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【シェア街インタビュー】「若干居心地の悪いゾーンこそがストレッチゾーン」 株式会社「働く君と」代表、寺田麻子さん

前編に引き続き、シェア街のリアルきょてんの一つであるコワーキングスペース・レンタルスペースの「ソーシャルビジネスラボ」(以下、SBL)に拠点を持つ株式会社「働く君と」代表の寺田麻子さんにお話を伺いました!

研究職からの挫折経験、その後、紆余曲折を経て「コーチング」に出会うまで。自分に自信が持てない時の考えの切り替え方などをお聞きしました!

大事なのは「ワクワクする」感情が根底にあるかどうか

元々は研究職をされていたそうですが「コーチング」に出逢ったキッカケは何だったのでしょうか?

30過ぎまで微生物学の研究をして、博士後期課程に通っていたのですが、身体も心も壊して、挫折をしてしまいます。

当時、すでに結婚をしていたのですが、専業主婦とは名ばかりの引きこもりのような状態でした。そこから這い上がるため、税理士の勉強を始めました。6年間勉強をしながら、税理士事務所でアルバイトをして、税理士を目指す日々でした。
そんな中、本屋さんでパラパラ見たコーチングの本に「目的の大切さ」が書かれていて、「自分にとって人生の目的はなんだったのだろう?」と考えたんです。それがコーチング業との出会いでした。

よくよく考えてみると、大学院で助手をやっていたとき、「大学生と関わっていきたい」「多感な時期の学生さん達と関わり学び合うことが楽しい」と感じていたんです。その目的に近づくために、当時は博士号を取るという選択をしました。

 税理士の勉強では、もちろん「中小企業の経営者を助けたい」という目的がありました。しかし、一方で「経済的に自立しなくては」という不安を解消する目的も頭をよぎるんです。つい目的を不安な気持ちと結びつけていることに、その時は気が付いていなかったんですね。そのため、目的を頭に浮かべると焦燥感にかられ、達成に向かうことが苦しくなるという状況でした。

つまり「目的にワクワクすることを持っていますか?」という点を考えていなかったことに気が付いたんです。それからコーチングをネットで検索して、まずは無料講座に参加します。講義はとても面白く、傾聴や質問の大切さを知りました。

どのような経緯で会社を立ち上げることに至ったのでしょうか?

無料講義の講義の後、講師の先生に「コーチング、楽しいですね。税理士になったらコーチになります」と言ったんです。
先生は、私の話を傾聴する中で、税理士になる「目的」がなくなっていることにお気づきだったのでしょうね。「寺田さん、半年先に死ぬとしたら何をやってみたい?」と尋ねられ、私は「コーチをやってみたいです」と言っていたんです。
「税理士は諦めたくない、挫折したくない」と思っていたので、自分の発した言葉にびっくりしました。しかしその時、これ以上自分の心に嘘をついてはいけないと思いました。それが2015年1月頃のことです。それから半年程で猛勉強の末独立をして、まずは1時間3,000円の悩み相談でスタートしました。2019年12月に法人化しました。

スタートされた時は大変だったかと思いますが、今に至るまでどんなことがあったのか教えて下さい。

最初はどぶ板営業からスタートで、振り返ると大変でした。当時の自分は自信がなかったですし、営業は苦手と感じていました。
一番最初はコーチ仲間に練習させてもらって、次は、よく顔を出していた読書会で出逢った方に、「もしかしたらお役に立てるかもしれません」と切り出して経験を積みました。その後、経営者団体に所属するようになり、経営者の方々にお会いするようになって、そこで活動を広げていきました。

少し経験を積んだ頃、自分と、自分のやっている仕事とが、良い意味で離れていくような感覚がありました。それまでは「自分=自分の商品」という感覚だったので、自分の自信のなさが仕事にも影響してしまっていたんです。コーチングはどこまで行っても、人と人との付き合いです。私の未熟さで、その方の課題を拗らせてしまったのではないか、と考えることもありました。

それを打破できたのは、様々なツールを磨き続けたことが大きかったと思います。今は100種類以上の成長を可視化する独自のツールを持っていて、それをドラえもんの袋のように臨機応変に出せるようになっています。それが自信につながっています。

例をあげると、「現状の自分を知るアセスメント」というものがあります。人生の目的、仕事のミッション、コーチングに求めるもの、自身の能力などをシートに埋めてもらって言語化するものです。

コーチングで使っている「現状の自分を知るアセスメントツール」抜粋

若干居心地の悪いゾーンこそがストレッチゾーン

今までコーチングをされていて、苦労したことはどんなことがありますか?

コーチングの技術を学んでいるときに先生が仰っていたことがあります。それは、「答えを持っているのはコーチではなくてお客様である」ということです。
傾聴の技術と質問の力を用いることで、お客様は自力で答えにたどり着くことができます。コーチがお客様と同じような経験をしているかどうかはあまり関係ありません。それを聞いて私は「コーチングは万能なのではないか?」と思ったんです。
けれど、実際やってみるとそう簡単にはいかないんですね。お客様と対峙していると、自身の心の未熟さのようなものが、相手の心に影響を与えると実感したんです。

自分に自信が持てず、そんな自分を受け入れることについても苦労しました。そうした気持ちがお客様の心に影響してしまう経験もありました。

それでは楽しいと感じたことを教えてください!

