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年アド3級過去問解説 2021年10月 問‐31.32

こちらの記事は、試験団体である銀行業務検定協会様のご了解のうえで、過去問題の著作権に触れない範囲での掲載をしております。
問題文は掲載しておりません。公式の「問題解説集」をご用意ください。

こんにちは! うっちーです。

こちらでは、年アド3級の技能・応用編の過去問について、図解もまじえながら話し言葉で解説していきます。用語等の厳密な正確さよりも、ざっくりとしたわかりやすさを重視しております。

あくまでも過去問の解説であり、次回の試験でも同じ論点の問題が出題されるとは限りませんのでご了承ください。

なお、ご購入後にも記事のレイアウトの見直しや内容の追記等の更新を行うことがございます。

2021年10月 問‐31

Aさん夫婦の老齢基礎年金の受給資格期間等について、誤っているものを選択する問題です。

ポイント

  • 厚生年金保険の被保険者期間のうち20歳未満や60歳以上の期間は、老齢基礎年金の『保険料納付済期間』ではなく、『合算対象期間』に含まれること。

  • 誕生日が1日の人は20歳や60歳に達する月がひと月前倒しになること。

  • 第3号被保険者期間を数えるときには、配偶者が第2号被保険者であるかどうかに注意すること!!

(1)夫の平成25年10月~平成25年12月の期間が受給資格期間に算入されるかどうかという問題です。

試験に出る受給資格期間のおさらい

①保険料納付済期間
 →国民年金の保険料を納めた期間 
 →厚生年金保険の被保険者および共済組合の組合員等であった期間 ※1 のうち、20歳以上60歳未満の期間

②第3号被保険者であった期間 ※2
 →昭和61年4月以降に会社員・公務員等の妻(夫)であった期間

③合算対象期間
 →厚生年金の被保険者および共済組合の組合員等であった期間 ※1 のうち、20歳未満もしくは60歳以上の期間
 →会社員や公務員の妻(夫)で国民年金に任意加入できたものが任意加入しなかった昭和61年3月以前の期間(任意加入したものの保険料未納だった期間を含む)

※1.2 細かいことを言いうと、第3号被保険者期間も保険料納付済期間のひとつです。また、厚生年金や共済組合に加入していた期間について、昭和61年4月以降の期間は国民年金の第2号被保険者期間と表記すべきです。ここではわかりやすさを重視して、日本年金機構発行の老齢年金ガイドを参考に記載しています。

事例を確認すると、設問(1)の期間は「国民年金(保険料未納)」となっています。①~③には当てはまりませんので、「受給資格期間に算入されない」のが正しいですね。

(1)は ○

(2)夫の保険料納付済期間を確認する問題。
「保険料納付済期間」ときたら、「20歳以上60歳未満しかカウントしないはずなのに、20歳未満や60歳以上の期間まで数えているのでは?ということを疑ってかかりましょう。

下のような線表を書いて考えるとわかりやすいです。
また、年を数えるときは昭和で統一して考えると数えやすいです。

平成+63で昭和換算しています。60歳をまたいでいるのが注意点!!

夫が60歳に達するのはS93.9.14(60歳の誕生日の前日)なので、60歳未満である月は8月まで。

色分けで示すと、「保険料納付済期間」は青色の部分だけを数えます。60歳以上の水色の部分は「合算対象期間」になります。

では、具体的に何カ月になるか確認してみましょう。

月数の計算はこちら☟をご参照ください。

それぞれの 年×12 +月をしたうえで、次の計算をします。

終わり ー 始め  + 1

S89.1からS93.8までを計算すると
(93×12+8) - (89×12+1) + 1=56

保険料納付済期間は56ヵ月が正解ですので、この選択肢は誤り。

(2)は ✕

「57ヵ月」というのは、60歳に達する月の9月までを含めて数えてしまった場合のひっかけですね。

(3)妻の合算対象期間を確認する問題。
会社員や公務員だった期間のうち、20歳未満もしくは60歳以上の期間です。

妻は若い頃にX市役所で働いているので、そのうち20歳未満の期間が19ヵ月あるかどうかが論点です。

線表を書くとこんな感じです☟
妻は12/1生まれなので、20歳に達するのは前日の11月30日というところが注意点です!!

