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労働保険(労災+雇用)・社会保険の加入表

<こんにちは>

こんにちは。社会保険労務士法人シグナル 代表 有馬美帆(@sharoushisignal)です。

以前Twitterに投稿した、労働保険・社会保険の加入に関する表が、悩みに悩んだ末に完成しました!



社会保険労務士として多くの人事労務担当者の方々とお話させていただいた経験から、労働保険・社会保険の加入について「ここはぜひ再確認しておいていただきたい」という点についてお伝えします。

今回は、これまでお受けしたご質問の数々の中から問題を作ってみました。例えば、以下のような働き方をする人は、労働保険や社会保険の加入についてどうすれば良いでしょうか。最後に答え合わせをしますので、ぜひ考えながら読み進めてください。

問題① アルバイト従業員から「通勤途中に階段を踏み外して骨折してしまったのですが、何か受けられますか」と質問が来ました。
どのように回答すれば良いでしょうか?

問題② パートタイマー従業員から「配偶者の会社から、収入が多いから配偶者の社会保険上の扶養対象から抜けるよう連絡がありました。会社で、社会保険に入る手続きをしてください」という依頼が来ました。
どのように回答すれば良いでしょうか?

note本文用表①10.27労働保険社会保険の加入表


<労災保険とは?>

この記事と表のタイトルに「労働保険」と入れていますが、労働保険とは、労働者災害補償保険(以下「労災保険」といいます)と雇用保険のことを指しています。
労災保険は、原則、全労働者が適用になります (例外的に同居の親族など対象にならない場合もあります)。そのため、後述する雇用保険や社会保険のように資格取得や喪失に関する手続きを行いません。
また、昨今、在宅にて勤務されている労働者もいらっしゃると思いますが、在宅であっても、「業務上の」けがや疾病であれば、労災保険の給付を受けられます。


<雇用保険>

雇用保険の加入対象となるための要件について、第一に覚えておいていただきたいのは、所定労働時間が週20時間以上の労働者であることです。
他の要件としては、31日以上引き続き雇用されることが見込まれることや昼間学生ではないこと等があります。
大阪労働局のサイトが、労災保険との比較や海外派遣者までも区別して表にしてあり、大変分かりやすいのでぜひご覧ください。


<社会保険>

「社会保険」という用語は広い意味(広義)と狭い意味(狭義)の2つの使われ方をしているため、わかりにくい面があります。

広義の社会保険=労働保険(労災保険・雇用保険)+狭義の社会保険
狭義の社会保険=健康保険・厚生年金保険・介護保険

「広義の社会保険」とは「働けなくなったとき」のリスクに備える制度の総称なのです。労災保険は業務上のけがや病気、雇用保険は失業など、健康保険は業務外のけがや病気、厚生年金保険は高齢になったとき、介護保険は介護が必要になったときで、主に「働けなくなったとき」に対処するためのものですよね。

この「働けなくなったとき」は、「労働」に関係するものか否かで、さらに2つに分けることができます。労災保険と雇用保険はどちらも「労働」を直接の原因として、そこから離れなければいけない場合のリスクに備える保険ですよね。ですので、合わせて「労働保険」と呼ばれるのです。それに対して、健康保険と厚生年金保険は、基本的には 私生活のアクシデントや、高齢になって引退した後の生活に備えたものですので、区別されて「狭義の社会保険」と呼ばれているのです。


通常、人事労務の世界で「社会保険」といえば「狭義の社会保険」のことを指します。たとえば、社会保険加入問題といえば、健康保険や厚生保険(さらには介護保険)に加入すべきなのに、そうしていない場合を意味します。ここから先の社会保険に関する説明は、特に説明がなければ狭い方の意味についてのものになりますので、お気をつけください。


社会保険は、基本的には法人事業所または常時従業員が5人以上の個人事業所に常時使用されている、次に掲げる要件 に該当する人を加入対象としています。

A
・正社員・法人の代表者・役員
 ・1週間の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が正社員の4分の3以上ある人

(または)

B
下記のすべてを満たしている人
 ①所定労働時間が「週20時間以上」であること
 ②月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)であること
 ③勤務期間が1年以上見込まれること
 ④学生でないこと
 ⑤従業員501人以上の企業に勤務していること
  (従業員500人以下の企業でも、労使の合意(従業員の2分の1以上の人の合意があれば加入可能)

