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【シェア街インタビュー】食を中心に東北との関わりを作れる「きっかけ食堂」を運営 弘田光聖さん

今回は、シェア街のリアルきょてんの一つであるコワーキングスペース・レンタルスペースの「ソーシャルビジネスラボ」(以下、SBL)に拠点を持つNPO法人「きっかけ食堂」の事務局長、弘田光聖(ひろた・こうせい)さんにお話を伺いました。「きっかけ食堂をはじめたわけは?」「これからの展望は?」など聞いてみました。

現地に行くことではなく、もっと気軽に東北と関われる場所を作りたい

現在の活動内容を教えてください。
私たちは食を中心に東北に関わるきっかけを作っている団体で、「きっかけ食堂」という、東北のことを発信してつなぐイベントをはじめとした様々な取り組みをしています。

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なぜきっかけ食堂を立ち上げたのでしょうか?
大学1年生のときから、今の「きっかけ食堂」代表である原田奈実さんと2ヶ月に1回くらいの頻度で関西から東北へ学生ボランティアをバスで運ぶツアーをしていましたが、やりはじめて3年くらいたつと、だんだんと参加者が減ってきたのです。
その理由として、単純にモチベーションや東北に対する関心が減ってきたのでは、と考えました。

一方で東北では、産業の復活や仮設住居への支援などの方へ課題が移り変わってきていて、瓦礫撤去などの身体を動かすわかりやすい復旧活動が減ってきていました。
でも、「東北のことを忘れて欲しくない」「まだできることはある」という声が現場からはあったのです。

それまでは現地に行くことで支援してきたのですが、そもそも行くということは時間、体力、お金などが必要です。
もっといろいろな方に関わってもらうためには、行かなくても支援できることが必要ではないかと考えました。
まずは知りたいという方たちのために発信の場所が必要です。
そこで、毎月11日に開催する「東北酒場きっかけ食堂」を京都で2014年5月に立ち上げました。

広く、ハードル低く来てもらいたいので、あえて復興食堂と言わず、あくまでもきっかけになって欲しいというところから「きっかけ食堂」としました。
食堂としたのは、食はみなさんが参加しやすいからです。あとは、私たち自身が東北で出会った美味しい食を関西のみんなにも届けたいと思いました。


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東京でのきっかけ食堂開催の様子

その後、きっかけ食堂は法人化されましたね。
就職で原田代表とお互い、東京にいたときに、「東京でもきっかけ食堂をやりたいね」という話になりました。
でも、ただの一過性のイベントではもったいない。
もっと広い目線で、「地方創生や、新しい都市と地方の関係性を作るひとつのモデルになる可能性があるのではないか。そういうことまで考えて実施したい」と原田さんと話し合いました。
それで法人化し、東京で学生を巻き込んでやるようになりました。

東北と関わるのは食だけに限らない


どんな人のために、どんなことをしているのでしょうか。

どんな人のために、という点についてはふたつあって、ひとつは東北の自治体や事業者、生産者の方たちです。
もうひとつは関東や関西にいて、東北にゆかりがあったり興味があったりする方たち、地域に貢献したいと思う方たちのために運営しています。

どんなことをしているか、という点も主にふたつあります。
ひとつは毎月11日、東北酒場きっかけ食堂をやっていること。
コロナがあるのでいったんオンラインで開催中ですが、コロナ前は飲食店をお借りして、東北の食材を使って食堂をしていました(今後はリアル開催を予定)。

もうひとつは、広く東北に関わる人を増やすために自治体と協力してツアーを開催したり、民間企業からの委託でWebサイトを作ったりしています。また、副業マッチングプログラムを自治体から委託され、企画運営もしています。
食のイベントにかかわらず、多様な形で東北に関わっていただけるような事業です。

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きっかけ食堂は具体的にはどんなことをしているのでしょう。
いまはオンラインなので19時〜21時の2時間くらいですが、リアルイベントだと18時〜22時くらいで、お店として4時間くらいオープンしていました。

