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【シェア街住民インタビュー】外資系企業から障害者就労支援へ お金を稼ぐことの大変さ・楽しさを実感 「NPO法人障がい者就労支援事業共創ネットワーク」 理事長 風間英美子さん

シェア街メディア

今回は、シェア街のリアルきょてんの一つであるコワーキングスペース・レンタルスペースの「ソーシャルビジネスラボ」(以下、SBL)に拠点を持つ「NPO法人障がい者就労支援事業共創ネットワーク(K-NET!)」の活動を紹介します。
障害者就労支援のためウェルフェアトレードに取り組む「K-NET!」で理事長を務める風間英美子さんに、活動を通じてのやりがいや今後のビジョンについてお話を伺いました。

障害があってもやりがいのある仕事が出来る社会を目指して

現在の活動内容を教えてください。

障害があってもやりがいのある仕事が出来る社会を目指して、NPO法人障がい者就労支援事業共創ネットワーク(以下、K-NET!)という団体で活動をしています。

K-NET! では「ウェルフェアトレード」という取り組みをしています。具体的には、障害者が作るものやサービスを適正な価格で取引をする仕組みづくりをすること、そして、そういった事業を担う人材を育成すること、という2つのアプローチ方法で活動をしています。

なぜK-NET!を立ち上げたのでしょうか?

私自身、10年以上、障害者就労支援に携わっています。
みなさんももしかしたら、障害者施設で雑貨やパンを作って売るというのを目にしたことがあるかもしれません。施設の中で生産活動をおこない、そこで働いている人たちの工賃、つまりお給料になるという仕組みになっています。
活動が順調に行けば障害者の方のお給与も上がっていくはずですが、現状の1人当たりの工賃は月1万5,6000円程度です。これでも改善しつつあって、10年前はもっと低く1万2000円くらいでした。

そのような就労状況を改善しようということで、10年ほど前に国が旗を上げて、工賃向上計画を実施し、障害がある方の生産活動を活性化させようとしました。民間企業のノウハウやビジネススキルを福祉現場に提供しようと計画したもので、私もその時にたまたまご縁があって、その領域に携わることになりました。

しかし、行政の障害者就労支援に携わる中で、もどかしさを感じるようになったんです。行政がおこなう仕事は、期限や予算が決まっているなどです。
人材育成やビジネスは1年間でどうにかなるものではないし、さらに業界の性質的に時間がかかるものでもあります。
もう少しどうにかならないかと思って、仲間に声をかけて、自分たちで立ち上げたのが、このNPO団体「K-NET!」です。

風間さんが障害者就労の領域に興味を持ったきっかけは?

実は私、もともとは全く別分野で、会社員として働いていました。
PR会社を経て、外資系ヘルスケアの会社でマーケティングに携わっていたので、福祉とは全く別ですね。
民間企業でバリバリ働く中で、ずっと会社員でいるのはどうかな?という思いが芽生えてきて、会社員を卒業したときに、たまたま知人に声をかけていただいたんです。
「分野は違うけれどもマーケティングの知見を生かして、やってみない?」と言われた時は、全く知識も経験もない状態だったので、こういう世界もあるんだ、と感じました。無知の状態で飛び込みましたが、それが結構面白かったんですよね。
それまでは外資系のマーケティング担当としてゴリゴリ揉まれていましたが、障害者就労支援も規模は違えど、「ものを作って売る」ことには変わりないので、その面白さを改めて実感しました。

たった10円の利益を通じて、お金の価値を実感

たしかに規模は違いますが、ものを売るという点では障害者就労支援も一緒ですね。一番面白さを感じていることは、流通の部分なんですか?

どうなんですかね、お金の価値がわかったということじゃないかと思います。
そこそこ大きい規模のマーケティングに携わっていても、数字はただの数字でしかないじゃないですか。何億とか、何十億とかいうお金が動いて、その業績で上司からすごい責められたりとか(笑)。なんでこんなに振り回されるんだろう?って思ってました。数字が大きすぎて、自分の実生活と関わりを感じにくかったんですよね。

それが今のNPO法人での活動では全然規模が違って、作るから売るまで全部が、目に見える範囲で起こることなので、全てが携わる人の生活へダイレクトに返ってきます。
例えば、10円の利益を上げるためにどうするのか。その利益を生み出すために、障害者の方にこういうことをお願いして…って考えていると、お金の価値、今まで自分にとって実体のなかったモノが実体のあるモノに思えてきました。それはすごい発見でした。
10円の利益、そんな規模のこと民間企業にいるときは考えなかったですしね。

お金を稼ぐことで障害者の方がすごく喜んでくれると、お金は稼ぐ楽しみ、人を喜ばせるパワーがあるのかと実感します。また、障害者の方たちがそのお金を使って、「ワンランク上の化粧品を買えました」と私に伝えてくれた時には、「そうだよね、お金ってそうやって使うものだったよね」と再認識しました。
会社員の時はそんなこと全く考えてませんでした。毎月給料日にお金が入ってきて、ルーティーンのように使っていたので、ワンランク上のものを買おうという考えも、自分が稼いだという実感も。
K-NET!での活動を通して目の届く範囲での仕事をやっていると、自分が働いて自分で稼いだお金を、自分の好きなものに使えて、嬉しいって気持ちになります。それはすごく新鮮でとっても面白いです。


