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「『気づき』のある暮らし」/《自然と共に生きるよろこび

 こうして自分の暮らしを振り返ってみると、私は、自然を感じ、そこから見えないつながりを空想し、ただ楽しんでいるだけのように思える。でも、それが私の心を温かくし、周りのものと共に生きている充足感を与えてくれる。
 私は、感じることで、想っている。空想は、想いだ。自然が与えてくれるその想いは、共に生きることを喜ぶ、良き想いだ。だからこそ、心が温かくなる。

 私の想いはどこからやって来るのか。それは、自然を心から感じた時の言いようのない安心感だ。おだやかで、やすらかで、そして、多くの他の命と共に大いなるゆりかごに抱かれている静かな喜び。私は、いつもそこから他のものへのつながりを空想し、そして、いつもそこへ帰る。
 ある時は、見つめ。
 ある時は、眼を閉じ。
 聴き、触れて、嗅ぐ。
 そうして、心で感じる時、想いはつながる。

 ある良く晴れた秋の日。
 私は、青空に映える錦に輝く木を見上げていた。温かな日差しを受けて、色とりどりの葉は、逝く秋に満足していた。それぞれの葉は、それぞれの充実した一年という一生を笑顔で振り返っていた。秋を心から感じていた私には、そう想えた。
 その時、一瞬の風が起き、一斉に葉が空へと旅立った。わき上がる葉達の歓声が聞こえるようだった。命を終える瞬間の、新たな世界へ旅立つ喜び。それは、感謝に溢れ、何ひとつ思い遺すことも、後悔もない。

 青空を舞う木の葉には、すでに命はなかった。あの一瞬に、どこかへと旅立っていった。喜びの声のこだまを残して。
 私は、ただ感動していた。

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