【マーラー交響曲第2番《復活》③】第2から4楽章までざっくり一気に解説!!
こんにちは!ハモンドオルガンちゃんです!
今回は
について一挙にざっくり解説していきます!
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間奏曲としての第2, 3, 4楽章
《復活》の「英雄が死に怒りの日の審判を経て復活」というストーリーの大枠は第1楽章と第5楽章で出来上がっています。第2, 3, 4楽章は両楽章の間でストーリーを彩る間奏曲です。
それぞれの楽章について見ていきましょう。
第2楽章 青春なあの頃の回想
第2楽章についてマーラーは
と言っています。
”過去の幸福”とはなんのことを言っているのでしょうか?
マーラーは、次のように言っています。
「第2楽章は思い出です!この英雄の人生の、純粋で曇りのない真昼、
はるか以前に過ぎ去ってしまった幸福な時の光景です。」
マラ2の中で、第2楽章は(時折シリアスな場面はあるものの)全体的にほのかに明るく夢見がちな雰囲気で、他楽章と比べて異質な印象を受けます。
マーラーはこのようにも言っています。
マーラーは第1番《巨人》で、
"若者の悩みと葛藤(≒主にマーラー自身の失恋,恋の悩み)"
を描きました。《復活》第2楽章はそんな頃に想いを馳せている曲なわけです。この第2楽章からも、《巨人》と《復活》が裏でストーリーが繋がっていることが分かります。
皆さんも青春の甘酸っぱい思い出、たくさん(?)お持ちですよね(^^)
ぜひ冒頭のメヌエットはそんな"ずっぱい想い出"に浸りながら大好きだったアノ人に想いを馳せみてはいかがでしょうか笑
《復活》と歌曲《子供の不思議な角笛》
マーラーは歌曲か交響曲しか発表していない珍しいタイプの作曲家です。
マラ2 は、マラ3, マラ4と一括りで『角笛3部作』(以下、『3部作』)と呼ばれることがあります。これは3曲の中に、マーラーの歌曲《子供の不思議な角笛(Des Knaben Wunderhorn)》(以下、《角笛》)から声楽の歌詞や曲が引用されているからです。マーラーは詩人アルニムとブレンターノがドイツの里謡・童謡を編纂した同名の詩集『子供の不思議な角笛』に非常に強い影響を受けていました。
マラ2《復活》では、この歌曲集《角笛》の中から
の曲がほぼそのまま引用(転用)されています。
第3楽章と『魚に説教するパドバの聖アントニウス』
おもしろいですね〜笑
他にも詩がある中で『角笛』の中からこのブラック・ユーモア的な話の詩を選ぶのがマーラーらしいというか笑
ちなみに第3楽章はスケルツォ楽章。「スケルツォScherzo」はイタリア語で「冗談, いたずら」を意味しますから、ブラック・ユーモア的な『魚』はこの第3楽章のコンセプトにピッタリと合致しています。
対訳をしているサイトを貼っておきます。ぜひ読んでみて下さい。
魚に説教するパドバの聖アントニウス 対訳
《子供の不思議な角笛》より『魚に説教するパドバの聖アントニウス
《復活》より第3楽章
第4楽章と『原光Urlicht』
『原光』は、初期の出版時には《角笛》に含まれていましたが後に削除され《復活》第4楽章にそのまま転用されています。
現在も《角笛》には入れずに演奏されることが多いようです。
《子供の不思議な角笛》より『原光』
《復活》より第4楽章『原光』
第3楽章を更に深堀り!!
