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F先生亡き後の「大長編ドラえもん」まとめ

藤子F先生のライフワークとなった「大長編ドラえもん」。「のび太の恐竜」を皮切りに16作執筆され、17作目「のび太のねじ巻き都市(シティー)冒険記」の冒頭数ページを執筆して絶筆された。

何とかF先生の遺された創作メモなどを参考にして、藤子プロの作家の方々の手によって、「のび太のねじ巻き都市(シティー)冒険記」は無事完成にこぎ着けた。この作業は途方もないご苦労があったことと思い、心から尊敬の意を表したい。

そして問題は、その翌年から、「ドラえもん」の映画をどのように継続させていくのか、ということである。

当然ながら、原作は放っておいたらもう生まれてこない。何とかして、F先生の過去作などからネタを見つけ出して、「大長編」のボリュームにして、それを毎年製作していかなくてはならない。これまた途方に暮れる作業が予測された。

以下、具体的に作られた作品を列記していきたい。奮闘の歴史が良くわかることと思う。また簡単な感想も付記していくが、正直公開時に一回しか観てない作品ばかりなので、ほとんどが印象論に留まっていることを謝っておきたい。

なお、F作品を愛するが故に辛口となっている部分もあるが、それもご容赦願いたい。

大長編18作目・映画19作目(1998年公開)
「ドラえもん のび太の南海大冒険」
1980年発表の「南海の大ぼうけん」と1981年発表の「無人島の大怪物」を組み合わせて、「宝島」をテーマにした素晴らしい作品。
映画20作目(1999年公開)
「ドラえもん のび太の宇宙漂流記」
1979年発表の「宇宙探検すごろく」から着想を得たと思われる宇宙冒険もの。
映画21作目(2000年公開)
「ドラえもん のび太の太陽王伝説」
F先生が好きだったマヤ文明らしき世界が舞台。思い切ってマヤ文明とかアステカ文明としてもらった方が良かったが、F先生も書いたかもしれないモチーフの作品は見ていて嬉しい気持ちになってくる。
映画22作目(2001年公開)
「ドラえもん のび太と翼の勇者たち」
鳥が進化を遂げた鳥たちの楽園・バードビアが舞台。犬が進化した「大魔境」恐竜が進化した「竜の騎士」の系譜に連なるアイディアで、これも苦心の跡が伺える。
映画23作目(2002年公開)
「ドラえもん のび太とロボット王国(キングダム)」
ロボットの世界を舞台に、人間とロボットの共生をテーマとした冒険もの。正直良く覚えてないが…「鉄人兵団」や「ブリキの迷宮(ラビリンス)」などで使い古されたネタだなあと思ったりもした。
映画24作目(2003年公開)
「ドラえもん のび太とふしぎ風使い」
「台風のフー子」をモチーフに、風の国を舞台としている。魔境の国チベットをイメージした世界観。同時上映のパーマンの方を期待して見に行ったが、こちらは満足して、パーマンが不満だった記憶がある。
映画25作目(2004年公開)
『ドラえもん のび太のワンニャン時空伝』
1980年発表の「のら犬「イチ」の国」を広げた作品。大山版最後の映画となった。泣かせに行ったところがあまり泣けず、という印象。

この作品をもって、大山のぶ代さんたちによる大長編は、終了となった。

映画26作目(2006年公開)
『ドラえもん のび太の恐竜2006』
声優も作画も大リニューアル、前作から一年空いての新作公開で、初めてのリメイク作品。声はともかく、絵柄がぐにゃぐにゃする作画が見慣れなったことや、大好きな「のび太の恐竜」の重要な冒険部分がダイジェスト化されていることに腹を立てて、あまりいい思い出がない。主題歌は最近までカラオケで歌っていたが…。
映画27作目(2007年公開)
『ドラえもん のび太の新魔界大冒険 〜7人の魔法使い〜』
リメイク第二弾。オリジナルは、大長編シリーズ史上屈指の傑作と考えているので、最初から見るのは気が進まなかったが、やはり駄目だった。特に新要素となる美夜子の母親エピソードが、久本さんの声質含めて、全く受け入れられなかった。
映画28作目(2008年公開)
『ドラえもん のび太と緑の巨人伝』
新声優で初めてのオリジナル作品。1984年発表の「さらばキー坊」を原案として話を広げている。アイディア自体はF先生の世界観を踏襲した素晴らしいものと思っているが、全体的にはあまり印象がない。
映画29作目(2009年公開)
『ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史』
リメイク第三弾。新魔界大冒険と同じく真保裕一氏の脚本である点が非常に気に掛かっていたが、本作もオリジナルキャラについては要らないと思っている。しかし、ラストの対決シーンは、逆に原作寄りで映画のオリジナル版の改変されたラストよりも抜群にこちらが好み。その意味で初めてリメイクで納得できた作品であった。
映画30作目(2010年公開)
『ドラえもん のび太の人魚大海戦』
真保裕一氏が手掛ける初めてのオリジナル脚本。海が舞台と聞いて「海底鬼岩城」のリメイクを期待したが、人魚をテーマとしたオリジナル作品だった。テーマの選び方は良く考えられていると感心したが、お話はまずまずの印象。
映画31作目(2011年公開)
『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜』
リメイク第四弾。リメイクのお約束となりつつある新キャラクターとして、ザンダクロスの頭脳をキャラクター化させたピッポが登場。このアイディアの是非はともかく、キャッチーなキャラを追加したために、オリジナルで抜群のいい味を出していたミクロスのキャラが萎んでしまった点が残念。
映画32作目(2012年公開)
『ドラえもん のび太と奇跡の島 〜アニマル アドベンチャー〜』
1978年発表の中編「モアよドードーよ、永遠に」をベースに発展させたお話で、絶滅危惧種に焦点を当てたFワールドがきちんと描けているオリジナル作品、という印象。
映画33作目(2013年公開)
『ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』
未来の博物館を舞台に、ひみつ道具に焦点当てた作品で、良くこのようなアイディアが出せたものだと感心した次第。ただし、F先生が生前「大長編」では未来を舞台にしない、というようなことを言っていた記憶があるので、そのことが気になりあまり楽しめなかった。
映画34作目(2014年公開)
『ドラえもん 新・のび太の大魔境 〜ペコと5人の探検隊〜』
リメイク第五弾。リメイクの定番化しつつあったオリジナルキャラクターの挿入が控えられ、原作に忠実のイメージ。