お客様の変化を感じられたときです。
とあるお客様の例ですが、「なぜ自分が課長になったのか?」と疲弊している方がいらっしゃいました。その方は「リーダーとは、大きな声でみんなを纏めなくてはいけない」という固定観念を持っておられ、そういう人にならないといけないと考えていました。
しかし現在は、サーバントリーダーシップといって、下から支えるリーダーシップの概念も広がっています。つまりその人を活かしたリーダーシップの方法は、星の数ほどあるんです。
皆がそれぞれの、その人らしさや、目指す地点が見つけられると、私も嬉しくなります。

「自己受容感」を高めるために役立ったこと、エピソードなどを教えてください。

つい最近、自分の幸福度年表を書いてみたんです。
3歳から点数をつけ、挫折して大学院を退学した時は10点でした。そこまでの平均は55点でした。これは日本の幸福度の平均を少し下回っているくらい、曇り空のような状態だったと思います。

コーチングと出会ってからは年々伸び続け、去年は最高の85点をつけました。もうこれ以上高くはつけないと思います。伸びしろが人生面白みなので(笑)。今後は、仕事をしていて楽しかったこと、自分が成長している点などを見つけて、伸びしろを楽しみたいと思っています。
年表のような形で自分の経歴を振り返って、その時どう感じたのかを書き出したり、幸福度をグラフ化したり、といった自分と向き合うことを繰り返すと、時間とともに自分の受け止め方は変わっていきます。しかしこれには時間がかかります。

特効薬が1つだけあるとしたら、多くのことに「ありがとう」を言うことです。
自信をなくしておられるお客様には、「自分と何か(誰か)に”ありがとう”を感じた内容を毎日メールで送ってください」と伝えています。
「そして、感謝出来た自分を認めることで自己受容度はさらに上がっていきます。」

また、良い仲間と一緒にいることは重要なことだと思います。
私の場合、コーチングを勉強する仲間ですね。その人たちは自分の成長に関心を持ち続けている人が多いと感じます。みんなで2週間に1回くらいのペースで勉強会をやっていて、コーチングだけではなく、成人発達理論、インテグラル理論、ティール組織など、様々な勉強をしています。

昔の私だったら、「ここにいても何も話せることはない」と気後れしていたと思います。けれど若干居心地の悪いところこそが成長のストレッチゾーンだと考えています。「難しすぎて話についていけないかも」と思っても、「学びの多い場所だな」と捉えるようにします。また、相手からいただいているだけでなくて、「もしかして自分からも発信できることがないかな」と考えるようにもしています。

SBLは秘密基地のような、面白いことが起こりそうな空間

今後、どのようなことをしていきたいかなど、ビジョンを教えてください。

「働く君に憧れて、大人になることがワクワクする未来を創る」というのが弊社の理念です。現在は「育てるリーダー育成講座」という、オンラインで個人でも受けられる講座を絶賛準備中です。

多くの企業と関わる中で、人材育成に力を注ぐ企業もあれば、そうじゃない企業もあることを感じました。それをみてBtoBだけでなくBtoCもやりたい、と思うようになったんです。

シェア街のリアル拠点であるSBLをコワーキングスペース・シェアオフィスとして選んだ理由は?

実は、家で仕事ができるので、シェアオフィスを借りるか、住所貸しだけか迷っていました。それでもSBLが良いと感じたのは、何とも言えない隠れ家感です。入った瞬間のSBLの静寂な雰囲気は、仕事に没頭できます。また所在地の茅場町には個性的な料理屋さんなどがたくさんあり、なんとなく面白いことが起こりそうな予感がしました。
例えると、お魚の頭の部分から、身をほぐしながら美味しい部分を探す楽しみと似ています。そんな感覚に惹きつけられて、SBLに決めたんです。

直感に従った結果、ワクワクすることに繋がったので、選んで良かったと感じています。元々私は左脳優位のタイプで、論理的な思考で物事を進めていきがちです。ですが最近、キャリアコンサルタントの勉強で、クランボルツという心理学者の「計画された偶発性理論」を知りました。キャリアは偶発的な出来事の繰り返しでできている。好奇心・冒険心・楽観性・柔軟性・持続性を持ち、偶発的な出来事を楽しむと、未来が更に素晴らしくなるという考えです。そうしたことからも右脳の重要さを再認識しています。

シェア街の皆さんや読者の方へ、一言お願いします!

みなさんは「自分の価値観」を大切にしていますか?
目的に対しての考え方は2パターンあります。一つ目はゴールを決めて逆算する「ゴール逆算型」。もう一つが日々の価値観を大事にする「価値観型(ステップバイステップ型)」。日本では後者が8割と言われています。

起業家、マネジャー、経営者にはゴール逆算型が多いです。しかし価値観型の方でも、自分の喜ぶ価値観を大切にしていると、やりたいことが見えてきます。するとゴールは勝手に現れます。
どちらのタイプであっても、達成したい目的が「自分の喜ぶ価値観」と結びついているかどうかが重要です。「本当に自分の心が喜んでいるか?」「楽しんでいるか?」ということを自分に問いかけてみてください。

今の仕事が楽しいと思えていなかったら、自分を見つめ直すチャンスでもあります。しかし、自分の心の成長とともに柔軟に価値観の付け替えが出来るようになり、持続することで偶然のキャリアを見いだせることもあります。自分と向き合いバランスを大切にしていただけたら嬉しいです。

寺田さんが使っているセルフイメージチェック表。ぜひ使ってみてください!

【クレジット】
編集:早川英明
執筆:品田佳実
写真:提供写真


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