3楽章のキーワードは
です。
第3楽章についてマーラーは
と言っています。
レントラー Ländler
第3楽章はレントラーという舞曲を使って構成されています。
レントラー とは、ドイツ・オーストリア・スイスあたりの田舎のウィンナ・ワルツだというイメージです。「田舎の」ウィンナ・ワルツなので、都会のウィンナワルツよりももっと拍子にクセがあるイメージです。言葉で例えると標準語に対して田舎なまりがあるのを想像して頂くといいかもしれません。レントラーはブルックナーなんかもスケルツォに好んで使っていますね。
レントラーのイメージをつかむために、サウンド・オブ・ミュージックのマリアとトラップ大佐のレントラーを参考に貼っておきます。若干拍子にクセがあるのがわかるでしょうか。ウィンナワルツの1種なのでマリアが1人で踊っている時にスカートがブワッと広がっているイメージも大事にしたいところです。
ちなみに、サウンド・オブ・ミュージックの舞台もオーストリアの田舎です。
マーラーはこのレントラーがとても好きで他の曲でもよく使っています。
有名なところでは、《巨人》(4楽章版)の第2楽章がそうですね。
《巨人》第2楽章を聴いて、マラ2第3楽章と似ていると思いませんか?
そう、実はこの2曲、ルーツが同じなんです。
どちらとも、マーラーのお友達ハンス・ロットHans Rottの交響曲第1番第3楽章が元ネタでそこから引用されています。
《巨人》(4楽章版) 第2楽章
《復活》第3楽章
ハンス・ロット Hans Rott
ハンス・ロットは、ウィーン音楽院時代のマーラーの学友でブルックナーの弟子です。才能に溢れていましたが、その才能はマーラーやブルックナー以外の音楽家には認められませんでした。特にブラームスには酷評され、精神を病んでしまいます。作曲家を諦め音楽教師として赴任先へ旅立とうとするその日に
「ブラームスが汽車に爆弾を仕掛けた!!」
という妄想を騒ぎ立て、精神病院に収容されます。
最期は失意の中、25歳で夭逝した悲劇の作曲家です。マーラーとは下宿で同居していたこともあります。
ロットは、交響曲第1番の全曲を1880年に書き上げました。マーラーが交響曲第1番《巨人》の初稿を書き上げたのが1888年ですから、8年も前のことです!!
マーラーは次のように言っています。
ロットの才能を絶賛しています。
マーラーはどれだけ酷評されようが、不屈の精神で逆境を乗り越えてきたのに対し、ロットは酷評で心が壊れてしまうほど非常にナイーブな青年でした。対照的な2人がお互いに才能を認めあっていたというのはとても微笑ましいですし、もっとこのロットの曲をたくさん聴いてみたかったという想いが止まりません。いつになっても目頭がアツくなってしまう…。
マーラーを聴くならハンス・ロットは絶対に聴いておきましょう!!
聴けば分かります。
ハンス・ロット 交響曲第1番 ホ長調
(第3楽章は22:10あたりから)
BISレーベルはいいぞ!!
今年12月10日・11日に川瀬賢太郎×名古屋フィルでこの曲をやります。
お近くの方はぜひ聴きに行きましょう!!!
まとめ
今回は第2楽章から第4楽章までを一気に解説しました!
第2楽章で《巨人》とのつながりを感じられたり、『角笛三部作』と言われるように第3楽章・第4楽章で《子供の不思議な角笛》からの転用が見られたりなど、第1楽章・第5楽章に負けず劣らずの内容の濃さでしたね。
ハモンドオルガンちゃん的にはやっぱり『魚に説教するパドバの聖アントニウス』が好きすぎます笑
次回は第4楽章『原光Urlicht』をさらに深堀りして、楽曲分析編へと入っていきます!!
本日の一枚
不定期でおすすめの参考音源を載せていますが、《巨人》のハンブルク稿(5楽章版)は聴いておきましょう。ヘンゲルブロック×NDRのハンブルク稿は結構名盤だと思います。
他に、若杉弘×都響の1989年のライブ盤(1991年発売)もおすすめです。廃盤なので図書館などで探しましょう。
参考サイト
国際ハンスロット協会
確かハンス・ロットの曲だいつ・どこで演奏されるかの情報も見れたと思います。
ハンスロットwikipedia
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