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残業代割増率25%では残業は減らない

こんちは!副業社労士まさゆきです
先日、あるプロジェクトの費用対効果を分析するため、日勤(時間内労働)と残業時(時間外労働)の「時間当たり人件費」を計算したところ、残業時の時給割増率は25%では経営者は労働者に残業させた方がお得なことが判りました。割増率は25%では少ないようです。

計算したのは「ある作業を外注に頼むのと社員に任せるのと、どちらが経費は安あがりか」です。1単位の仕事をする費用はどちらが高いか計算するため、人件費の算出が必要です。作業は残業の可能性が高く、①日勤時と②残業時の人件費を算出し、③外注費用と比較しました。

人件費の計算に含まれるものは?一般的に人件費は下記勘定科目です。
1)給与・各種手当・賞与・役員報酬・退職金等社員に払う報酬
2)法定福利費;健康保険・厚生年金・労災年金等の会社負担分
3)福利厚生費;社宅、社員旅行等の会社負担

今回はこれに「事務所家賃」を加えます。社員を1人増やすと事務所に席を用意しなければなりません。社員と外注費用を比較するならば、事務所家賃は考慮すべき項目です。残業費用には加えません。事務所家賃は日勤費用に全額含まれるからです。

社員一人当たりの事務所費用の算出方法(円/月)は
事務所家賃月額÷事務所を使用する社員数
です。オフィス1人当たり面積は全国平均の4坪とします。
1坪の家賃は、東京都千代田区神田の平均的家賃3万円/坪とします。3万×4坪=12万が一人当たり月事務所費用です。

社員の給与は月30万円とします。見積りで③外注費用は15円/1単位仕事量(以下「単位」とする)、これと社員が作業した場合の費用と比較します。1日8時間労働、月21日出勤と仮定した社員の時間当たり費用は下記です。
①    日勤費用;給与30万円+法定福利費(給与の15%)+事務所家賃12万
  =46.5万円
  46.5万円÷21日÷8時間≒2,770円/時
② 残業費用:(給与30万円×時間外割増賃金加え1.25)
  +法定福利費(給与の1.25%)≒43.1万円
  43.1万円÷21日÷8時間≒2,570円/時

社員が作業した場合には、1時間に120単位しか出来ないことが分かり(外注はノウハウがあり1時間160単位)、1単位当たりの単価を計算すると、
①    2,770円÷120単位≒23円/単位
②    2,570円÷120単位≒21円/単位
よって、③外注に頼んだ方が安くなります。社員は他の仕事に廻せば効率も上がります。

と、ここで「日勤で仕事をさせるより残業させた方が、費用が安くなるのか???」と気付きました。
事務所家賃を人件費に加える事を財務上はしませんが、経営者の立場で考えればこの計算が論理的です。「残業させた方が経営者は儲かる」これが、残業が減らない理由では。

労働基準法上、経営者は1日8時間を超えて残業させてはいけません。36協定を結べば残業させられますが、その場合、時給の25%割増が必要です。時給割増は労働者への慰労の意味ではなく、経営者に対するペナルティ(残業させるペナルティを支払え)の主旨です。

しかし、計算結果を見ると、経営者は残業させた方が費用削減になります。残業時の時給割増率25%は安い。50%でないとペナルティにはなりません。

③の外注費用はさらに安価で、1990年代~2020年に正社員が減りパート社員比率が上昇した理由が解ります。この是正のため厚労省は同一労働同一賃金を推進しています。

残業が当然の社会、パートでも正社員でも格差がない多様な働き方を推進する社会を実現するには、残業時の時給割増率は是正されるべき、計算結果は示しています。

ではまた次回


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