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2018年版 インフルエンザと労務管理

こんにちは。社会保険労務士法人シグナル 代表 有馬美帆です。

10月になり、今年も残すところあと3か月ですね。

さて、10月といえばインフルエンザの予防接種が始まる時期です 。
弊事務所では、先日すでに顧問先企業に 、インフルエンザの予防接種開始と企業としての対応プランのご連絡を行いました。とても大きな反響をいただきましたので、noteでも一部 ご紹介致します!

ご存知の通り、企業がインフルエンザの予防接種を従業員へ受けさせることは、義務化されておりません。
しかし昨今は、健康経営や労働生産性向上の観点からインフルエンザの予防接種費用を負担 したり、勤務時間中に予防接種を受けるための外出を認めるなどの配慮をしたりする企業が増えてきています。
   
従業員がインフルエンザに罹患すれば、他の従業員や取引先、さらには顧客へと感染してしまいかねません。
また、罹患した従業員が急に数日間欠勤してしまえば、業務が滞り労働生産性が落ちる可能性もあります。このように大きなリスクがありますので、やはり企業として対応をすることは賢明といえます。

昨シーズン(2017年9月~2018年4月)のインフルエンザの推計患者数は過去最多だったとのことですから、今年度も警戒が必要です。すでに学級閉鎖をした学校もあるそうですから、インフルエンザの脅威が職場まで及ぶ日も遠くはないでしょう。

まだ今なら対策が間に合いますので、経営者や人事労務管理担当者の方は、今シーズンのインフルエンザに対してどのように対策をするのか、このnoteを読んだ後に社内で話し合ってみてくださいね。

まず、企業としてインフルエンザ予防接種に関して、負担を伴う具体的な対応をするのか、しないのかを決めてください。

「予防接種をしっかり受けてください」とアナウンスだけする「口先介入」的な、負担なく安く済ませる方法もあるにはありますが、これでは十分な効果が見込めません。
企業側が何らかの負担を伴う対応をすれば、「制度」としての重みが生じ、それが効果につながります。

主な対応としては、予防接種費用の負担と予防接種時間への配慮の2つが考えられます。

まず、予防接種費用の負担からです。
医療機関 によって若干異なりますが、3,000円~4,000円程度が費用となります。

企業が希望者全員の予防接種の費用を負担するような場合は、費用として計上が可能となります ので、詳しくは税理士さん等にお確かめください。 

また、健康保険組合で、インフルエンザの予防接種費用を補助する制度を設けているところもあります。

予防接種時間への配慮とは、就業時間中に、授業員が予防接種を受けられるような措置を設けるかどうかということです。

ご存知の通り、医療機関の診療時間は、多くの企業の所定労働時間とほぼ同時間帯であり、それでは予防接種を受けよう と思っても、病院が混んでいる土曜日や、仕事が終わった後に病院へ駆け込む必要があるなど、なかなか大変です。

ですが、就業時間中に病院へ行くことを許可してもらえれば、予防接種を受けやすくなります。
会社の近くの病院で予防接種を予約して受ける方法であれば、1日単位や半日単位の有給を取得するほどの時間はかからず、多くは1時間程度の外出で済むはずです。

このように、時間への配慮をするだけでも従業員の方は予防接種を受けやすくなります

おそらく、経営者や人事労務管理担当者の方は、接種費用の負担の可能性については想定されていたことでしょう。それに加えて、予防接種を受ける時間に配慮することも、立派なインフルエンザ予防対策の一つとなりますので、ぜひ検討してみてください。
 
それに伴い人事労務管理担当者の方にご提案したいのは、「職場のかかりつけ医」をもつことです。
最近、健康経営が話題になっていますが、職場近くのお医者様の情報を入手することも、健康経営につながります。

たとえば、インフルエンザの予防接種を希望する社員さんに、就業時間中に職場のかかりつけ医で受けてきてもらう、などということが考えられます。 もちろん、予防接種の料金は社員さんの個人負担でも構わないのです。就業時間中に予防接種が受けられるだけでも、社員さんにとっては大きなメリットですし、何より職場にインフルエンザが蔓延するのを防ぐことができます。

職場近くの医療機関ならば、職場内で外出スケジュール表をあらかじめ作成して、順番に予約を取るなどすれば、業務への影響も少なくすることが可能となります。
さらに人事労務管理担当者の方が、そのクリニックに予約方法を聞きに行って、案内文を社内に配れば、なお受けやすくなることでしょう。


それでは、みなさんが社内で議論しやすいよう表にまとめましたので、以下の表をご覧ください。

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プラン 1は、接種費用を負担し接種時間への配慮もするというものです。リスク回避度「中」、従業員満足度「高」な内容です。

プラン2は、接種費用は負担しますが、接種時間への配慮はしませんので、各自で業務時間外に行って来てね、というものです。リスク回避度「中」、従業員満足度「中」な内容です。

プラン3は、接種費用は個人負担となりますが、 就業時間内に医療機関へ行くことを許可します、というものです。リスク回避度「低」、従業員満足度「中」な内容です。
企業にとっては、追加費用がかからないので、一番導入に向けたハードルが低いのではないでしょうか。

プラン1を選択された場合、従業員が一人一人に医療機関で予防接種を受けてもらう方法もありますが、従業員数が多ければお医者さんが企業まで来てくれてインフルエンザの予防接種を打ってくれる出張サービスもあるようです。

では、このリスク回避度と従業員満足度を上げるにはどうしたら良いでしょうか?

そのために必要なのが、わかりやすい案内とていねいな確認です。
人事労務分野はともすればお金を産まないと思われがちですが、予防接種への取り組みなど、従業員の心身の健康の確保は生産性に直結する大切な要素です。

働き方改革で、労働時間が限られつつある現在、その労働時間の「質」がますます問われるようになっています。 前回おつたえした有給休暇もそうですが、従業員が心身ともにフレッシュな状態で働けるようにすることが、利益に直結する時代が来ました。
それは人事労務担当者の方の役割が重視される時代の到来でもあります。
 

インフルエンザ予防接種対策に企業が積極的に取り組むことで、従業員満足度の向上と企業としてのリスク対策を同時に実現できます。
こんなに費用対効果の高い施策はなかなかないです!

この対策の効果をさらに高めるためにも、「期間限定」にされることをお勧めします。
たとえば、「11月15日までに予防接種を受けるなら、費用援助を行うとともに接種時間に配慮します」などと打ち出すことで、本格的なインフルエンザの流行シーズン前に備えを固めることが期待できます。 

予防接種以外にも、アルコール消毒液や空気清浄機、加湿器を会社に置いたり、換気やマスク着用を推奨したりといった、予防方法は様々ありますので、人事労務担当者の方は、追加の施策も含めぜひ検討されて、企業全体でこの冬を元気に乗り切ってくださいね。


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