あ_五十音_

「あ」あそびをしてみむとて、するなり。

暇なとき、昔からよくする遊びのようなものがある。それは、「五十音順にする」というルールだけがある遊び。大抵は五十音順に名前をつけていく、といったようなものなんだけど。

中でも記憶に残っているのは、ゲームボーイのソフト「ハムスターパラダイス3」「ハムスターパラダイス4」で育てるハムスターにつける名前を、延々と「あ」で始まるものから順に考えていたこと。ほんと、何が楽しいのかと問われてしまうと、特に面白さが見つからないので他人に説明はできないんだけど、結構いい暇つぶしにはなるのだ。

今わたしは体調がダメで実家にいるんだけど、まあ暇で。かと言って東京に戻って大学に通うだけの力はなく。なんとなく文章書きたいな、でも書くことが特にないなって思っていた中で思い出したのが、この遊び。なんでも五十音順に書く遊び。

飽きるまで気ままにやってみようかなと思う。そんなに頭使わなくてもできるから、疲れすぎないし。特に意味がないことを思ったままに書くのも楽しいでしょう。

あ、といえば、「あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む」という短歌を思いだす。柿本人麿の歌で、百人一首に収録されているもの。小学6年?くらいのとき、毎朝百人一首の暗記ゲームみたいなものを担任がやっていたので、何かにつけて百人一首は思い出される。

多分ちょうどこのくらいの季節の短歌なんだろう。山鳥のしだれた尾のようにとてもとても長い夜を、今日もひとりで寝るのだろうか、という歌(だと思う)。昔の人はなんでこう、五七五七七に気持ちをうまくのせられるのだろう。いや、昔の人もすごいけど、これに通じる感性を今も保持しているわたしたちも十分すごい、と思う。

なんだろう、この「長い夜」と「ひとり」「寝る」ということのもの寂しさみたいなものは。それに合う季節はやっぱり秋だと思うし、こういう感性はどこで身につけてきたのだろう。「秋の夜長をなき通す ああ美しい 虫の声」とか、そういう歌を幼稚園で歌った時に「あー秋は長いんだな」とか思ったのだろうか。偶然にも、秋の頭文字も「あ」。

秋はきらいじゃない。寒いのはそんなに好きじゃないけど、かと言って嫌いでもない。肩はこるけど、長袖は落ち着く。

「あ」。「あそび」「秋」「アイスクリーム」「飴」「アリ」「あん」「アップル」。さくっと出てくるものばかり並べたけれど、嫌いなものがでてこない。でてくる言葉のレベルが小学生みたいなことはおいといて。「あ」で始まるものに嫌いなものがないのか、それとも人は何かを思い出すときに、嫌いなものより好きなものから思い出すものなのか。

「あ」。「味気ない」「ありきたりな」「合図」。おお、なんか小説のお題とかに出てきそうな言葉ができた。「味気ない、ありきたりな、合図。」

「あ」。「悪」「網」「圧」、ああ、「暑い」なんかも「あ」から始まるのか。「赤い」も。もしわたしに子供がいたら、「赤」という言葉はもっと早くに思い浮かんだのかもしれない。

結構この遊びは面白い予感がする。読んでる側としてはどうなのかわからないけど、書いてるわたしは面白い。あまり普段やらない引き出しの引っ張り方、言葉の虫干し。気が向いたときに、しばらくやってみようと思う。(20分、1329字)

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