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ネパール人妊産婦や女性普及員の声で作成した葉酸リーフレット

こんにちは!在日外国人支援事業部の山本裕子です。ここ半年ほど、ネパール語の様々な資料作成に向けて、翻訳調整業務に集中的に取り組んできたため、ネパール語が読めないのに、文字化け部分に気づけるようになり楽しくなってきています。

多くのネパール人妊婦が葉酸について知らないという事実

葉酸は、妊娠を希望している女性が、妊娠したい1か月以上前から妊娠期間中にかけて摂取することが望ましいとされています。葉酸を多く含む食事の摂取に加えて、葉酸のサプリメントを摂取することが、胎児の二分脊椎などの発症予防に効果的だといわれています。
昨年5月、女性普及員(Female health promoter, ネパール人保健ボランティア。訪問活動などを通して妊産婦へ情報提供などを行っている)とともに活動の年間計画を立てた際、葉酸の情報提供の必要性が話題になり、議論しました。

女性普及員は、過去にリモートで妊婦訪問を行ったAさんの声を紹介しました。Aさんがネパール人妊産婦たちと会った際に、彼女たちに医師から葉酸が大事といわれた話をしたら、多くの人が葉酸について全く知らなかった、というのです。Aさんは、1人目、2人目の妊娠中には葉酸について知らず意識して摂取していなかったことから、上の子が少し遊ぶと足が痛いというのは葉酸を摂取していなかったからではないかと不安に思っている、とも話してくれました。

また、日本で妊娠、出産を経験したもう一人の女性普及員も、妊娠中、医師から葉酸についての情報提供がなかったので葉酸を飲まなかったと話しました。ネパールでは、妊娠を希望する女性や妊婦に対して、医師から積極的に葉酸を摂取するよう情報提供しており、病院でも無料でもらえるそうです。それなのに、なぜ日本ではもらえないのか、という質問など、様々な葉酸についての疑問が出てきました。私たちは、日本で出産を迎えるネパール人妊婦へ、栄養の話とともに葉酸についても伝えていく方向で計画を立て、その計画の1つとして、葉酸リーフレットを作りSNSで発信することにしました。

年間計画会議で葉酸について議論している様子

一つの言葉からイメージする内容の違いに苦戦

女性普及員の声から、“ネパール人妊婦が知りたい葉酸の情報”を整理し、それに沿った内容となるよう検討しました。また、掲載する以上、情報の正確性も大事にして文章を作っていったところ、文章量が増えていきました。これでは、せっかく作っても文章量が多くて読んでもらえない、ということになりかねない!ということで、翻訳を進める過程で、さらに内容を絞っていきました。
ここで、翻訳をしてみて気づき、削除した内容の例をお伝えします。

「葉酸は水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種です」という文章を最初加えていましたが、最終的に“水溶性ビタミン”のところを削除しました。葉酸は“水溶性ビタミン”であり、摂取しすぎても、血液に溶け、尿として排出されるため、そこまで取りすぎに気を付ける必要がないビタミンなのですが、この“水溶性ビタミン”を、そのまま、“水に溶けるビタミン”と訳すだけでよいのか、と翻訳者から指摘があり、初めて、読み手が、“水に溶ける→血液などに溶ける”と想像できるとは限らないことに気づくことができました。身体の構造や仕組みをある程度理解している人にしか伝わらない内容など、難しい言葉や表現を翻訳者の皆さんと議論しながら内容を絞っていきました。

最終的には、「葉酸ってなに?」「多くの妊婦が葉酸を摂取していると聞いたがそれはなぜ?」「葉酸はいつ、どのくらい摂取するのがよい?」「ネパールのように、病院やヘルスポストで葉酸をもらえるの?」「妊婦とおなかの赤ちゃんの健康のための基本は食事です」という5つのテーマについてまとめ、イラストを加えて完成としました。

3月にSNS配信したリーフレット『葉酸~お腹の赤ちゃんの健康のために~』

お腹の赤ちゃんの健康に目を向けるきっかけに

葉酸のサプリメントは、ドラッグストアで買えるもの、インターネットでしか購入できないもの、妊娠中に摂取したほうが良い様々なビタミンやミネラルなどが混ざっているもの、など多種多様に販売されています。自身で情報を入手して、摂取したいものを選択して購入するわけですが、そもそも日本に売っているものは日本語表記メインです。商品の写真を載せたほうが、日本語が読めない人々にとって親切なリーフレットになるだろうと、当初は掲載の方向で考えていました。しかし、とにかく種類があります。検討を重ねた結果、今回は「葉酸 Folic acid」という単語の表記に絞ったイラストで掲載することにしました。

そのかわり、ドラッグストアの薬剤師や妊婦健診で通っている病院の医師や助産師などに相談するようメッセージを加えました。このリーフレットをきっかけに、ネパール人女性や妊婦が自分と赤ちゃんの健康に目を向けるきっかけとなり、周りの日本人に相談し、つながりながら、葉酸を摂取してもらえたらうれしいです。

※この活動は、立正佼成会一食平和基金のご支援を得て行いました。

文責:在日外国人支援事業担当 山本 裕子

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