上記Aの要件によって、非正規雇用者(契約社員・パートタイマー・アルバイト等)でも、通常の労働者の週所定労働時間が40時間であれば、週所定労働時間が30時間以上の場合は、社会保険の加入の対象となりますし、そうでなくてもBの要件を満たせば社会保険加入の対象となります。


そのため、応用編ではありますが、正社員の所定労働時間が週40時間の企業の場合について、 より細かく要件を表に落とし込むと以下となります。

note本文用表➁労働保険社会保険の加入表


<昼間学生版>

たとえばベンチャー企業では、多くの学生アルバイトを雇用しています。そのアルバイトの中には、大学との授業を調整しながら、正社員並みに多くの時間を働いている学生もいます。また、場合によっては、一時的に大学を休学し、数年間の間は急成長するベンチャー企業で働くことを選択する学生アルバイトもいます。その方たちの広義の社会保険はどうなるのか一つずつ見ていきましょう。


<昼間学生版:労災保険>

学生であっても労働者である以上は、適用されます。


<昼間学生版:雇用保険>

「学生」ではなく「昼間学生」と書いているのは意味があります。夜間学生や通信で学んでいる学生の場合は、学生であろうと週所定労働時間が20時間以上等であれば、雇用保険の対象となります。しかし、昼間学生の場合は、原則対象となりません。ただし、昼間学生であっても、大学を休学していたり、卒業が見込まれていたりする者に関しては雇用保険の加入対象となります。そのため、人事労務担当者は、「学生だから対象外だな」と安易に判断するのではなく、休学していないか、卒業見込みがないか等も聞き取り調査をする必要性があります(業務に追われていると聞き取り調査を落としがちなんですよね)。

他の要件含めて、分かりやすく説明されている表 があるので、参考に該当箇所を載せてきます(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000175909.pdf)。

note貼り付け


<昼間学生版:狭義の社会保険>


昼間学生であっても、前述のように週所定労働時間が正社員の3/4以上であれば(ほとんどの会社で30時間以上)、社会保険に加入することになります。ここが、雇用保険とは要件が違うところですので、注意が必要です。昼間学生で週所定労働時間が35時間の人の場合は、「雇用保険なし+社会保険あり」となるので、通常よく見るパターン(「雇用保険あり+社会保険あり」または「雇用保険あり+社会保険なし」)とは違う現象が起きます。


<問題の答え>

それでは冒頭の答え合わせといきましょう。

問題①
アルバイト従業員から「通勤途中に階段を踏み外して骨折してしまったのですが、何か受けられますか」と質問が来ました。
どのように回答すれば良いでしょうか?


答え① 
労災保険給付を申請できます。

簡単な解説①
労災保険は、敢えて資格取得や喪失に関する手続きを行う必要性がないせいか、アルバイト従業員からこのように問われると、「そういえば、どうだったっけな・・・」と思い悩んでしまう人事労務担当者の方がいます。ぜひ、「労災保険は、原則全労働者が対象」と今一度覚えておいてください。


問題②
パートタイマー従業員から「配偶者の会社から、収入が多いから配偶者の社会保険上の扶養対象から抜けるよう連絡がありました。会社で、社会保険に入る手続きをしてください」という依頼が来ました。
どのように回答すれば良いでしょうか?

答え②
まずは、そのパートタイマー従業員の週所定労働時間を確認してください。社会保険の加入要件を満たしていれば加入できますし、満たしていなければ加入できません。

簡単な 解説②
このような質問が来ると人事労務担当者は「手続きしなきゃ!」と慌ててしまう場合がありますが、配偶者の社会保険上の扶養に関する要件と、パートタイマー自身の社会保険加入要件が連動しているわけではありません。昨今は、最低賃金の上昇や人材不足から、パートタイマーの給与(時給)が上がっており、昔に比べると少ししか働いていないにも関わらず、配偶者の社会保険上の扶養要件を超えてしまう方がいます。
もし、パートタイマーの方が社会保険の加入要件を満たしていなければ、該当のパートタイマーの方自身で、国民健康保険と国民年金に加入手続きをしてもらうことになります。

以上、労働保険・社会保険の加入に関するポイントを表とともにお伝えしました。
「広い意味の社会保険」とは基本的に「働けないこと」に備える制度でした。社会保険労務士は人事労務、つまり「働くこと」に関してだけでなく、「働けないこと」に関してもサポートできる専門家です。どちらについても、判断に迷った場合はぜひお気軽にご相談ください。


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