20歳や60歳の縦線の右側には誕生日の前日を書くとわかりやすいです。

妻は、11月に20歳になるので、20歳未満の期間は10月までです。

「合算対象期間」は、X市役所に入ってから、20歳未満である10月までを数えます。下の表の水色の部分です。

S55年4月からS56年10月までを数えると
(56×12+10)ー (55×12+4)+1=19

合算対象期間は19ヵ月が正解です。

(3)は ○

(4)妻の合算対象期間を確認する問題。
第3号被保険者制度ができる前の専業主婦期間についてです。

次の3つのポイントを確認していきます。

 ①結婚以後~昭和61年3月以前
 ②夫が会社員 or 公務員である
 ③国民年金に任意加入していない or 任意加入しているけど保険料未納

線表を書くときは、夫の状況も併せて書くとわかりやすいです。

本人が20歳以上60歳未満であることも要件です。

結婚~昭和61年3月以前の期間は、事例を確認すると「(任意加入,保険料未納)」となっています。そしてこの間、夫はずっとZ社に勤めています。

要件がそろっているので、昭和59年10月から昭和61年3月までは合算対象期間となります。薄いピンクの期間です。

ちなみに、濃いピンクの期間は第3号被保険者期間です。

設問の期間は合算対象期間で正解です。

(4)は ○

(5)妻の第3号被保険者期間を確認する問題。
選択肢にある「昭和61年4月~60歳に達するまでの期間」は第3号被保険者期間でしょ?と思いがちなのですが、この問題にはひっかけが用意されているケースが多いです。

第3号のひっかけポイントはこちら

次のような状況の期間は、妻は第3号被保険者ではなくなっています。この場合、選択肢の月数をそのまま数えると間違いになってしまいます。

①期間の途中で夫が一時期離職している 
②妻が60歳になる前に夫が退職している 
③妻が60歳になる前に夫が65歳になっている
 (夫が在職中でも原則第2号被保険者ではなくなる)

妻と夫が逆のパターンの出題もありえます。

 「昭和61年4月~60歳に達するまで:国民年金」に上記の3つに当てはまる期間がある場合は、それを除いて数えないといけません。

これも、妻と夫の線表を書くと発見しやすいです。

夫がZ産業を退職してY商事に再就職するまでの間の3ヵ月は、夫が国民年金ですので妻も第3号被保険者ではなく、第1号被保険者として自分で国民年金保険料を納めなくてはなりません。

期間を数えるときには、この3ヵ月は差し引きます。

また、妻は12/1生まれですので60歳に達するのは11/30です。60歳未満の期間には60歳に達する年の10月までを数えます。

S61年4月~S96年10月から3ヵ月を差し引く
(96×12+10)-(61×12+4)+1 ー3 = 424

第3号被保険者期間は424ヵ月が正解です。

(5)は ○

3ヵ月を差し引かなかったり、60歳になる月を12月と考えてしまったりすると答えがずれて✖の選択肢と判断してしまいかねません。ご用心ください。

2021年10月 問‐32

Aさん夫婦の老齢給付の支給開始年齢や加給年金額・振替加算について、誤っているものを選択する問題です。

ポイント

  • 報酬比例部分の支給開始年齢

  • 定額部分は基本的には支給されない

  • 加給年金額、振替加算は65歳の誕生月の翌月分から(1日生まれは誕生月分から

支給開始年齢の表

問32を解く上で覚えておくのは、この表の下半分(61歳支給開始以降)でかまいません。

日本年金機構のHPより

とは言え、暗記するのはなかなか大変ですよね。そこで語呂合わせをご紹介します。

支給開始年齢の語呂合わせ

昭和28年4月2日以降生まれの男性が61歳からの支給開始
これを「庭師に無理強い」と覚えておきます。

あとは、28年に+2をしたS30年4月2日以降は62歳から。
さらに+2をしたS32年4月2日以降は63歳から…

というように、生まれ年に+2をするごとに支給開始年齢が1歳上がります。これを覚えておけば、支給開始年齢はかんたんに導き出せます。

気を付けてほしいのは早生まれ。例えば昭和34年3月生まれは、64歳からではなくて63歳からのグループに入りますのでご注意を!

