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2023年春以降 注目の法改正等

こんにちは。

IPO支援・労使トラブル防止やハラスメント防止などのコンサルティング・就業規則や人事評価制度などの作成や改定・HRテクノロジー導入支援・各種セミナー講師などを行っている社会保険労務士法人シグナル代表の特定社会保険労務士有馬美帆(@sharoushisignal)です。
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2023年も4月となり、新年度を迎えました。今回は「2023年春 注目の法改正等」をお伝えします。


<2023.4.1 月60時間超の時間外労働に関する割増賃金率の引き上げ(中小企業)>
2023年4月1日から、大企業・中小企業の別を問わず、月60時間を超えた時間外労働においては50%以上の割増率で割増賃金を支払う必要があります。

中小企業への猶予措置が2023年3月31日で終了したことによるものですが、すでにこのnoteでは対応策等をくわしく解説していますので、ぜひこちらの記事もご覧になってください。


<2023.4.1 賃金のデジタル払い解禁(事業者の申請受付開始)>
これまで賃金支払は現金払いか従業員の同意を得た上で金融機関の口座振込しか認められてこなかったのですが、2023年4月から「○○Pay」のようなデジタル払いも認められるようになりました。

と、書くとすぐにでも「○○Pay」などで支払えそうに思うのですが、実はデジタル払いが利用できるまでにはもう少し時間がかかるのです。
というのも、デジタル払いで利用できるのは「厚生労働大臣が指定した資金移動業者のみ」で、この4月からその指定を受けるための申請受付を開始したばかりなのです。

今後、「○○Pay」などを扱う事業者(これが「資金移動業者」です)からの指定申請を厚生労働大臣が受けて、厚生労働省の審査が行われるのですが、数か月はかかる見込みだそうです。

審査の結果、厚生労働大臣がたとえば「○○Pay」を指定したとします。「では、○○Payで払えるんですね!」とはすぐには行きません。ここから次の3つのステップを踏む必要があります。

①各事業場で賃金のデジタル払いに関する労使協定を締結
②賃金のデジタル払いについて従業員に説明
③同意した従業員にのみ、賃金のデジタル払い開始

詳しくは改めてnoteかTwitterにてお伝えする予定ですが、
①労使協定が必要なこと
②従業員に説明が必要なこと
③個別に同意した従業員のみにデジタル払いが可能なこと(デジタル払いの強制はできないこと)

については十分注意してください。

賃金のデジタル払いは必須のものではありませんので、その必要性も含めて、今のうちに企業内でさまざまな検討をしておくと良いでしょう。


<2023.4.1 雇用保険料率の改定>
ご存じのように雇用保険財政の逼迫を受けて、2023年4月から雇用保険料率が0.2パーセント引き上げられます。雇用保険料は労使折半で負担しますので、企業と従業員の負担は0.1パーセントずつアップということになります。


<2023.4.1 出産育児一時金>
健康保険法施行令の改正により、2023年から出産育児一時金および家族出産一時金の支給額が引き上げられます。

・改正前
40万8,000円(産科医療補償制度加算の対象となる出産については42万円

・改正後
48万8,000円(産科医療補償制度加算の対象となる出産については50万円

一般的には「42万円から50万円への引き上げ」として報道されています。政府は「異次元の少子化対策」として、他にもさまざまな施策を検討していますので、人事労務面で関係があるものが正式に決定しましたら、改めてnoteかTwitterにてお伝えする予定です。


<2023.4.1 障害者雇用率の改定>
障害者雇用促進法では、全ての企業に対して障害者の雇用を義務付けており、従業員数に占める障害者雇用の割合を障害者雇用率といいます。

この障害者雇用率は少なくとも5年ごとに設定することになっていますが、前回の設定が2018年(平成30年)だったため、2023年(令和5年)に新たな設定がなされることになりました。

障害者雇用率は現在2.3%ですが、2024年度(令和6年度)から2.5%、2026年度(令和8年度)から2.7%へと段階的に引き上げられることになっています。
2023年度(令和5年度)は据え置きということになりますが、これは雇入れには段階的な対応が必要であることを理由にした配慮によるものです。


<2023.4.1 育児休業取得状況の公表義務化(1001人以上)>
育児・介護休業法の改正により、常時雇用する従業員数が1000人を超える企業は、男性労働者の育児休業等の取得状況について少なくとも毎年1回、公表する義務が課せられました。

公表する内容は次の①または②のいずれかです。
①男性労働者の育児休業取得割合
②男性労働者の育児休業等と育児目的休暇の取得割合

「公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度」についての公表が必要であることに注意を要します。
公表方法は、インターネットなどの一般の方が閲覧できる方法で公表する必要があります。自社のウェブサイトや厚生労働省の「両立支援のひろば」などによる公表が考えられます。

義務ではありませんが、女性の育児休業取得率なども同時に公表することは、人的資本経営の実践と開示が注目されている現在、非常に意義のあることでしょう。


<2024.4.1 建設業・運送業の時間外労働に関する上限規制の猶予措置廃止>
「働き方改革」による、時間外労働の上限規制は、建設業や自動車の運転の業務等には5年間猶予(労働基準法附則第139条以下)されていますが、2024年4月1日からはその猶予措置がなくなりますので、上限規制が適用されることになります。

最近は「2024年問題」として、メディアでもかなり取り上げられるようになってきているこの問題ですが、実際の対応は非常に困難な面もありますので、できる限り早めに着手してください。


<2024.10.1 社会保険の適用拡大(51人以上)>
社会保険の被保険者数数51人以上の企業では、2024年10月1日から、
(1)所定労働時間が週20時間以上
(2)月額賃金が88,000円以上
(3)勤務期間2か月を超える見込み
(4)学生ではない
という要件を満たす方も社会保険の加入対象となりますので、お気を付けください。


<2025.4.1 高年齢雇用継続給付の段階的縮小>
政府は2000年代に入ってずっと、65歳までの雇用確保に取り組んできました。雇用の確保のためには、企業の対応が必須となりますが、企業の経営面への配慮も欠かせません。

そこで、高年齢継続雇用給付金の制度を設けて、60歳到達時点で賃金が低下した場合に、一定の基準を満した60歳以上65歳未満高年齢労働者に給付金を支給するという形で企業を側面支援してきたわけです。

時は流れて、「70歳までの雇用確保努力義務化」が現実的なものとなりました。それは同時に、「65歳まで働いて当たり前」「65歳まで雇って当たり前」の社会が到来したということを意味します。

そうなると、高年齢継続雇用給付金という「特別の配慮」はもはや不要ということになります。
いきなり廃止すると影響が大きいため、2025年度から現在の半分程度の水準とし、その後段階的に縮小していくのが政府の方針です。

それでは、次のnoteでお会いしましょう。


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