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「パーマン」と「スパイダーマン」


とある映画監督が藤子・F・不二雄が好きですと答えていて、注目したのだが、その後インタビュアーが、「ドラえもんですか?」と重ねて質問し、その監督は「パーマンです」と即答したことがとても強く印象に残った。

そうそう、と心から共感した次第。

藤子マンガといえば「ドラえもん」と決めつけてしまう人はとても多く、それはそれで理解できるが、そればかりではない、という気持ちの方が大きい。

ドラえもんは、傑作エピソードだらけの作品だが、作品全体として一番好きなのは?と聞かれれば、僕も「パーマン」と答えてしまう。

「パーマン」の作品としての魅力は、何でもない少年が、突如超能力を与えられ、私欲とぶつかりながらも社会的使命を果たしていくという、実は優れたヒーローものの構造をしっかりと確立している点にある。

しかもそれでいて、日常の範囲から離れず、ズッコケヒーローのギャグ漫画としても十分に堪能できる。正義とギャグのバランスがとても良いのだ。

「パーマン」の名前は当然「スーパーマン」の存在があって、「スー」が抜けて「パーマン」となる。つまり、スーパーマンではない、ちょっと間が抜けている、未熟である、という意味合いが込められている。

「パーマン」の魅力は、その未熟さにあると言っていい。不完全な人間が、時に力に溺れ、時に正義感に目覚め、時にヒーローであることに嫌気を差す。そうした、一直線に進めない弱さみたいなものが、とても魅力的だし等身大で、読者の自己投影も呼ぶのだと思う。

未熟なヒーローという観点から、「パーマン」はその名の由来となる「スーパーマン」ではなく、僕は「スパイダーマン」に近いキャラクターであると考えている。

「スパイダーマン」は、原作ではお調子者で、不完全で、失敗もすれば、時にやる気も失う。ヒーローである自分と、普通の男の子である自分自身とのギャップに悩む。そう、悩めるヒーローなのだ。

サム・ライミ監督の映画「スパイダーマン」を見たとき、ああ、これは「パーマン」だと強く思った。愛する人(MJ)と正義を天秤にかけて、最後は孤高のヒーローである自分を選択する。力を持つものは、その力を正義に使わなくてはならないのである。

ちなみに、このスパイダーマンと同様のテーマを描いた話に、「パーマンはつらいよ」や「かなしい勝利」などがある。これら傑作はいずれ【考察】していきたいと思います。

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