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【シェア街住民インタビュー】目指すのは、全員が「自分はここにいていいんだ」と思える場づくり engawaオーナー日置ノリオさん

今回は、「旅するように生きる」をモットーに、シェア街のオンラインきょてん「くうそうCafe&Bar engawa」や「シェア街ラジオ」を運営されている日置ノリオ(ひおき・のりお)さんにお話を伺いました。前編では、オンラインにおける場づくりや、シェア街主宰の柚木理雄さんとの出会いについてお聞きしました。

場づくりのスタートは「自分がワクワクするか」

シェア街の中でさまざまな活動をされている日置さんですが、普段はどんなお仕事をされているのですか?

都内の人材系の会社に勤めていて、今年で9年目になります。今は地方創生に関わる会社のサポートをしている、言わば便利屋さんのような仕事をしています。

シェア街はどのように活用されていますか?

「活用」というほどでもないのですが、仲の良い人と話したり遊んだりさせてもらっている感じですね。

日置さんは、みんなが楽しめる、リアルな街でいう「公民館」的な場づくりをされている印象があります。何か思い描いている世界があるのでは?

正直、あまり使命感とか目的意識とかを持っているわけではないです。僕自身、自分がワクワクしないと行動できない人間なので。
シェア街の中で最初に立ち上がった「engawa」というきょてんは「こういう場所があれば、僕自身がシンプルに楽しいだろうな」と思って作りました。シェア街ラジオは「人の話を聞いて発信したい」という思いで始めました。
基本は「やってみたら楽しいかな」というテンションですね。

シェア街に参加したきっかけは何でしたか?

仕事でイベントスペースの責任者をしていたのですが、そこで柚木さんが全国のゲストハウスのオーナーを集めて、「ゲストハウスサミット」というイベントを開催していただいたことがきっかけでした。

そのイベントスペースは「旅」がテーマで、僕は責任者として年間200~300のイベントやセミナーの運営の手伝いをしていました。でも、やればやるほど、責任者の僕がどこにも行けない矛盾がありまして。「俺もどこかに行きたい」と思っていたちょうどその時、柚木さんが今のホステルパスの原型の、ゲストハウスに定額で泊まれるサービスを始めたんですよ。

僕は都内に住んでいましたが、帰る場所をゲストハウスに、つまり旅先にすれば良いなと思って。週に2、3回はゲストハウスに泊まって会社に行く、という暮らしを始めました。
それがコロナ禍になり、どうなってしまうのかと思っていたら、柚木さんが「シェア街」というものを始める、と聞きました。「面白そう。柚木さんがやるなら一丁噛みさせてもらいたい」と思ったのが、シェア街に参加するまでの経緯です。

現在の生活の拠点はどちらですか?

僕はアドレスホッパーをしている人のように、全財産をリュック一つにまとめるのは難しいですし、自分の巣というか、帰れる場所があったほうがいいんです。だからできるだけ家賃を抑える形で自分の家を持ちながら、HafH(ハフ)というサービスを使って、月10日はゲストハウスやホテルに泊まりに行く生活をしています。アドレスホッパーに近いかもしれませんが、「よく出て行きがちな人」というだけです(笑)。

ちなみに、今は押上のホテルからZoomを繋いでいます。さっきソラマチでお好み焼きを食べてきましたよ。

学生時代の体験から学んだ、人と人との繋がりが生み出す可能性

学生時代から今に繋がっていることはありますか?

そうですね。大学でフェンシング部を立ち上げたことですかね。
高校生のときに始めたフェンシングを、大学でもやりたかったのですが、5年間の活動実績がないとサークルから部活動に昇格できないという規則があり、本来なら在学中に部の創設はできませんでした。
でも、友達にフェンシングをやっている、という話をしたら、そのまた友達、そこから別の部活の先輩、さらには体育会のOB会長、と話が伝わり、ついには60年前にフェンシング部を創設した方とお会いすることができました。そこで、休部という形でフェンシング部が残っていることを聞き、大学3年生の時に復活させることができたんです。

フェンシング部時代の日置さん(左)

「想いを人に伝えてみると、受け取った人がさらに人を繋いで、無理だと思っていたこともできるようになる」というこの原体験は、現在の人材系の仕事に通ずる部分がありますし、自分がやりたいことだと、今も変わらずに思っています。

幅広く活動されている日置さんですが、人生の方向性が見えてきたのはいつ頃だったのでしょうか?それともまだ模索中ですか?

根本の価値観は変わらないと思いますが、例えばずっと会社に属するのか、独立していくのか、両方の草鞋を履いていくのか、といった具体的なキャリアについては、あまり決めていないですね。ただ、「こっちに行こう」と思った時に、行ける状態でいるようにしたいと思っています。

シェア街はいるだけでいろんな可能性があるし、いろんな価値観を持った人がいます。説明が難しいけれど、本当にゲストハウスみたいなところなんですよ。
旅人が途中でたどり着いて、そのまま住み着く人もいるけれど、決してそこが終着点ではないというか。次の目的地が決まっていても良いし、決まっていなくても受け入れてもらえる。そんな場所ですよね。
そこに身を置くことは「これからどうして行こうかな?」と考えている人にとって価値があると思います。僕もその中の一人ですし。

一番は「その人がその人らしくいられること」

日置さんは、engawaやシェア街ラジオなど、オンラインでも誰もがゆるっと楽しめる空間づくりをされていますが、何か意識されていることはありますか?

一番は、その人がその人らしくいられることですね。Zoomを切った後、「楽しかったな」「また来たいな」と思ってもらえていると良いな、と思います。
でも、ただゆるくさせるだけではいけないんです。オンライン上で「ゆるっと」しつつも、「自分はこの空間にいていいんだ」と思ってもらえる状態を維持するのは、難しいことなんですよね。

リアルな場ではみんなが集まっている中、一人が急にそこから外れるのは結構大変なことですが、オンラインだとカメラをオフにしてしまえば簡単にいなくなれます。つまり、そこにいることに対してのモチベーションを、いつでも切ることができてしまうんです。

何かしらの目的があるわけではなく、ただ「楽しいから」というだけで画面上にいてくれて、うんうんと話を聞いてくれるってすごいことだと思うんです。でも、そういう場所を求めている人は、たくさんいる気がします。

僕自身にとってシェア街は、いろいろなことを試したり考えたりする、実験や修行の場にもなっています。

シェア街のメンバーとZoomで交流する日置さん(中央)

立場に関わらず、新しく入った人も含めてみんなが平等に参加できるところがシェア街の良いところですよね。

おっしゃる通り、初めて来た人に気持ち良く過ごしてもらう、ということをすごく大事にしています。
でも、ただただ持ち上げるのではなく、あくまで平等に接することで、画面上にいる人全員が「ここにいていいんだ」と思えるようにすることを意識しています。チャットでガヤを入れて場を盛り上げることも、その手段の一つですね。

日置さんがいると場が和む理由がわかる気がします。ここまでインタビューをしてきて気づきましたが、日置さんって話し上手で、でもそれ以上に聞き上手ですよね。

そういう人物像を目指していますね。でも、そこは今でも修行中です。
僕はパスをしたがりで、ファシリテートぶってしまうのですが、それって自分がパスの中継地点になっているだけで、自分がいなくなった後は全然違う感じになると思うんですよね。
シェア街には、あれこれとMCをしているわけではないのに、いるだけで話を聞いてくれているような感じを受ける方が何人もいて、それも良いな、と思うことがあります。「聞く」ということにも、いろいろありますよね。

後編に続きます!

【クレジット】
編集:早川英明
執筆:なっちゃん (大谷菜月)
写真:提供写真

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