この年の夏に「STAND BY ME ドラえもん」が公開され、年二本のドラえもんが楽しめる年となった。ただし、番外扱いとして今回は特に触れない。

映画35作目(2015年公開)
『ドラえもん のび太の宇宙英雄記』
宇宙を舞台に、ヒーローもの、戦隊ものをモチーフにした作品。戦隊シリーズを取り上げている点は評価しつつ、また宇宙か…という印象を持ってしまった。
映画36作目(2016年公開)
『ドラえもん 新・のび太の日本誕生』
リメイク第六弾。原作を忠実に再現することを心掛けている印象で、何度見ても面白い仕上がりとなっている良作であった。ラストの別れのシーンがややくどいか?
映画37作目(2017年公開)
『ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』
F先生が手付かずだった南極を舞台にした点、時系列の伏線を取り入れた脚本、スピード感のある演出など、これまでの数あるオリジナル作品としてはこの時点での最高傑作だという認識。
映画38作目(2018年公開)
『ドラえもん のび太の宝島』
F先生を尊敬するという川村元気氏のオリジナル脚本。宝島は、F先生が大好きだった冒険小説だったし、F先生が敬愛する手塚治虫の「新宝島」が漫画のバイブルだった。その意味で、最も藤子先生の意思を継いだ作品を期待したのだが…。正直僕はこの作品はあまり認めていない。出てくるひみつ道具などは感心するものもあったが、宝島での冒険、という部分は一切なく、タイトル負けしている。さらに安直な涙を誘う脚本と演出が苦手である。特にパパとの親子愛の要素が加えられているが、ドラには不要なのではと思った。
映画39作目(2019年公開)
『ドラえもん のび太の月面探査記』
これまたF先生を尊敬して止まないという 辻村深月氏のオリジナル脚本。こちらは前年と打って変わって、F魂の本物の継承者として、過去最高傑作を更新した作品だと考えている。F先生の思いが詰まった「異説クラブメンバーズバッジ」を使い、しかも初めての「月面」を舞台とした作品で、設定・脚本が緻密。公開時しか見ていないので、もう一回きちんと見てみたくなった。
映画40作目(2020年公開)
『ドラえもん のび太の新恐竜』
コロナ禍で上映が延期され、夏休みでの公開となった。コロナを気にかけつつ、初めて息子と見たドラえもんの映画となった。「宝島」で乗れなかった川村氏の脚本と聞いて身構えていたが、今回もやはり駄目だった。新しい恐竜の物語とのことだったが、恐竜が鳥に進化したという新説を踏まえている点以外、「のび太の恐竜」「のび太と竜の騎士」から良いとこどりした脚本というイメージで、セリフなどもそのまま使用している点も大いに気になった。リメイクではないという位置付けかと思っていただけに残念。

この冬に公開となった「STAND BY ME ドラえもん 2」はやはり除外。

映画41作目、リメイク第7弾となる『ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』は、残念ながら公開延期。おそらく昨年同様、夏の公開となることが予想される。信頼できる監督・脚本家さんの作品であることと、予告編から伝わってくる様子から、傑作の匂いがする。


さて、F先生亡き後の、劇場版ドラえもんについて、各作品ざっと列記してきた。出来栄えには作品ごとに雲泥の差が存在する。F作品が偉大なために、どうしても満足のいくオリジナルを作ることは、そもそも困難なことなのである。

いざオリジナルを考えた時に、また劇場版で扱っていない舞台やモチーフもあまり残っていないように思う。リメイクも「海底鬼岩城」以外は使い果たした。今後も大長編ドラえもんが続くためには、クリエイターたちの奮闘に期待するしかなさそうだ。

今後、機会があれば、Fマニア視点から、大長編のアイディアを書いてみたいと思います。批判するなら、自分もアイディア出さないとね。。

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