事の最後にセットリストを載せています。

赤松さんご本人からMessengerでライブのおさそいがきたのが、12月に入ってすぐのこと。
(Facebookで相互フォローしているので)
ライブでのMCによると、こうした告知や宣伝活動を、今回は完全に赤松さんおひとりでこなしていたのだそう。

「ライブのチラシあったでしょ?あれもぼくがパソコンで作ったんです。ガイドラインになる線を引いて、さて消そうとしたら何をどうやっても消えなくて、それどころか余計な線までできちゃうし…でも締切が迫っていたんで『もういい!これでいいや!』って、その線がついたまま完成ってことにしたんです(笑)。ふだんどれだけまわりの人たちに支えられているか、よーくわかりました」

いつもはステージの左右に、イケメンギタリスト(赤松さん談)の井上央一さんと、リーダーのカンガルーがいるスリーピースユニット「アンチモン」として活動している赤松さん。
毎年春の恒例行事になった、松山市興居島でのイベント「しまのプールごごしま」の主催者でもあり、サントリー「GREEN DA・KA・RA」のCM曲や、お笑い芸人・和牛が出演する愛媛県観光PR曲「疲れたら、愛媛。」の作者としても知られています。

その赤松さんが、キャリア初のソロライブをおこなうというのです。
開演前に配布されたアンケート用紙には、赤松さんからの挨拶がこうはじまっていました。

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そしてライブ中には、こんな話も。

「いつもは井上くん(とリーダー)が助けてくれるけど、いつまでも頼りっぱなしというわけにはいかない。自分ひとりだけで、もっと身軽に、歌いたい曲をいつでもどこでも歌えるようにならなきゃいけない」

「実験」と題されたこの初ソロライブ、タイトルどおりさまざまな実験がおこなわれました。

① 未発表新曲の発表

いきなりオープニングで、観客のだれも知らない、できたての新曲から。
「どうしても新曲からはじめたかった」と赤松さん。

♪言いたいことが言えるか 自分の言葉で言えるか
 試すんだ 試すんだ さあ行こう

たしかこんな歌詞だったとおもいます。
未知の領域へと踏み出した自身を鼓舞するような。

その一曲だけではなく、まだ曲名もついていない楽曲を、さらに連発していきます。
会場のピアノを弾き語りした(13)は、
「こんな歌を書くつもりじゃなかったのに、気がついたらこんな曲になっていた」そう。
アコギにもどっての(16)は、匿名の罵詈雑言が飛び交うSNSを皮肉るような、辛辣な内容。

② アンチモンでめったに歌わない楽曲を演奏

ソロライブとはいえ、アンチモンのライブでおなじみの楽曲ももちろん歌われました。
が、これまであまりライブではとりあげられなかった楽曲のインパクトが強かった印象です。
わけても(5)〜(6)の、本人いわく「きょう2番目に暗いセクション」の2曲。

「3.11のあとに書いた曲です。原子力発電所のことをスルーできなくなって『お前はどっちなんだ?』と。ハッキリ意思表明をしなければならないと思って書きました」

広告業界(電通)のクリエイティブ・ディレクターでもある立場で、原発に「さようなら」と告げるこの曲を歌い、作品として世の中に出すというのは、相当なプレッシャーがあったのではないでしょうか。

「どのミュージシャンにも、メッセージ性の強い曲、大切な曲というのがあると思うんです。この曲は、まず自分の名前で、自分が責任を背負って歌うべきだと思いました」

③ カバー曲を披露

「ソロの人はカバーをするものだと思って」中盤にカバー曲コーナーがもうけられました。
(7)は、ソロライブを構想した際に、どうしても歌いたかった曲だそうで。
なるほど、ハスキーな歌声がよくマッチしています。

赤松さん「大沢誉志幸さん、このスタジオOWLにもライブで来てるんですって?」
店長さん「3回。この曲も歌いました」

そこからハーモニカホルダーをセットして次の曲へ…と、

「長渕っぽいでしょ?(笑)♪かたい絆に想いをよせて〜」

一発ネタ的にモノマネで「乾杯」を歌い出したところ、これが大好評。Aメロで終わろうとしたら、

「えっ、歌ったほうがいい?」
「モノマネやめていいですか?」
「2番の歌詞がアヤしいぞ〜。歌える人は歌ってー!」

コードをさぐりさぐり、途中をラララ〜でごまかしながらも、なんとか最後まで歌いきったのでした。

「歌いたかった曲は違います(笑)。カバー曲を何にしようか上司に訊いてみたら『竹原ピストルとか、どう?』と。予想外だったんですが、曲を聴いてみたらすごくいいブルースですね。ただ、ぼくはあんなに首がガッシリしてるわけじゃないんで…『竹原ピストル』じゃなくて『赤松水鉄砲』みたいな(笑)」

後半にはさらに、原田知世さんに提供した「コトバドリ」のセルフカバーも。
好きな人どうしが音楽でつながるのって、ファンとしては本当にうれしくなりますね。

④ 歌が生まれる瞬間に遭遇

途中休憩をはさんでの2部構成、アンコールなし。
その最後の曲は、まだ一部の歌詞が完成していないままの新曲。

「中途半端なかたちで終わることになったら、ごめんなさい」と告げてからの演奏は、アコギをそっと爪弾きながらはじまり、そしてしばらくしたところでフッ…と音が途切れました。

完全な無音。
なにかをつかもうとするように、虚空を見つめる赤松さん。
誰も何も言わず、物音もたてず、この先どうなるのか、固唾を飲んでステージを凝視しています。

長い長い(と体感したけれど、実際には数秒だったのかもしれない)沈黙のあと、

♪世界は 広いよ この世と あの世と

「…ああそうか、あの世か」

このとき、ぼくたちは、歌が生まれる瞬間を目の当たりにしたのです。
感動とも興奮とも形容できない、とにかく「すごいものを見た」としか言えない一瞬。

♪またね どこかでね またね 会おうね

いつかこの曲も、CDや配信で手もとにとどく日が来るのでしょうが、あの日あのときの感覚は二度とは体感できないものでしょう。
来てよかった。
この「実験」に立ち会うことができて本当によかったと、心から思います。

⑤ 投げ銭制度

入場料500円+1drink以外は、出口の箱に好きな金額を入れる(入れなくてもよい)投げ銭ライブ。
$マークが書かれた(下に「円建てでお願いします」と手書き)箱に投げ銭を入れ、最後にお見送りに立つ赤松さんと握手し、会場をあとにしました。

終わってみればおよそ3時間という長いライブでしたが、充実の内容でした。
つぎは、しまのプールで会いましょう…あっ、高野寛さんのときとオチが一緒…。


【セットリスト】

1 新しい靴(新曲)
2 青い月
3 しとらす
4 空中庭園
5 さようならゲンちゃん
6 生きる
7 そして僕は途方に暮れる
8 乾杯
9 ゴミ箱から、ブルース
10 暗闇にまぎれて
11 疲れたら、愛媛。
(休憩)
12 銀河フィラメント
13 (新曲)
14 あなたが好き
15 コトバドリ
16 (新曲)
17 好きでたまらない
18 恋のうた
19 トンネルを抜けるんだ
20 君であれ
21 ギフト
22 (新曲)

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