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Dr.本田徹のひとりごと(番外)2010.8.13

沖縄平和賞受賞して 

沖縄平和賞選考委員会が今年、第5回目の受賞者として当会を選び、顕彰してくださることになったという報に接し、心から感謝申し上げます。

特定非営利活動法人「シェア=国際保健協力市民の会」(東京都台東区)は、インドシナ難民の窮状に触発された市民が始めたものです。1983年、医療関係のボランティアを中心に、草の根レベルでの途上国への保健協力活動を本旨として設立されました。
私たちは、人の<いのち>だけは、その人の置かれた、政治、経済、人種、国籍、宗教、滞在資格など種々の状況の違いによって差別されず、等し並みに尊重されるような世界を創ることを、医療・保健の幅広い、継続的な活動を通して目指してきました。
とくに基本的な医療保健サービスへのユニバーサル・アクセスを、不利な条件に置かれた人々のために実現し、彼らのエンパワメントを図ることに対して、大きな意義を認め、実際的な活動やアドボカシーに微力を傾けてきました。

こうした私たちの活動を支えてきた理念と方法論は、1978年にカザフスタン共和国(旧ソビエト連邦)のアルマ・アタ市で、世界140カ国の代表とWHO(世界保健機構)によって出された、プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)に関する世界宣言でした。
その理念を実現するための具体的な活動として、アジア、アフリカ数カ国および日本を活動地として、息の長い包括的地域保健活動を展開してきました。『すべての人に健康を』を基本理念とし、特に社会的弱者への医療保健サービスへのアクセスの向上を念頭に、途上国の母子保健、HIV予防・啓発活動、エイズ患者の療養や自助活動への支援、日本に住み働く在日外国人への健康支援、参加型保健教育、日本国内における開発教育、他団体への協力を通じての路上生活者健康支援などの活動を地道に行ってきました。
沖縄平和賞選考委員会が、受賞者として当会を選び、顕彰してくださることになったという報に接し、私どもの活動理念へのご理解とご賛同をいただいたと感じ、誠に心強く思います。

近世以降、とくに第二次世界大戦以降の沖縄の苦難の歴史を考えるとき、シェアのささやかな活動が、ほかならぬ沖縄県民から顕彰されるに至ったことは望外の喜びであるとともに、この歴史と意義ある賞が求めている負託の大きさに身の引き締まる思いです。「命(ヌチ)ドゥ宝」という沖縄の人々の志と期待にしっかりと応えていけるよう、この栄えある受賞の機会に、一層の努力を重ねていきたいと思います。


※プライマリ・ヘルス・ケアとは、健康であることを基本的な人権として認め、すべての人が健康を獲得すること。そのために地域住民を主体とし、人々の最も重要な保健・医療ニーズに応え、問題を住民自らの力で総合的にかつ平等的に解決していく理念・アプローチです。

2010年8月13日


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