女性の場合は、スタートの昭和28年に+5をして昭和33年から始まります。「女のコ(5)」とでも覚えておいてください。

また、女性が公務員として共済組合に加入していた期間については男性と同じ支給開始年齢になります。

特別支給の老齢厚生年金(60代前半の部分)を受給するには、厚生年金保険や共済組合等の被保険者期間を合計した月数が12ヵ月以上必要です。

では、実際の問題を見てみましょう。選択肢の順番通りではなく、似た選択肢から見ていきます。

夫の報酬比例部分の支給開始年齢の問題

(1)夫は昭和33年9月15日生まれです。
「にわしにむりじい」
  →28.4.2 61
+2→30.4.2 62
+2→32.4.2 63
+2→34…
ですから、63歳からで正しいです。

(1)は ○

(4)妻は昭和36年12月1日生まれです。
女性ですが、事例を見るとX市役所で地方公務員だったので、支給開始年齢は男性と同じになります。
「にわしにむりじい」
  →28.4.2 61
+2→30.4.2 62
+2→32.4.2 63
+2→34.4.2 64
+2→36.4.2 65
ですから、62歳は誤り。65歳からが正しいです。

(4)は ✕

もし、妻が民間会社に勤務していて厚生年金保険に加入していれば、62歳が正解でした。

(2)夫の定額部分
夫の生年月日だと、定額部分は支給されません。特例として、厚生年金の被保険者期間が44年以上ある場合で、かつ、退職している場合などに定額部分が支給されるというものがありますが、Z産業とY商事を合わせても41年程度ですし、65歳まで仕事を続けるので特例は該当しません。
「定額部分は支給されない」が正しい。

(2)は ○

加給年金額と振替加算

加給年金額は年金における扶養手当のようなもの。

振替加算は主婦手当のようなものです。(主婦の年金制度が途中から変わったことによる不公平を補うもの。)

今回の事例では妻は共済組合に数年間加入です。

問題ではそれぞれ、「65歳に達する月の翌月分」から加算されます。ここでは1日生まれの人に注意してください!

人は誕生日の前日に歳を取ることになっていますので、例えば12月1日生まれの人は11月30日に65歳になります。そして、その翌月は12月。
つまり、1日生まれの場合は誕生月の当月分から加算されます。

・基本的には65歳の誕生月の翌月分から
・1日生まれの人は65歳の誕生月の当月分から

(3)夫の老齢厚生年金に加算される加給年金額
S33.9+65=S98.9
S98.9-93=R5.9
その翌月はR5.10
令和5年10月から加算される。

(3)は ○

(5)妻の老齢基礎年金に加算される振替加算
S36.12+65=S101.12
S101.12-93=R8.12
妻は1日生まれなので当月から加算
令和8年12月から加算される。

(5)は ○

まとめ

受給資格期間のうち、「保険料納付済期間」を答える問題では、20歳前後や60歳前後に会社勤めをしていたとしても、20歳未満や60歳以上の期間を除いて数えるのがポイントです。「厚生年金を払っているのに期間に含まれないのはなんか変…」と思われるかもしれませんが、ここではあくまでも「老齢基礎年金」にかかる保険料納付済期間の話ですので、国民年金を本来納める期間と同じと覚えておいてください。

支給開始年齢は語呂合わせで対応できますが、早生まれ妻が公務員だった場合には注意してください!!

加給年金額・振替加算の問題は、夫に加給・妻に振替、そして妻が年下というケースで出題されています。加給・振替に馴染みが薄い方は、まずはこのパターンをしっかり固めてください。今後、妻が年上などの他のパターンでの出題もありえるかもしれませんが、その場合はややこしいので先に他の選択肢をつぶしていく消去法で答えるのがいいかと思います。

年アド試験は1日生まれのひっかけを多用してくるので、くれぐれも注意してください!!過去問を見ていても 7割以上の確率でAさん夫婦のどちらかが1日生まれです。

1日生まれは前月末日に歳を取るので、〇歳に達する月がひと月前倒しになります。

以上、問‐31.32の解説でした。

予備知識を再確認されたい場合は、ブログ『ねんきんわか~る』におすすみください。

掲載している解法や覚え方のコツは私なりのオリジナルです。無断転載・無断転用を禁止しております。


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