内容としては、まず私たちの方から今日の食材の地域のことについて、どんな方がどんなふうに作っているかを乾杯のときなどにみなさんにお話しします。
それから、毎時、11分に「きっかけタイム」という時間があって、「きっかけシート」というカードに名前やふだんどんなことをしているか、どんなことを感じたか、何しに来たかを書いてもらって、みんなで交流します。

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どんな体制でやっていますか?
9拠点ありますが、コロナ禍のため、現在イベント開催しているのは東京、京都、愛知、仙台の4拠点です。
運営メンバーはだいたい20人くらいで、4つの拠点は毎月11日に同時開催しています。

取り組みが、点だけじゃなく線になっている


やっていてよかったと思ったこと、苦労したことは?
まず苦労したことについてですが、私は基本的にマイナス面を見つけることが苦手で、苦労とはとらえていないんです。
敢えて言えば、予定よりお客様が来てくださって、厨房が大変だったことがありました。

他には、届いた食材の箱を開けてみると、魚が予定と変わってることもありました。でも、これは漁師さんとやりとりしてるとよくあることで。
サンマじゃなくトビウオで、クックパッドで慌てて調べてメニューを変えました。
そのときは大変だったけど、いまから考えると笑い話ですね。

よかったことは、きっかけ食堂を通じてつながりができていることですね。
生産者さんのところへ実際行きたいと、参加者から連絡がきてつなげることもあります。
自分たちだけじゃなくて、参加者が実際東北に行って関わっているのを見ると、きっかけ食堂を作ってよかったなと思います。

また、福島の酒蔵へのツアーで、地元の人と東京の参加者とで酒蔵のお酒で飲み会をしたときに、杜氏の方が「こういう場を見ることができ、酒造りをしていてよかったと思う」と言ってくれて、そういう言葉が出る瞬間を我々が作れたのが嬉しいと思いました。

イベントだけで終わるのではなくて、参加者の次のアクションが見えたときに、自分たちの取り組みが点だけじゃなく線になっている、自分たちがやっていることに価値がある、と嬉しく感じますね。

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SBLを選んだ理由は?
原田代表の仕事が忙しく、会社に近い水天宮に住むことになり、以前シェアハウスだったSBLに入居していた、という縁があったんです。
法人になるときに登記する住所を決めなくてはならなくて、立地もよく、価格も見合ったのでここに決めました。

今後、どのようなことをしていきたいですか?
食も切り口として大事ですが、食は手段であって、いかに地方とかかわるきっかけをつくれるかを考えていきたいです。
岩手・宮城・福島に特化はしていますが、地域と都市圏の関係性をより豊かに自由にできたら、と思います。
副業や観光、東京で東北のイベントを立ち上げるなど、移住しなくてもその地域と良い関係性は作れます。
それぞれの人が自分らしい地域との関わり方ができるようなプラットフォームづくりをしたいと思っています。

たとえば、出身地に帰れないけど地元のために何かしたい、と思ったときに、できないのは不自由だと思うんです。
私は高知県で生まれ育ったけど、大学は関西、就職は東京、いまは石巻に住んでいます。
だからといって高知県に貢献したくないか、というとそうじゃない。

もしできるなら、住民票を2個も3個も持てる世界ができたらいいと思います。
ふるさと納税は一方的に納めて終わりですが、もっとインタラクティブに関われて、住む場所にとらわれず、自分の貢献したい地域のために力を使える
仕組みを作っていきたいです。


最後にシェア街の皆さんに一言お願いします。
毎月11日はイベントを何かやっているので、「11日はきっかけ食堂」と覚えていただけたら。
東北のことを知ったり、関われる「きっかけ」になってもらえたら嬉しいです。

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【きっかけ食堂に関する記事】
https://www.nhk.or.jp/shutoken/net/report/20200309.html
【きっかけ食堂Instagram】
https://www.instagram.com/kikkake_syokudo/
【きっかけ食堂Facebook】
https://www.facebook.com/kikkake.syokudo/
【きっかけ食堂Twitter】
https://twitter.com/kikkake_syokudo

【クレジット】
編集:Atsushi Nagata  Twitter / Note / YouTube
執筆:岩瀬友理
写真:提供写真

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