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越境リモートワーク

こんにちは。

IPO支援(労務監査・労務DD・労務デューデリジェンス)、労使トラブル防止やハラスメント防止などのコンサルティング、就業規則や人事評価制度などの作成や改定、各種セミナー講師などを行っている東京恵比寿の社会保険労務士法人シグナル代表 特定社会保険労務士有馬美帆(@sharoushisignal)です。
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 ------2022年年10月22日追記--------

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最近、「越境リモートワーク」という言葉を目にしたり耳にしたりする機会が増えつつあります。
現段階でははっきりした定義がある言葉ではないのですが、ざっくり表現すると「国境を越えてリモートワークをすること、あるいはさせること」になります。

弊所でも顧問先の企業様から「外国人に、海外在住のままリモートで働いてもらいたい」「社員を海外でリモート勤務させたい」といった「越境リモートワーク」に関する質問が増えています。

この「越境リモートワーク」については、NHKでも2021年6月に「越境テレワーク」という名前で、日本経済新聞が2021年7月に「越境リモート労働」という名前 で、それぞれ取り上げています。
他にも「越境ワーキング」「越境ワーク」などの名前で、国境を越えたリモートワーク(テレワーク)について様々な場で語られていますが、このnoteでは、以下「越境リモートワーク」という呼称で統一してお伝えすることにします。

先ほどの日本経済新聞の記事は、世界的に「越境リモートワーク」の導入が進んでいるというもので、その主な理由としては、
①コロナ禍によって、人材の国境を越えた移動が難しくなったこと
②デジタル人材の不足に対応するためには、国外の人材にも目を向ける必要があること
が挙げられていました。
そして、「日本は出遅れが目立つ」としています。

今後、わが国でも「越境リモートワーク」への需要は高まるでしょうし、それとともに人事労務面での様々な問題が当然発生するでしょう。
ですが、「越境リモートワーク」についてはどのような法令が適用されるかなどの問題について、現時点では非常に不透明な状況にあります。


私が尊敬する、労働法務と中国関連紛争を専門とする弁護士の宇賀神崇先生(森・濱田松本法律事務所)は、「越境リモートワーク」の労働問題について、わが国の法律だけでは対応できない部分があると指摘されています 。

他にも様々な問題点を引用元の記事でご指摘なさっていらっしゃいますので、ぜひご覧ください。

なお、宇賀神先生は刊行されたばかりの『実務 中国労働法-日中対比で学ぶ最新労務管理』(経団連出版) でも執筆されていますので、中国関連の労務にご関心の方はご参考になさってください。


このnoteでは、宇賀神先生のご指摘を受けて、さらにこの問題について少し考えてみようと思います。

「越境リモートワーク」には「させる側」と「する側」があるわけですが、「させる側」については、とりあえずわが国の企業(あるいは個人事業主)であることを前提にして話を進めていきます。

問題は「越境リモートワーク」を「する側」(以下「越境リモートワーカー」とします)の方についてです。

少し考えただけでも、

(1)越境リモートワーカーが日本人なのか外国人なのか
(2)雇用契約(労働契約)なのか業務委託契約なのか
(3)越境リモートワーカーが働く場所はどこの国なのか
(4)越境リモートワーカーが日本人の場合、就労ビザをどう取得するのか
(5)越境リモートワーカーは実際にどのような仕事をするのか
(6)越境リモートワークに関してどこの国の法律が適用されるのか
(7)越境リモートワーカーを誰が、どのように管理するのか
(8)越境リモートワーカーに対して賃金又は報酬はどのように支払うのか
(9)時差の問題にどう対応するのか

などなど、ざっと挙げてみただけでも様々な検討を要する事項が次々と浮かんできます。



これらはあくまで人事労務面での検討事項で、他にも税務面などについても多々考慮する必要があります。

こう書くと、「越境リモートワークというのも面倒だな」と思われてしまうかもしれませんが、前述のように企業側にはコロナ禍対応の面でも人材確保の面でもメリットがある上に、越境リモートワーカーの方々にとっても、「場所に縛られずに働ける」「キャリアの断絶を防ぐことができる」などのメリットがあります。
キャリアの断絶を防げるというのは、たとえば配偶者の海外赴任に伴って海外移住された方が、リモートワークで引き続き従前の仕事を行えるような場合などです。

これらのメリットからすると、法的な面や制度の整備面などで多少の手間や困難があったとしても、「越境リモートワーク」の導入に動く企業は増えていくと思われますし、そうでなければ「出遅れが目立つ」わが国の国際競争力はますます低下してしまいかねません。
実際に導入に動く際には、海外勤務に関する従来の事例や、現地法人で外国人労働者を雇用する場合の事例なども参考にできますので、ハードルはクリアできるはずです。


関連する話題として、「越境」ではありませんが、Yahoo!は2022年4月1日から、通勤手段の制限を緩和し、居住地を全国に拡大できる制度を導入しています。国内ならどこでも働けるという制度は、すでにメルカリが2021年に導入していますが、このような働く場所のダイバーシティ(多様性)に関する動きをさらに推し進めると「越境リモートワーク」にもたどり着くことになります。今後、この多様性に魅力を感じる人材が増えることが予想されるため、「越境リモートワーク」を今すぐ導入しないにしても、将来を先回りして検討を開始をしておく必要はあると思います。


もちろん、そもそも「越境リモートワーク」が導入できない業種や職種もあるでしょう。しかし、自社が「越境リモートワーク」を導入しなくても、取引先の担当者が越境リモートワーカーだったというような日が来るかもしれませんし、そのときに「越境リモートワーク」に関する理解がスムーズなコミュニケーションにつながる可能性は高いです。だからこそ、多くの人に「越境リモートワーク」の存在とその可能性について知っていただきたいですし、弊所もこのnoteを通じて今後情報発信して行こうと思います。


それでは、次のnoteでお会いしましょう。

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