K-NET!ではどんな活動をしているのでしょうか。具体的に教えてください。

主に「伸ばす活動」「学ぶ活動」「つなぐ活動」という3つの活動をしています。
「伸ばす活動」では、NPO法人が事業所に対して、事業支援という形でコンサルティングに入っています。
「学ぶ活動」では、人材育成という形での研修事業をします。
そして「つなぐ活動」では、なかまを繋ぐという意味での共創カフェというものをやっています。

障害者の方の、直接の支援は福祉の職員がしてくださります。私たちは資格を持っておらず、マーケティングや営業がバックグラウンドの人が多いです。なので得意な分野を活かし、ものをどう作るか?どう売るか?ということに焦点を当てて支援活動をしています。もちろんその過程で、障害者の方とも身近に関わる機会があります。

今年度から新しい活動も始めました。k.fabric 輪(ケーファブリック りん)という名前の、K-NET!の自主販売事業です。寄付で施設に集まっている中古の着物のはぎれや、そのはぎれを使ったオリジナル商品の製造販売をしています。障害者施設では着物の調達、仕分け保管、はぎれやオリジナル製品の商品化。K-NET!では企画、マーケティングと販売。そのように仕事の棲み分けをしています。

この事業を始めたのは、障害者施設に着物の寄付が多いけれど、うまく活用しきれていない、と相談を受けていたことがきっかけでした。私自身、趣味として着物を着ることがあり少し知識もあったので、上手く活用できないかなと考えていました。
そこで、着物を着物と捉えるのではなく1枚の布として考えた時に、国内外で安定的に伸びている、ハンドメイド市場で需要があるんじゃないかと思いついたんです。着物のはぎれを欲しがる人って結構多いんですよね。であれば、まずは自分たちで加工するのではなく、ハンドメイドのクリエイターの方々にはぎれを売ることから始めよう、ということになりました。
障害者施設の方も、縫ったりデザインしたりまでできる方は多くないけれど、布を解くことはできる方が多いんですよね。それであれば関われる方も多い。施設で眠っていた着物から「布を解いて、洗って、アイロンをかけて、売る」っていう仕事になりました。

障害者施設は地域とのつながりが強いので、施設自体が販売活動をしていたり、施設によってはお店を持っていたり、リサイクルショップの運営を任されていたりもします。そのお店でワークショップを開くなどをしながら販売活動をしています。着物のはぎれを使った、卒業証書の証書ファイルや、パスケースを作っていて、とても可愛いんです。

「k.fabric輪(りん)」(K-NET!の自主事業、着物ハギレ販売とオリジナル商品販売)


関わり方はなんでもいい、障害者就労支援に関わる仲間を増やしたい

K-NET!の活動をやっていてよかったと思ったことと、苦労したことはありますか?

よかったことは、同じことを考えている人たちと出会えたことですかね。障害者のためにと仕事をしている人たちと、一緒に活動ができていることが嬉しいです。1人でも2人でも同じ想いで、一緒にしっかりとやっていけるということが大事だなと実感しています。一緒に活動するNPO法人の仲間も増やしたいので、地道に声をかけながら活動をして、ご縁を探しています。

一方で苦労したことは、内部の運営体制ですかね。NPO法人の運営はやっぱりすごく難しいです。民間企業にいた時は、会社員として社員の目的がはっきりしていましたが、NPO法人は違いました。
みなさん、本業をやりながらボランティアとして携わってくださるので、ある程度時間が限られています。その中で、一定のクオリティを求められると、負担に感じてしまう方もいらっしゃるし、十分なお給料を支払えるわけではない、という後ろめたさもあります。今でも難しく感じることが多いですが、勉強をしながらやっています。

SBLを選んだ理由は?

NPO法人を東京都中央区で登記をしていましたが、以前使っていたオフィスから引っ越すことになりました。法人登記している中央区で探さなければと、区内のNPOの支援をしている団体に相談したらSBLを紹介していただいたんです。
とてもアクセスがいいし、気軽に使えるところがいいなと思ってSBLに決めました。週1回くらい、郵便物のチェックに行ったり、実際にオフィスで作業したりしています。作業もしやすくて、とても便利です。

今後K-NET!では、どのような活動をしていきたいですか?

まずは、k.fabric 輪(ケーファブリック りん)をスタートしたばかりなので、4つの活動がしっかり回るようにしていきたいです。
そして、障害者就労支援に関わる方が増えると嬉しいです。これからの障害者就労支援を担う人たちが育ってくれるといいなと思いますね。関わり方は、福祉の世界で活躍するもよし、起業するもよし、会社の中でダイバーシティという部署や事業を作るもよし。入口は障害者就労支援かもしれないけど、いろんな広がりがあります。最近はD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)という言葉もよく使われますし、それを自分の現場の中に落とし込んでいける人材が増えるといいなと思っています。そのためにK-NET! でも活動を続けていきたいですね。

執筆:かねこりな

編集:はやかわ英明

写真:提供写真


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