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【給与形態①】(完全)月給制・月給日給制・日給月給制・日給制

こんにちは。

IPO支援(労務監査・労務DD・労務デューデリジェンス)、労使トラブル防止やハラスメント防止などのコンサルティング、就業規則や人事評価制度などの作成や改定、各種セミナー講師などを行っている社会保険労務士法人シグナル代表の特定社会保険労務士有馬美帆(@sharoushisignal)です。

バージョン2とも言うべき【給与形態②】(完全)月給制・月給日給制・日給月給制・時給制・日給制・年棒制・歩合制・(完全)歩合給をアップしています。ぜひこちらをご覧ください。

先日、「月給日給制と日給月給制の違いを教えて欲しい」というご質問を頂戴しました。月給日給制も日給月給制も法律上の定義はありませんので、各企業がそれぞれ定義づけすることもできますが、一般的な用例がある程度定着しています。noteの読者の皆様にはこの一般的な用例について表とともにお伝えします。

1. 給与形態の違いを理解しましょう!

まず、「給与形態」とは何かというところか始めますが、これは給料(賃金)をどのような形態で支払うかという区別です。

note.本文用給与形態月給日給制等

表をご参照いただきたいのですが、「(完全)月給制」と「日給制」はすぐに内容が理解できますよね。
月給制は月ごとに決まった額を支給(ですので「完全月給制」ともいいます)、日給制は1日ごとに決まった額を支給するものです(注1)。

それに対して、「月給日給制」と「日給月給制」は一見しただけでは違いがわかりにくいですよね。名前が違うということは、当然給与計算においても違いが生じます。
就業規則や賃金規程での規定の仕方や、給与計算や勤怠管理に関するシステム(ソフト)への登録、傷病手当金申請用紙の記入等で、この違いを意識しなければならない場合がありますので、この機会にぜひご理解いただきたいと思います。


2. (完全)月給制・月給日給制とは?

それでは、「月給日給制」からご説明します。
よく求人票で「月給30万円」と記載されたりしているのを見かけますが、実はこれだけですと厳密な書き方とはいえないのです。この「月給」が「(完全)月給制」を意味するのか、それとも、「月給日給制」を意味するのかによって、大きな違いが出てくるからです。

「月給制」とは、先ほど少しだけ触れましたが、月ごとに決まった額を給与として支給する給与形態です。
そのため、たとえ従業員に欠勤や遅刻、早退があったとしても、その分は月給から差し引かずに定額を支給しなければなりません。そのため「完全月給制」とよばれる場合もあります。

これに対して、「月給日給制」は従業員に欠勤や遅刻、早退があった場合、その分を月給から差し引く(控除する)給与形態です。いわゆる「ノーワーク・ノーペイの原則」によって、実際に労働しなかった分の給与(賃金)を支給しないこと自体は法が認めているところです(民法624条1項等)。


従業員からすると「完全月給制」の方が良いでしょうが、企業としては「月給日給制」の方が一般的には良さそうです。このような違いが存在するため、企業としては就業規則や賃金規程に給与形態を明確に定めた上で、募集段階や契約段階(採用内定時を含む)を通じて、「月給」の意味を明確にしておく必要があります。


3. 日給月給制とは?

次に「日給月給制」について説明します。日給月給制は、あらかじめ定められた日給にその月の労働日数を乗じて月給を算出し支給する給与形態です。


その企業の賃金テーブル等において、例えばグレード1の従業員は日給10,000円、グレード2の従業員は日給11,000円などと定めた上で、グレード1の人が月に20日勤務すれば、月給20万円が支給されることになります。


4. 給与形態

読者の皆様の中には、完全月給制で支給する企業なんて存在するのだろうかなどといった、さまざまな疑問を抱かれる方もいらっしゃることでしょう。ちなみに、完全月給制を採用しているのは主に大企業で、それも一部にとどまります。


岡田准一さん主演で2016年に映画化もされた百田尚樹著「海賊とよばれた男」(講談社刊)では、主人公が店主である国岡商店(出光興産がモデルだそうです)が、社員が兵隊として戦地に赴いている間もその給与を支払っていたというエピソードが登場します。

仮に国岡商店が月給日給制だったならば、戦争に行っている間は労務の提供がない以上、お給料はゼロになってしまいます。
ということは、国岡商店は完全月給制だったのかなあ、などと職業柄つい考えてしまうのですが、国岡鐵造店主(出光佐三氏がモデルだそうです)は終戦後に社員を1人も解雇せずに再建に乗り出し大企業へと成長させた男気のある人物なので、きっと給与形態いかんに関わらず、社員のために戦時中でもお給料を出していたということなのでしょうね。


以上、代表的な給与形態のそれぞれについて、できるだけわかりやすく説明を加えてみました。今回ご紹介できなかった点については、機会を改めてご説明したいと思っています。

注1:日給制と「日払い」は区別されます。日給制は日給を1か月などのまとまった単位を締日として計算し支給することもありますが、日払いは毎日が締日で、翌日以降に支払うものです(場合によっては当日払いもあります)。


それでは次のnoteでお会いしましょう。
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